上 下
84 / 93
ワンワン初めてのお外

第35話 異変

しおりを挟む
「なかなか見つかんねえな!」

「くそっ! 見つけるまで掘ってやる!」

「手が痺れて来た! 代わってくれ!」

 再生速度に負けないよう、順調に掘り進めてきたが未だにコアらしきものは出て来ない。

 だが、レイラのスキルではこの下にある事を示していた。だが、このままでは反対側に出てしまい、貫通してしまいそうだ。

「まだ出て来ないねっ」

「そうだなっ」

 クロとジェノスの二人は、ハンマーである程度穴を広げると、ツルハシに持ち替えて休みなく掘り進めていた。ちなみにジェノスは最初フードで顔を隠していたが、邪魔だったので脱いでいる。

 今は周囲の視線を気にしている場合ではないと、ただ掘ってコアを見つける事だけを考えていた。

「見つからねえな…………ん? なんか上が騒がしくねえか?」

「え? そういえば騒がしいような……悲鳴? ととっ……!?」

 悲鳴が聞こえたと思えば、不自然な揺れが生じる。ユグドラシルゴーレムが拘束を破って動きだしたのか、あるいは別の要因によって起きたものか。

「おいっ! 誰か上を見て来い!」

「うっす!」

 近くにいたジェノスの昔からの仲間の一人が上へと向かった。ちなみに下には何も手は加えていないが、これまで掘って来た部分には再生して塞がらないように工夫をしている。

 ジェノスが自身の魔力でコーティングをして、簡単には塞がらないようにしているのだ。

 立て掛けておいた梯子を駆け上がって行く。そして血相を変えてジェノス達に向かって叫ぶ。

「ゴーレムですっ! ゴーレムがいやがりますっ!」

「ゴーレム? ユグドラシルゴーレムの体にくっついていたのか?」

「た、ただのゴーレムじゃありませんっ! デカいし……形もなんか変……うおっ!?」

「危ねえっ!」

 何かに驚いたらしく、手を離してしまった男が落ちてしまう。咄嗟に落下地点にジェノスが滑り込み、衝撃をできるだけ殺しながら受け止める。

「おい、大丈夫か? いったい何が……っ!?」

 突然、上から注がれていた太陽の光が何かによって遮られる。その直後、ジェノスの全身に鳥肌が立つのを感じた。見上げなくても分かった。何かマズいものがいると、ジェノスは長年の経験から察知した。

「クロっ! 防御だっ!」

「《ブレイブガード》!」

 次の瞬間、穴を塞ぐように《ブレイブガード》による大きな盾が現れる。そして間髪入れずに盾と何かが接触した。眩い光が掘り進めた穴の中を照らし、轟音が響き渡る。

「こいつは……まさかドラゴンのブレスか……」

 ジェノスはこれまで読んだ様々な本から蓄えた知識から、それがドラゴンのブレスである事に気付く。

 やがて光が弱くなり、大きな盾が消えるとその姿が見えて来る。それは岩だ。だが、ただの岩ではなく、多くの岩が幾つも集まってある形を成していた。

「ドラゴンゴーレムか……」

 ジェノスはすぐにその魔物の正体を理解する。

 ゴーレムドラゴン。ゴーレムの性質を持つドラゴンで、コアを破壊しない限り死ぬ事はない。あらゆる鉱物を体に取り込み、体をその鉱物に作り変える事ができる。ドラゴンの中でも中位の存在で、今相手しているユグドラシルゴーレムとほぼ同格と言ってもいいだろう。

「それも………………二体か」

 ゴーレムドラゴンの二つの顔がこちらを覗いていた。ジェノスは仲間を下ろして、ゴーレムドラゴンを見据えながら、予想外の展開にどうなっているんだと舌打ちをする。

 異変はそれだけではない。
 離れたところにいるナエ達のもとでも異変が起きていた。それに最初気付いたのはナエだ。

「ん? なんか変な魔力を感じねえか?」

「のじゃ? 変な魔力じゃと? いったいどんな魔力じゃ?」

「あのデカい奴の上の方……なんか魔力が集まっているような……おいっ! なんか飛んでっ! 《エレメントシールド》!」

 ナエが周囲にいる者達も含めて覆うように《エレメントシールド》を発動し、接触。一瞬でそれは消滅する。それがいったい何かは分からない。ナエが魔力の感知に長けていたおかげで気付く事ができたが、その速さは肉眼で視認する事はできないだろう。

「おいっ! なんか……でっかいのが、こっちに!」

 誰かが空を指さして叫ぶ。その先には大きな岩と思える大きな球体。よく見れば、その球体の上には人のようなものが座っている。それは暫くして近くに落下して土煙を上げた。

「何が起きているのじゃ……」

 突然現れたそれに対して、レイラは戦闘に使用する為のスキルを準備をする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...