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第一話
しおりを挟む「あの子、淫らできれいだ。美味しそう。」
「それは大変でしたでしょう。神よ、彼の人に祝福を。あなたのこれからの人生にどうか幸あらんことを。」
私はいつも言葉だけの祝詞を神に捧げる。神なんか信じてはいない。信じたところでなにもならない。でもお金と絆だけは信じられる。だからシスターをしている。
「シスター、ありがとうございます。」
「いえ、私はただあなたの手伝いをしたですから。またなにかあったら来てください。私はみなさまのためなら幾らでも神に祈り続けます。」
「あいかわらず謙虚……。シスターほんとにありがとうございました。」
「どうぞお元気でお過ごしください。」
また一人かねづじゃない大切な同士がかえっていった。神に仕えるものこそそこはしっかりしなければ……。そう思いながら私には眩しい群青色の空を見る。するとガサっと物音がして振り向くと十歳くらいの男の子がいた。
「貴方なにしてるんですか!」
口ではそう言ったがよく見るとその子は痩せこけていてなおかつ傷だらけで見るに堪えない姿だ。
「シ、スター助けてください。」
私は一目散にその子の元に駆け寄った。目線を合わせるようにしゃがみ込む。そしてできる限り威圧感を与えないようにゆっくり話し始める。
「大丈夫?痛い?なにがあったの?」
傷はそこまで深くない。でも見た感じ栄養状態がかなり悪い。結構まずい状態だ。
「傷はすぐ治すからね。大丈夫よ。」
『治癒』
結構力は持っていかれるけど傷自体は治せないほどじゃない。細菌感染が怖いところではあるけど……ここにはちゃんとした設備がない。かといって中央教会まで行ってる時間もない。
「ほら、治ったよ。もう痛くないでしょ。」
私が言うとその子は顔をパッとあげた。フードが取れて真っ黒な髪と瞳が目に入った。
「!!
あなた、この間の孤児の……。」
そうこの子は一週間前に外に出た時に祈りを捧げた子だ。あの祈りは祝詞の中でも上の方の祈りなのにそれが飛ばされた?!
「ありがとうございました。シスター」
「あなた、この一週間の間にどこいったの!なんであの祝詞が……。」
ついつい動揺して口調がいつものに戻る。
「お金が必要で神の森に行ってました。こうでもしないと生きていけないから。」
「神の森?!そこって最難関ダンジョンじゃない!」
私はその子のほっぺを掴んでこういった。
「このおばか!」
「っ、いった」
「神の森に行くなんて自殺行為はやめなさい!まだ未来あるあなたが行くところじゃないから。第一他にもダンジョンはあったはずじゃない!なんでそっちにいかなかったの?」
「他のダンジョンって?僕は神の森が初心者向けだからいって言われて行ったんです。依頼のび、媚薬もあるし……。」
「……媚薬?」
一瞬思考が停止した気がする。こんな小さい子に媚薬なんてものを依頼したのは誰?神は許してくれませんよ?
「まぁ、とりあえず長話になりそうだし椅子に座る?それともベッドに横になりたい?そのままだと体辛いでしょ?シャワー浴びる?」
私には男の子が少し躊躇っているような気がした。
「依頼がまだ……。」
「依頼は私がやってくるね。こう見えても強いんだから!子供にこんなことやらせるわけないでしょ。だからここにいて。」
「でも!」
「でもじゃない。安心して大人を頼りなさい。子供が子供らしくいられるようにするのが私たちの役割。」
男の子がコクっと一回頷く。
「じゃあなにしたい?」
「シャワー浴びたい。」
「私じゃなくてあなたのおんなじくらいの男の子に手伝わせても大丈夫?」
「うん。」
「じゃあついてきて。」
この子大人びてるし私がついてなくても大丈夫そうだよね。私は少し歩いて孤児院側に行って庭で遊んでる二人に声をかけた。
「ノア、イーサン!お仕事よ。この子をシャワーに入れてあげて。私はちょっとお出かけしてくるから。怪我をしてた子だから痛くないように丁寧にね。できる?あとみんなに今日は私は遅くなるから先に寝ててって言っておいてくれる?」
『うん!』
「ありがとう、いい子達ね。じゃあ行ってくるからよろしくね。」
「はいシスター!いってらっしゃい!」
そうして私は媚薬をとりに神の森へと歩みを進めた。ちょっとした裏技を手に……。
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