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「トリス……私……」
言葉に詰まり、声が出なくなる。トリスにそんな顔をさせたかったわけではない。ただ、怒りで我を忘れたのも事実だ。
「俺はおまえが何もできないだなんて思ってない。だけど、もっと他人に頼ってほしい。頼り方を知っててくれ。いざというときに一人だけで立ち向かおうとしなくていい。俺たちはアイツみたいにおまえを裏切らないよ」
「……もし裏切ったら?」
「殴っていいし、怒ってもいい」
ふっと笑ってしまったイズに、「怖かっただろう」と慰めるようなことを言う。
「怖かったわ。とっても。どうしてマルクス様は、私のことを……嫌いになってしまったのかしら……」
「利害が一致しないからだ」
やけにハッキリと言い切られ、イズはぐっと堪えた。今、喉の奥で止めた疑問を彼にぶつけるべきなのだろうか。
ずっと引っかかっていたことがある。以前のトリスタンはマルクスの友人だった。あの断罪の場で声こそ上げないものの、マルクスと同じくイジーを責め立てる側として立っていたはずだ。いくら仲を深めるにつれイズの印象が彼の中で変わったとしても、どうにも拭えない違和感があった。それは不信感にも繋がっているのだろう。それが解消されない限り、どんな言葉をもらっても彼を信じ切ることができない。
トリスは今のイズを友人だと言う。味方とも言ってくれる。だが、それなのにマルクスについて詳しくは教えてくれない。山のようにあるはずだ、秘密にしていることが。そんな根拠のない確信をイズは抱いていた。
「私、マルクス様を本当の紳士のように思っていたわ。物語に出てくる素敵な白馬の王子様のように。誰にでも優しくて、情に厚い人だと思ってた。だから、理由なく他の人を害そうとする彼を知らない。彼の目的は何? トリスタン、あなた知っているんでしょう?」
あえてトリスタンと呼んだ。知ってるよと彼は答える。でもおまえには言いたくない、と続けた。
「これでも俺はおまえが大事なんだ。守りたい、味方でいたい、おまえに傷付いてほしくない。できればマルクスとはもう金輪際接触してほしくもないし、何ならナーバルに頼んで魔法で手のひらサイズにして小さな箱に閉じ込めておきたいくらいだ」
「お、重いわ。ちょっとこわい。あと話を逸らさないで」
突然の監禁予告に引きながらも食い下がる。
「同じ話だ。何を言っても信用できないなら、それならそれでいい。マルクスの目的は俺からは話せないが、俺の目的なら教えてやるよ。俺はな、おまえがガキみたいにワーワーと泣き喚く未来じゃなければ正直何だって良いんだ。言ってる意味が分かるか? 有り体に言えば、おまえが不幸せなのは嫌だ。ナーバルも少なからず同じことを思ってる」
「………」
幸せにしたいとは言わないところが彼らしい。そして何となく彼が言いたいことは分かった。
「つまり、今のイジーという存在はマルクス様の目的を阻害する障害になるってことなのね? それも、即座に排除したいくらいには邪魔な存在ということ」
そして今の彼の言い方からして、ナーバルもマルクスの目的を知っているということだ。もしかしたら既知の仲かもしれない。まるで初めて会うみたいな反応をしていたくせに、演技がお上手ですことと憤懣やるかたないが、これもそれも自分が頼りないせいでもあるのだろう。
「察しがいいな、イズ。俺はおまえがまかり間違っても『幼少期から強い目的意識を持って行動されるマルクス様ってステキ!』とか言って再び殺されにいかないかとヒヤヒヤしてるよ」
「馬鹿なこと言わないで」
ふざけ始めたトリスを睨む。
集中力や緊迫感というのがないのかしら、この人。先程大真面目に不幸になってほしくないと言ったことが今更になって恥ずかしくなって、わざとそんなことを言っているに違いないわ。
「以前の私と今の私の違いは、魔法が使えるか使えないかという点のみでしょう。それ以外に前の私との違いが思いつかないわ。魔法が使えるのがいけないっていうこと? でも彼の周りには魔法を使える人間のほうが多いし、彼自身も使える。この仮定ではきっと彼の障害に足る条件が足りないのよね。彼の周りにいる人間と私の違いは何? 公爵令嬢という立場かしら。異性であること、同年代であること、社交界にまだ出ていないことも関係しているかもしれないわね。貴族の知り合いが極端に少ない箱入り令嬢を丸め込むのはきっと簡単だわ。だって世間知らずなんだもの」
「イズは頭が良いなぁ」
「障害になる条件が分かってもマルクス様の目的が分からないと手の打ちようがないわ」
「だったら逃げればいい。元の体に戻ろうなんて考えなくてもいい。他国に避難するか? いくらでも協力してやる」
「あなたって時々悪魔みたいなことを言うのよね。そんな甘い言葉には簡単に傾かないわよ」
「俺からしてみれば、おまえが何でそんなに元の体に戻りたいのかが分からない。確かに俺は令嬢の振る舞いはまだまだだけど、おまえの立ち位置からすれば一生引きこもってたっていいわけだ。入れ替わっていることは誰からも気付かれないだろう。そのうちどこかの誰かと縁談の話が出るかもしれないけれど、まぁそれは何とかする。俺たちが一生くっついて仲良しこよしする必要なんてない」
そんな冷たいトリスの言葉に傷つきながらも、その瞳をしっかりと見つめ返した。気付かれていないと思っているのだろうか。彼はずっとこちらの反応をつぶさに観察している。優しいことを言ったり厳しいことを言ったりして、どうやったらイズが自分の思い通りになるのかを探っているのだ。
彼の言う通り、元の体に戻りたい確固たる理由は自分でも判然としない。
けれど、誰が逃げ出してやるものかと思う。
言いなりになってたまるか。楽な方に流されてたまるものか。私は私の意志で、自分のことは自分で選択する。二度と、周囲の人間に言われるがまま、お人形のように生きるのなんて嫌だ。もうまっぴらごめんだ、そんな人生は。
何も分からないまま、何も理解できないまま、あのときと同じように己の無力さに打ちのめされながら死を迎えるくらいならば、やりたいようにやってみせるわとイズは思う。
「それは俺に言われたから逆をいってやるっていう無駄な意地っぱりでしかないだろ」
「意地っ張りでも何でも、あなた言ったじゃない。私の味方でいてくれるって。だから私、大船に乗ったつもりでやりたいようにやるわ。私が大変な目に遭いそうになっても、あなたたちが幸せにしてくれるんでしょう?」
ね?と振り向くと、転移を使って戻ってきたばかりのナーバルに軽く頭を叩かれた。明らかに機嫌が悪い顔をしている。
「諦めろ、トリス。もうコイツはダメだ。全力でオレたちに甘える気だ」
「育て方を間違えたな」
「まったくだ」
育てられてないわよと口を尖らせているとナーバルに引き千切る勢いで掴まれた。
「ひどい! 痛かった! 暴力よ!」
「うるさいな。グーで殴られなかっただけマシだ」
ナーバルに強めのグーで殴られたトリスにそう言われたのでイズはぐうの音も出ない。本当に連帯責任でトリスまで叱られるとは思わなかった。
「痛そう。可哀想に」
「誰のせいか分かってないだろ」
頭にたんこぶができてないか見てくれとぼやくトリスを無視して、ナーバルは簡潔に結論だけ言うことにしたらしい。背後からイズの肩を掴みながら、事も何気に告げる。
「説得は無理そうだ。オレはあっちに寝返ることにした」
言葉に詰まり、声が出なくなる。トリスにそんな顔をさせたかったわけではない。ただ、怒りで我を忘れたのも事実だ。
「俺はおまえが何もできないだなんて思ってない。だけど、もっと他人に頼ってほしい。頼り方を知っててくれ。いざというときに一人だけで立ち向かおうとしなくていい。俺たちはアイツみたいにおまえを裏切らないよ」
「……もし裏切ったら?」
「殴っていいし、怒ってもいい」
ふっと笑ってしまったイズに、「怖かっただろう」と慰めるようなことを言う。
「怖かったわ。とっても。どうしてマルクス様は、私のことを……嫌いになってしまったのかしら……」
「利害が一致しないからだ」
やけにハッキリと言い切られ、イズはぐっと堪えた。今、喉の奥で止めた疑問を彼にぶつけるべきなのだろうか。
ずっと引っかかっていたことがある。以前のトリスタンはマルクスの友人だった。あの断罪の場で声こそ上げないものの、マルクスと同じくイジーを責め立てる側として立っていたはずだ。いくら仲を深めるにつれイズの印象が彼の中で変わったとしても、どうにも拭えない違和感があった。それは不信感にも繋がっているのだろう。それが解消されない限り、どんな言葉をもらっても彼を信じ切ることができない。
トリスは今のイズを友人だと言う。味方とも言ってくれる。だが、それなのにマルクスについて詳しくは教えてくれない。山のようにあるはずだ、秘密にしていることが。そんな根拠のない確信をイズは抱いていた。
「私、マルクス様を本当の紳士のように思っていたわ。物語に出てくる素敵な白馬の王子様のように。誰にでも優しくて、情に厚い人だと思ってた。だから、理由なく他の人を害そうとする彼を知らない。彼の目的は何? トリスタン、あなた知っているんでしょう?」
あえてトリスタンと呼んだ。知ってるよと彼は答える。でもおまえには言いたくない、と続けた。
「これでも俺はおまえが大事なんだ。守りたい、味方でいたい、おまえに傷付いてほしくない。できればマルクスとはもう金輪際接触してほしくもないし、何ならナーバルに頼んで魔法で手のひらサイズにして小さな箱に閉じ込めておきたいくらいだ」
「お、重いわ。ちょっとこわい。あと話を逸らさないで」
突然の監禁予告に引きながらも食い下がる。
「同じ話だ。何を言っても信用できないなら、それならそれでいい。マルクスの目的は俺からは話せないが、俺の目的なら教えてやるよ。俺はな、おまえがガキみたいにワーワーと泣き喚く未来じゃなければ正直何だって良いんだ。言ってる意味が分かるか? 有り体に言えば、おまえが不幸せなのは嫌だ。ナーバルも少なからず同じことを思ってる」
「………」
幸せにしたいとは言わないところが彼らしい。そして何となく彼が言いたいことは分かった。
「つまり、今のイジーという存在はマルクス様の目的を阻害する障害になるってことなのね? それも、即座に排除したいくらいには邪魔な存在ということ」
そして今の彼の言い方からして、ナーバルもマルクスの目的を知っているということだ。もしかしたら既知の仲かもしれない。まるで初めて会うみたいな反応をしていたくせに、演技がお上手ですことと憤懣やるかたないが、これもそれも自分が頼りないせいでもあるのだろう。
「察しがいいな、イズ。俺はおまえがまかり間違っても『幼少期から強い目的意識を持って行動されるマルクス様ってステキ!』とか言って再び殺されにいかないかとヒヤヒヤしてるよ」
「馬鹿なこと言わないで」
ふざけ始めたトリスを睨む。
集中力や緊迫感というのがないのかしら、この人。先程大真面目に不幸になってほしくないと言ったことが今更になって恥ずかしくなって、わざとそんなことを言っているに違いないわ。
「以前の私と今の私の違いは、魔法が使えるか使えないかという点のみでしょう。それ以外に前の私との違いが思いつかないわ。魔法が使えるのがいけないっていうこと? でも彼の周りには魔法を使える人間のほうが多いし、彼自身も使える。この仮定ではきっと彼の障害に足る条件が足りないのよね。彼の周りにいる人間と私の違いは何? 公爵令嬢という立場かしら。異性であること、同年代であること、社交界にまだ出ていないことも関係しているかもしれないわね。貴族の知り合いが極端に少ない箱入り令嬢を丸め込むのはきっと簡単だわ。だって世間知らずなんだもの」
「イズは頭が良いなぁ」
「障害になる条件が分かってもマルクス様の目的が分からないと手の打ちようがないわ」
「だったら逃げればいい。元の体に戻ろうなんて考えなくてもいい。他国に避難するか? いくらでも協力してやる」
「あなたって時々悪魔みたいなことを言うのよね。そんな甘い言葉には簡単に傾かないわよ」
「俺からしてみれば、おまえが何でそんなに元の体に戻りたいのかが分からない。確かに俺は令嬢の振る舞いはまだまだだけど、おまえの立ち位置からすれば一生引きこもってたっていいわけだ。入れ替わっていることは誰からも気付かれないだろう。そのうちどこかの誰かと縁談の話が出るかもしれないけれど、まぁそれは何とかする。俺たちが一生くっついて仲良しこよしする必要なんてない」
そんな冷たいトリスの言葉に傷つきながらも、その瞳をしっかりと見つめ返した。気付かれていないと思っているのだろうか。彼はずっとこちらの反応をつぶさに観察している。優しいことを言ったり厳しいことを言ったりして、どうやったらイズが自分の思い通りになるのかを探っているのだ。
彼の言う通り、元の体に戻りたい確固たる理由は自分でも判然としない。
けれど、誰が逃げ出してやるものかと思う。
言いなりになってたまるか。楽な方に流されてたまるものか。私は私の意志で、自分のことは自分で選択する。二度と、周囲の人間に言われるがまま、お人形のように生きるのなんて嫌だ。もうまっぴらごめんだ、そんな人生は。
何も分からないまま、何も理解できないまま、あのときと同じように己の無力さに打ちのめされながら死を迎えるくらいならば、やりたいようにやってみせるわとイズは思う。
「それは俺に言われたから逆をいってやるっていう無駄な意地っぱりでしかないだろ」
「意地っ張りでも何でも、あなた言ったじゃない。私の味方でいてくれるって。だから私、大船に乗ったつもりでやりたいようにやるわ。私が大変な目に遭いそうになっても、あなたたちが幸せにしてくれるんでしょう?」
ね?と振り向くと、転移を使って戻ってきたばかりのナーバルに軽く頭を叩かれた。明らかに機嫌が悪い顔をしている。
「諦めろ、トリス。もうコイツはダメだ。全力でオレたちに甘える気だ」
「育て方を間違えたな」
「まったくだ」
育てられてないわよと口を尖らせているとナーバルに引き千切る勢いで掴まれた。
「ひどい! 痛かった! 暴力よ!」
「うるさいな。グーで殴られなかっただけマシだ」
ナーバルに強めのグーで殴られたトリスにそう言われたのでイズはぐうの音も出ない。本当に連帯責任でトリスまで叱られるとは思わなかった。
「痛そう。可哀想に」
「誰のせいか分かってないだろ」
頭にたんこぶができてないか見てくれとぼやくトリスを無視して、ナーバルは簡潔に結論だけ言うことにしたらしい。背後からイズの肩を掴みながら、事も何気に告げる。
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