彩のミステリーデビュー

愛媛海

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中学生編

先輩の卒業式

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「今日の卒業式、中止とします」
「どういうこと? 」
「1、2年生は自習してください」
「何かあったのかな」
「自習だ、遊ぼうぜ」
「彩、体育館行かない? 」
「お、バスケか? 」
「あい、風太と同じチームが良い! 」

彩たちのクラスは体育館に到着した。
「誰かロープで吊られてるぞ」
吊り下げ式のバスケットゴールにロープが引っかけられていて、卓球場の方にひもを通している。その先輩は籠が無い方にくくりつけられていた。
「なんか書いてある」
そこには『一生留年』と書かれていた。
「昨日体育館使ってた人が怪しいね。」
吊られてた先輩と関係のあるバスケ部の先輩、卓球部の先輩、吹奏楽部の先輩を連れてきた。
バスケ部の先輩は、昨日は部活がなく個人で練習していた。卓球部の先輩は、2階の卓球場で練習していた。吹奏楽部の先輩は、リハーサルをしていた。全員19時に帰ったという。
「卓球場でひもが終わってるんだから、卓球部の仕業だろ。練習中でもできるし、気づかれない」
「その時にはそんなひもなかったよ。ステージで吹部がリハしてたし指揮者以外だってひもがあったかどうか見えると思うけど」
「私は指揮者してたんで見えてないです」
「まて、指揮者ならこっそり吊ることできるじゃんかよ」
「ロープは卓球場の方にあったんですよね」
「そんなん指揮してる時にほん投げたんだろ」
「さっき、ひもなかったって言ってたのにほん投げるとか言うんですか」
「ひもが見えなかったんじゃないですか」
「だからさっきからそう言ってるだろ」
「あのひもは後でつけたものだと思います」
「は? 」
「まずあの先輩に、ダンクさせたんです」
「ダンクなら、くくりつけられてる方が逆だろ」
「ボールがつまったとか言って裏に回らせたんだと思います。取った瞬間、足をつかんでゴールと一緒にくくりつけたんです」
「でも、指揮者以外の吹部は見てるでしょ」
「指揮者の方を見てると思います。それに、2階からも見えないですし、普通にできたんでしょうね。後はバスケットゴールを上げて、掃除でもすると言って卓球場にロープをくくりつけたんでしょう。違いますか」
「ああ、そうだよ。俺がやったんだ。あいつ、いつもちょっかいかけてきやがったから大勢に見られて苦しんだ方が良いと思ってやったんだ。だから、俺は何も悪くない」
「君、職員室に来なさい」
「高校行けないかもな」
「せっかくの卒業式なのに……」
「その先輩と違う高校なら敵視しないと思うんだけどな……」
バスケはできなかった。卒業式は1週間後に行われた。
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