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一章
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しおりを挟むハウィンツが合流した事により、お茶会は先程よりも幾らか騒がしくなり、ハウィンツとディオンの息の合ったような、合っていないような掛け合いにリズリットが笑って、その笑顔にディオンが見惚れて、ハウィンツが呆れたような視線を向ける、と言う事を何度か繰り返した後。
三人は一度マーブヒル伯爵邸に戻る事にした。
行きは白麗に連れて来て貰ったが、帰りは伯爵家の馬車でやって来たハウィンツの馬車で邸まで帰る事になり、三人は邸までの道中今回の事件の事、精霊の事を少しだけ話しながら邸までの時間を過ごした。
邸に到着して、リズリットが着替えに自室へ向かった後、ハウィンツはディオンを連れて父親の居る執務室へと向かって来ていた。
「──父上、入りますよ」
ハウィンツが扉をノックして声を掛けると、中から声が聞こえる。
ハウィンツはその声を聞くと扉を開けて中へと足を踏み入れた。
「ディオンにも来てもらってます。一連の事件の共有をしておいた方がよろしいですよね? あとは、リズの身に起きている事も……」
「──そう、だな。フィアーレン卿、御足労頂き申し訳無い」
リズリットとハウィンツの父親は慌てた様子で執務机の椅子から立ち上がると、来客用のソファにディオンを促した。
促されるまま、ディオンもそのままソファに座ると同じようにソファに座ったハウィンツが唇を開く。
「父上、陛下と謁見して参りました。近日中に伯爵家当主である父上を改めて王城に来るよう手配すると仰っておりましたので、近々その予定が入るかと思います」
「そうか。分かった、準備しておこう」
「陛下からは簡単に今回の事件におけるロードチェンス子爵家の処罰について聞き及んでおります」
ハウィンツはそこで一旦言葉を切ると、今回の事件はリリーナ子爵令嬢が単独で暴走した結果ではあるが、やはり子爵家は精霊に対して害のある薬剤と知りながら製造、保持していたらしく、その罪は重いと言う事だった。
子爵家は取り潰しの上、領地は王家に一旦返還され、後に信用の置ける者へ領地を預ける予定らしい。
「恐らくリリーナ・ロードチェンスと当主は死罪。後の者は関わりがあったのかどうかを確認次第、と言う事にはなりますが深く関わっていた者も死罪となるでしょう……それ以外は末端の使用人に至るまで全て王家監視下の元、王家の縁類の家で生涯使用人として働かせると仰せでした」
「──うむ、そうだな……。王家に縁のある者の元で生涯監視していた方がいいだろう。本当に全くの無関係だったのかどうか、本人が嘘を付いている可能性があるしな……」
「リズリット嬢に害を成す者など、死罪になって当然だな。万死に値する」
ハウィンツの言葉に父親とディオンの反応はそれぞれ違い、ディオンに至っては分かっていた事だがリズリット以外に興味は無いようでハウィンツは呆れたように表情を緩めた。
ハウィンツはそこで、ウィリアムとリズリットに付いて話をした事を二人に告げる為に続けて唇を開いた。
「──陛下は、今回の一連の事件で精霊王が怒り、人間を見限りこの国から出て行ってしまうのではないか、と危惧していた。リズリットから精霊王の気配がする、と言うのはこの国においてとても貴重で重要な事だ。リズリットからの精霊王の気配に何か変化や、万が一……精霊王が御姿を現す可能性がある……」
ハウィンツの言葉に、父親が緊張した面持ちでこくり、と頷く。
「だが、精霊王の気配が濃くなるのはディオンの精霊が言う限り、リズリットの身に危険が迫った時だけ……。リズリットに悪意が向けられた時だけ……。その事で、陛下は精霊王はリズリットが過去に記憶を無くした事に深く関わりがあるのでは、と推測している」
ハウィンツは、子供の頃に起きたあの痛ましい事件の事を思い出し、苦しそうに表情を歪めながらウィリアムから告げられた事を口にした。
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