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お茶会での出来事5 終

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噂話が大好きな友人達とのお茶会ももうすぐ終わる頃。
日差しが陰り、もうそろそろお茶会もお開きとなるだろう。

ミュラーは友人達との楽しいお喋りの中で、それとなく釣書を貰った男性達の名前を出して皆の反応を伺った。
男性達の名前に不思議そうにする友人達には、夜会で少し話した事があるのだけど、と伝えれば納得してくれたみたいで、友人達が聞き及んだ事がある情報を教えてくれた。

結果、会っても大丈夫そうな男性は多くなく、女性関係が派手だったりだらしなかったり、家が没落しそうな状態だったり…、と色々と情報を得る事が出来た。
色々聞いた中でも、やはり先程観劇に誘われたフレッチャー伯爵家の嫡男は群を抜いて素行が悪いらしく、その男性とは絶対に2人きりで合わないように、とアレイシャにも念を押された。

この成人を控えた時期に醜聞が流れたら大変な事になる。

(絶対にお誘いはお断りするわ…!)


程よく時間が経った頃、アレイシャがテーブルから立ち上がりミュラー達に他のテーブルへ行ってくるわね。と言い残しその場を去って行った。
もうそろそろお開きの時間だろう。アレイシャは各テーブルの招待客の方へ挨拶をしに向かったのだろう。
一番端のテーブル、ローズガーデンの出入口に近い場所に向かったら、お開きの合図だ。
残り少ない時間ではあるが、ミュラーはルビアナとエリンと3人で色々な話しで盛り上がり終了までの時間久しぶりに楽しく笑いながら話し込んだ。





「ミュラー、今日は来てくれてありがとう。次お会い出来るのは成人の舞踏会かしらね?」
「いいえ、こちらこそ今日は楽しい時間をありがとう。舞踏会でお会い出来るのを楽しみにしているわ」

ふふ、とアレイシャとミュラーはお互い微笑みあってそう言葉を交わす。
アレイシャが見送ってくれる中、ミュラーは何度も振り返りアレイシャに手を振った。

ルビアナとエリンとも話す事が出来て良かった。
やっぱり年頃のご令嬢は情報通だ。自分が知らない情報や、相手が知らない情報を交換出来る。

フレッチャー伯爵家の令息や、キャロン・ホフマン嬢、フィプソン伯爵令嬢の事等、気がかりは沢山あるけれど、それを除けば楽しい一日だったわ、とミュラーは満足しながら自分の家の馬車が停まっている場所までゆったりと向かう。
馬車に乗ったら、侍女のラーラに今日のお話をして、そしてフィプソン伯爵家の事をそれとなく調べてもらおう。
友人達にもそれとなく聞いてみたが、誰もフィプソン家の事を知らなかった。伯爵家であるのに、情報がまったく出てこないのはどこか変だ。

馬車前にいるラーラの姿を認めると、ミュラーはほっと表情を緩めた。
近づいて行くと、そのラーラの表情がどこか焦りを滲ませている事に気付く。

「ラーラ?どうしたの?」
「ミュラーお嬢様…!そ、それが…」

ラーラの元まで足早に行くと、ミュラーはラーラに話しかける。
焦りや戸惑い、それと若干の恐れ。
顔色を青くしたラーラに心配になり、ミュラーはラーラを伴い、馬車へ乗った。

ミュラーとラーラが乗り込んだ事を確認した御者が、ゆっくりと馬車を進め始める。
程よい揺れに揺らされながら、ミュラーはラーラの言葉を待つ。

「どうしたの、ラーラ。誰も叱責しないから、話して」
「…それが…、本日ミュラーお嬢様がお茶会に参加する為訪問をお断りしたアルファスト侯爵がお嬢様を待たれているそうです…」
「えぇ!?帰宅は夕方になるから、お断りしたのよね?」
「はい、ミュラーお嬢様の帰宅が遅くなる事もお伝えして、お断りしたのですがそれくらいの時間に来るから、と。お渡ししたい物があるからそれを渡したらすぐに帰るから気にしないでお茶会を楽しんで欲しいと…」

そう連絡がミュラーの家から来たらしい。
待たせるからといって、お茶会を途中で切り上げる事はしなくていい、とも伝えられていたようで。侯爵を待たせている、というその事実にラーラは青ざめていたようだ。

「ミュラーお嬢様には、お茶会が終わったら待ってる、とだけ伝えればいいから、と連絡の係の者には言われ…侯爵を待たせているその事実に気を失いそうです…」
「ええ、そうよね…ごめんね、ありがとうラーラ。レオン様は優しいから、これくらいじゃお咎めなんてないわ。むしろ、レオン様の言いつけを守ってくれてありがとうラーラ」

ぐしゃ、と表情を歪ませ今にも泣いてしまいそうなラーラにミュラーは元気付けるように言葉をかける。
そもそも、一度お断りを入れているのだからいくら侯爵家といえどもこれで侍女のラーラを咎めるなんてことはしない。
侯爵家の都合を通して来ているからこそ、レオンはお茶会が終わったらその時間に合わせて来ると言ったのだろう。

(お茶会の帰宅時間は夕方頃、とばらつきがあるからアフタヌーンティーの時間頃からこちらに向けて移動しているはずよね…今はオレンジ色の夕日が沈みかけている…ゆうに数時間は待たせているわ)

数時間もレオンを待たせている、と言うことにミュラーも焦るがいくら急いでも馬車はこれ以上早く走る事は出来ない。
ミュラーは一つ溜息を零すと、困ったわね、と内心呟きながら窓の外に流れる景色を見つめながら早く邸に着く事を祈った。
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