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第三十四話
しおりを挟むハフディアーノ家での話し合いが終わり、アルヴィスは席を立つとエドゥアルドの方へ近寄り二言三言何かを話している。
エレフィナはその様子を眺めていたが、エヴァンがソファから腰を上げた姿を見て明日も朝早いから、と自分も自室へと戻る為に腰を上げた。
今日は、自分の父親とまだ話をしているらしいのでアルヴィスの見送りはないだろう、と判断する。
そのエレフィナの様子を視界に入れたエドゥアルドは唇を開く。
「ああ、フィー。アルヴィス副団長の見送りを頼むよ。学園内での動き等も報告しておきなさい」
「⋯⋯、かしこまりましたわ。お父様」
エレフィナは上げた腰をもう一度下ろすと、二人が話終わるのを静かに待った。
「エレフィナ嬢、いつも見送り申し訳ない」
公爵家の廊下をいつものように歩き、アルヴィスを見送る為玄関へと向かっていると後ろからアルヴィスに話し掛けられる。
エレフィナは肩越しに振り返ると、アルヴィスに向かって笑いかける。
「いいえ、お気になさらず。⋯⋯それに、今後の学園での動きもお話しておかないとですし」
「ああ、そうだな。お互いの動きを確認しておいた方がいいな」
エレフィナの言葉にアルヴィスは言葉を返すと、何かを考えるように顎に手をやりその場に立ち止まった。
エレフィナは急に立ち止まったアルヴィスに不思議に思い、アルヴィスの方へと足を進める。
「⋯⋯どうしました?」
アルヴィスの二、三歩手前で足を止めるとエレフィナは問いかける。
何か、今後の動き方で思う所があったのだろうか、と思いエレフィナは暫し待つがアルヴィスは考え込んでいるようで唇を開こうとしない。
エレフィナはアルヴィスの話は考えが纏まる事を待つ事にして、自分が今後どう動くつもりか話し始める。
「先日、お話した四家の件ですが。お父様とエヴァンお兄様と話し合いました」
エレフィナの言葉に反応したアルヴィスが、視線を向けてくる。
「処理はしておいたから、後は私のタイミングでいつでも動いていい、と」
「そうか⋯⋯」
そっとアルヴィスから視線を外すエレフィナに、アルヴィスは近寄ると自分と視線を合わすようにエレフィナの頬をそっと掴み、自分の方へと顔を向けさせる。
「エレフィナ嬢」
「──はい」
「これから君が行う行為によって人の人生を壊す事になる。それは、ちゃんと理解しているな?」
「はい」
「手を下した後は、少なからず後悔や、自責の念に苛まれると思う。ラビナ・ビビットを孤立させる為にこの処理自体はとても有効な手だ。⋯⋯けれど、正しい事なのかは誰にも分からないと思う」
エレフィナは、真っ直ぐにアルヴィスの瞳を見つめ返し力強く頷く。
「しんどくなったら、エレフィナ嬢には俺、や⋯⋯エドゥアルド公爵やエヴァンがいる。大人に頼っていいんだから、全部自分で背負い込まないで欲しい、という事は伝えておく」
覚えておいてくれ、と頬を撫でられてエレフィナは再度強く頷いた。
「はい。そう言って下さるアルヴィス様が、お父様やお兄様がいて下さるだけでとても心強い事ですわ」
「ああ、エレフィナ嬢には頼もしい味方が複数いるんだ。忘れないでくれよ」
アルヴィスはそっとエレフィナの頬から手を離すとそれで、と言葉を続ける。
「どうやって退学に追い込む?一度に四人全員か?それとも一人ずつ?」
「方法は、私の名で被害を訴えその証拠を添付した物をお父様のエドゥアルド大公から、という形で学園に報告書を上げて頂きますわ。対象人数は一人ずつ。一先ずご実家で反省をして頂いた後にご家族と共に南部の辺境へと赴いて頂き、しっかりと我が国を守って頂きます」
「生徒の実家と、南部の辺境伯には根回し済か」
「ええ、もちろんですわ」
にっこりとエレフィナはアルヴィスに微笑みながら答える。
「南部の辺境伯は我が公爵家と従兄弟のシュタイナーズ伯です。軍事面でとても強い発言力、権限を持っておりましてシュタイナーズ伯爵にしっかりと性根を鍛え直して欲しいとお伝え済ですわ」
きっと何年後かには素晴らしい成果を上げてくださるかもしれませんわね?とエレフィナは微笑むと言葉を続ける。
「南部には友好国のスロベストの軍も我が国と合同で駐留しておりますし、逃亡や間諜として動くのはまず無理ですわね」
だって、姫様がきっと許しませんわ。と続けるエレフィナに、アルヴィスは目を見開き口を開く。
「まさかもう、纏まったのか?」
「ええ。先日陛下からの許可も頂いたようです」
これで、ほぼ国内の情勢は安定した。と笑うエレフィナにアルヴィスは困ったように笑うと
「残るはラビナ・ビビットとコンラット殿下だな」
と続ける。
その名前を聞いてエレフィナはぴくり、と肩を揺らすと、小さくこくりと頷く。
「ええ、気付いた時には自分達の周りからご自分達を擁護していた人達が消えている⋯⋯数ヶ月後には間違いなくそうなりますわ」
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