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第二章 辺境の繁栄街モンテテール・アドリアン

第15話 魔王への道

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「そういや、騎士団って言ってたけどそんなものあるのか?」
「ああ、あるな。こんな辺境に存在していることが驚きか?」
「あー、そんな感じ」

 騎士団。気になる単語を、とりあえず聞いてみる。

 その単語を聞いてから、俺の悪巧みの心がムクムクと沸いてきたのだ。
 それは、俺のダンジョンが悪名を得るための、とっても必要なことかもしれない。

「モンテ伯爵はさすがに知ってるよな」
「あ、ああ。当たり前じゃないか」
「OK、知らないな。じゃあ基礎的なところからざっくりと説明してやるぜ……と、言いたいところだが、俺もそこら辺は詳しくない」
「つまり?」
「ソフィア様、お願いします、ってことだ」
「仕方ないわね……ま、必要ないとこは省くわよ」

 ソフィアは少し息を吸う。

「ここはモンテ伯爵の領土。では無いわ」
「なのにモンテテール・アドリアン?」
「あら、少し考えればわかることよ。ここはモンテ伯爵の飛び地でね。直々に管理するのもめんどくさいから、って理由で商人のアドリアンがモンテ伯爵に管理を任されているのよ」

 そしてモンテ伯爵は軍事を司る高官らしい。

 だから、こんな辺境(辺境と言ってもこの先は強大な魔物がうじゃうじゃいるやべー地域らしい。だから隣国とかは無いんだとか)にも騎士団を置ける力がある。騎士団がいるということは治安も良くなるから人も集まり、商人が集まり……

 という正のループを繰り返してここら辺一帯では異常なまでの発展をしているんだとか。

 その話を聞いて、俺は笑うのを堪えられなかった。

 騎士がいるというだけでそこまで治安や、評価が高くなるのなら、それを俺のダンジョンにひきこんで全滅させたら?

 言うまでもない。俺のダンジョンの悪名は一瞬で広がって行くだろう。

 そして、その悪名の行くつく先は――【魔王】それただ一つ。

 どこか近いようで遠かった【魔王】のビジョンが、一気に鮮明になった気がした。

 じゃあそのためにはDPを稼がなければいけない。力を持たなければいけない。

 ああ、早くダンジョンに戻って拡張したい! 強い魔物を召喚スポーンさせたい!

「そんなにあたしの話が上手かった?」
「ソフィアの話は分かりやすくていいですよー」
「ありがと!」

 ソフィアは小雪をギュッと抱きしめた。

「さて、そろそろここについての説明は終わったか?」
「よく分かった」
「じゃ、紹介するぜ。ここが、モンテテール・アドリアン最大の通りにして、最も商売が盛んな場所。それがここだぜ」

 若干適当であっさりした説明だったが、なるほどここが最大の通りだったのか。
 来る時にチラッと通って、脇道に抜けるまで人間の多さが酷かった。

 そして一番に感じるのは、食べ物でも売っているのか感じるいい匂い。

「ああ、腹が減った……」
「そういや朝食もとってないな。どっか適当な店にでも入ろうぜ」
「あっ、それならこの前おすすめのところ見つけたわ! 行ってみない?」

 やったー、ご飯だー。

 ……財布を見る。銀貨が残り四枚と、銅貨三枚という惨憺たる状況。

 ぐおお、金が……





 ◆ ◆ ◆



 そしてまた翌日。
 気合いを入れのため本のピアスをバッチリつけて、覚悟を決める。

 ついに、待ちに待ったダンジョン攻略の日が来たのだ。やったね!

「改めて。俺はグリフィス・ソウル。戦闘スタイルは拳特化。よろしく頼むぜ!」
「あたしはソフィア・ゲイナー。よろしくね」
「こちらこそってやつだ」

 俺たちはダンジョンの入口で、気合いを入れ直すように、再び自己紹介をした。
 そして、同時に俺の今回パーティーを組んだ理由を説明する。

「俺の目的はただ一つ。前回俺が発見した時にギリギリで獲得できなかった宝箱のお宝を手に入れること。場所は覚えている。だから、極力戦いも避けるつもり。いいか?」
「OK」

 ポッカリと空いている大穴へ足を踏み入れる。

 ここからは完全に仕掛け通り俺が動けるか、アレスが動いてくれるか。
 作戦については前々から緻密に話し合っていたから大丈夫だとは思うが、とにかく失敗は許されない。

「おお、マジにダンジョンだぜ、これ」
「わかるのか?」
「ああ。一応潜ったこともあるからな。雰囲気で分かるってもんだぜ」
「あー、あたしはぼんやりとしか感じないからあんま信じない方がいいわよ」

 ソフィアが苦笑しながらそう言った。
 そして、俺はホーンラビットの巣へ続く穴を指して、喋る。

「あそこだ。あそこの穴を抜けたら、確かに宝があった」
「OK。だが、焦るところじゃないぜ。ここまで魔物が出てこないとなると、少し気になるしな」
「……ああ」

 グリフが黒の手袋をしている手をグーパーとさせる。
 当然の警戒だろう。
 俺は、目の前に宝が来ているというのに取りに行けない歯がゆさで地団駄を踏んだ……ようにみせかける。

 スケ方への合図だ。それをしっかりと聞き取ってくれたスケ方は、ハイ・ゴブリンを二匹こっちにけしかけてくれた。

 なんでハイ・ゴブリンが二匹いるかは後で問い詰めよう。

「ハイ・ゴブリンね。サクッとやっちゃうわ『慟哭の風シュリーク・ウィンド』」
『グアア!』

 青色のギロチンのような形をした風が、無慈悲にもゴブリンたちは一瞬でボロ雑巾にしてしまった。名誉ある戦死だ。
 そして、ソフィアはゴブリンたちの悲鳴に少し眉をひそめる。

「やっぱり、ギャアギャア言う声があんまり得意じゃないわ」
「ギャアギャア……? うわあああ、って人間らしい声を上げてなかったか?」
「えぇ……あなた、それ幻聴が聞こえてるわよ?」

 ……と、言うことはだ。

 アレスと会話していたようで、ソフィアが言うようにギャアギャア喋っているアレスに俺が一方的に独り言を話しかけていたことになるのか?

 悲しすぎないか、それ。

「俺もソフィアと同じくってやつだが……たまに魔物の声が聞ける野郎がいるとは聞く。トージはそう言う能力を持っているとかそういうやつだと思うね」

 あー、もしかしたらダンジョンマスターの特技なのか?
 思わぬ特技だ。

「……敵はハイ・ゴブリンで終わりだな。これ以上出てくる風もない。とっとと蹴りをつけた方がいい気がするぜ、俺はな」
「グリフが言うなら信じるわ」
「よし。じゃあ、ダッシュであの穴まで行くぞ!」

 俺の言葉にグリフとソフィアが頷く。

 本番はこれからだ。
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