上 下
8 / 40
第一章 ダンジョンのやりくりは大変です

第8話 魔石喪失事件

しおりを挟む
 玉座に座ってスラちゃんに水をあげながら、俺は考える。

 【DP1650】

 思わぬ臨時報酬の【DP1000】に、つくづくラッキーだと感じる。それに、ダンジョンの外にいるとダンジョンとの一体感(?)が薄れて、侵入者に気づけなくなる、というのが知れたのもかなりデカい。

 ダンジョンをそろそろ改装しようと考えていたからだ。
 ゴブリンたちが俺のダンジョンにいるとDPが増えるが、食料を取りに行く時はどうしてもいなくなってしまう。

 だからちょっと前に、ゴブリンたちが好んで食べるホーンラビットをこのダンジョンに召喚スポーンさせ、このダンジョンで生態系を確立させようと試みた。

 だが、呼び出したホーンラビットはゴブリンたちに滅多打ちにされて死亡してしまった。あまりに弱かったのと、逃げたり隠れたりをできる場所がなかったからだと思う。

 で、考えた。ホーンラビットだけが出入りできるホーンラビットの居住空間を作ればいいと。

 そしてそのためのDPも貯まった。よっしゃあ!

 では、改装……の前に、試すことがある。

 スケルトンやゾンビを召喚スポーンさせるのに必要なDPは100だったり、150だったり。
 でも、媒体があれば少しは消費DPを抑えられる。ゾンビだと【DP50】スケルトンだと【DP25】。

 その肝心の媒体も今手に入った。さっきの侵入者の死体だ。更に! 今は死にたてホヤホヤ、腐ってもいない。

 これをゾンビにするのもいいが、スケルトンにしたら骨に筋肉を装備している、という判定になっていけるんじゃないか?

 行くぞ、【創造クリエイトスケルトン】

 女の死体が立ち上がる。

 やっぱり俺の計算は完璧だったらしい。

 そして、ボキッと骨の折れる音がしてスケルトンは死んだ。





 ◆ ◆ ◆



 結局死体はDPにしました。悲しい。

 そういえば、スケ方のサックリやられてしまった片腕はくっつけたら治った。やったね。

 さあて、改装々々と。

「スラちゃーん、トージが遊んでくれないです」

 小雪がスラちゃんをモチモチと触りながら愚痴を吐いている。……後でね。

 さっきの戦いで戦力不足を痛感したから、少しでも得るDPを増やして強い魔物を召喚スポーンさせるためにこれは急ぎやらなければいけない。

 まず、この前召喚スポーンさせたホーンラビットの大きさを思い浮かべながら穴を開けて……2mくらいの長さのトンネルを作ってから、大きな空間を作り出す。

 床は草と土で……ああ、子供とかも産んで欲しいから、何となく居心地が良さそうな枯れ草も用意しよう。

 消費DP量は見ないでやった。多分、見ながらやったら血を吐いて死んでしまう。
 で、でも一応今のDPを確認しておこう……一応ね……

 【DP250】

 ぐ、ぐあーッ?!

「わ、わー! トージが血を吐いたー!」

 スラちゃんがズリズリと俺の吐いた血まで寄ってきて、食べ始めた。なんか怖い。

 全部舐めきったら最近水色に戻ってきていたのに、ほんのり桃色っぽくなった。何をしたいんだこの子……

 と、まあそれは置いておいて、肝心のホーンラビットを召喚スポーンさせなければ。

 必要なDPは75だったはずだ。よし、やるぞ……やってやるぞ……

 ええい、やってしまえ!

 というわけで召喚スポーンホーンラビット。

 見た目は俺の知っているうさぎがちょっとデカくなって、頭にユニコーンのような角が生えている、というだけ。
 まあ、ユニコーンなんて見たことないけど。

 そして移住空間に移動してもらった。感想は、まあまあ良い、と。

 そういえば一つ不安なことがあって、それはホーンラビットがそこに居着いて出てこないのではないかって懸念。

 まあ結果から言うとそんなことは無かった。歩いているアレスに三匹で襲いかかって、一匹やられて巣穴に戻って行ったからだ。

 そう、スケ方やスラちゃんにはゴブリンたちは味方だと伝えていたが、ホーンラビットには言っていなかったから侵入者と見なし戦いを吹っ掛けたのだ。

 いいね。二匹になったのは良くないけど、これはいいサンプルが取れたなあ。

 そして狩ったホーンラビットを玉座の間に持ってきて、老ゴブリンゴブリン・シャーマンとゴブリン夫婦にプレゼントしていた。

 心臓部分にあった魔石も夫婦の妊娠している方へ渡すようだ。

 俺が複雑な感情でそれを見ていると、アレスは何を思ったかホーンラビット肉の切れ端を俺にくれる。

 な、なんとも言えねえ……





 ◆ ◆ ◆



 はて。

 ゴブリン妻が大切そうに抱えている魔石を見ながら、俺はあることを疑問に思った。

 ホーンラビットから魔石が出るのなら、この前倒したマウンテンウルフやら何やらからも魔石が取れてもいい気がするのだ。

 うーん……?

「おーい、スケ方」

 ギクッ。そんな擬音が聞こえて来そうなほど俺に呼びかけられて緊張したスケ方は、ゆっくりとこちらを振り向く。
 怪しすぎる。

「お前、魔石どこやった?」

 知りませんよ、だと?

 なるほど、なるほど……

 この将来魔王になる予定の俺に嘘をつくのならば、こちらにも相応の対応というものがある。

 スケ方のために用意していた牛乳がある。

「スラちゃん、来い」

 スラちゃんが牛乳を見て、ちょうだい! と飛び跳ねるがまだだ。

「スケ方、これはお前のために用意してやったものだ。だが、虚偽、欺瞞、嘘。それをするのなら……わかるな?」

 カタカタ骨を鳴らして、スケ方は完全に恐怖している。

「ふははははは! こういうことだ!!」

 スラちゃんにダバーッと牛乳を振りかける!

 そのグロテスクな光景を目撃してしまったスケ方は膝から地面につき、ひぇーと泣き叫んでいる。

「はっはっは。愉快々々。己の立場を弁えろ、骨」

 そうしてようやく、スケ方は魔石を不正に着服していたことを自白した。

 やはり悪は正義に退治されるな。うんうん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~

クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。 ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。 下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。 幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない! 「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」 「兵士の武器の質を向上させる!」 「まだ勝てません!」 「ならば兵士に薬物投与するしか」 「いけません! 他の案を!」 くっ、貴族には制約が多すぎる! 貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ! 「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」 「勝てば正義。死ななきゃ安い」 これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

異世界のんびり料理屋経営

芽狐
ファンタジー
主人公は日本で料理屋を経営している35歳の新垣拓哉(あらかき たくや)。 ある日、体が思うように動かず今にも倒れそうになり、病院で検査した結果末期癌と診断される。 それなら最後の最後まで料理をお客様に提供しようと厨房に立つ。しかし体は限界を迎え死が訪れる・・・ 次の瞬間目の前には神様がおり「異世界に赴いてこちらの住人に地球の料理を食べさせてほしいのじゃよ」と言われる。 人間・エルフ・ドワーフ・竜人・獣人・妖精・精霊などなどあらゆる種族が訪れ食でみんなが幸せな顔になる物語です。 「面白ければ、お気に入り登録お願いします」

処理中です...