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第一章 ダンジョンのやりくりは大変です
第2話 私は本です(ドヤ顔)
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「む」
スケ方が勢いよく扉を引く。最初に押すタイプのドアと勘違いしていたのは見逃そう。
「やはり、ダンジョンか」
おじさん男剣士は油断なく剣を引き抜いて、スケ方に向ける。
元プロボクサー(だったらいいな)のスケ方はスッと拳の構えをとった。
おじさんは面白そうに片眉をあげた後、スケ方の拳が当たらないくらいの絶妙な間合いをとる。
なるほどこれはベテランだ。
スケ方の見た目は俺でも勝てそうだなーって思っちゃう程度の貧弱さだが、長年戦いに身を投じてきたであろうおじさんが安易に攻勢に出ないところを考えると、伝わるアレがあるのだろう。
最初に仕掛けたのはスケ方だった。
さっき俺にドヤ顔で見せつけてきたパンチの百倍は遅い拳を繰り出す。
俺からしたら間抜けな図だが、きっと牽制とかそういうもの。
「ほう?」
おじさんもスケ方の腕を狙って切りかかる。
――そしてスケ方は
一切の対応ができないで、何なら衝撃がエグかったのかそのままバラバラに砕け散った。
考えないようにはしていた。していたけど……これは、うん。
「クッソビビってんじゃねーか!!」
ちくしょう。弔わねえぜ、スケ方。
骨粉はいつかありがたく利用するから、それを土葬だと思え。
えー、どうすんのこれ。
DPもう無いんだけど。
「スラちゃん、ここで仲良く死ぬ運命っぽい」
いやだー、って言いたいのか水をポロポロと零しながらゴロゴロ膝の上で震えている。
控えめに言って死ぬほどかわいい。
「……かわいい?」
ん、んー。
あー、良いこと思いついた。
◆ ◆ ◆
「ぬぅ?」
スラちゃんが大慌て、って感じで元スケ方、現畑の肥料に近づいて行く。
そしてバラバラの骨の前でフルフルと震えて、大粒の水を流す。
「……魔物の友情というものか。すまないことをした」
おじさんがちょっと申し訳なさそうに頬をかく。
スラちゃんは自分の身がガンガン削られるのも構わず、スケ方の前で涙を流し続ける。
「これこれ。それでは死んでしまう。大した量はないが、これでも飲め」
おじさんは獣の革の中に入っている、牛乳(多分)をスラちゃんに近づける。優しい。
しかし、スラちゃんはスケ方の骸骨の前で泣いているだけで一向に気づく様子がない。それにちょっとじれったさを覚えたのか、その水筒でチョンチョンした。
「はは、気づいたか」
ちょっと戸惑う様子を見せたスラちゃんだったが、一口飲んでからはたまらん、と言った感じでゴクゴク飲み干す。
そんで水色感があったスラちゃんは白色になった。進化だね。
「お疲れ、スラちゃん」
「――ッ!? だれッ」
反射で剣を抜こうとしたけど、もう遅い。
後ろに忍び寄っていた俺が、おじさんの頭を壁に激突させる。
【DP200を獲得しました】
……いいね。
◆ ◆ ◆
「おめでとうございます。あなたは正式にダンジョンマスターとして認められました」
「おー、どうも。それであなたはどちら様でしょうか?」
なんか玉座の間に戻ったら知らん人がいた。是非今すぐお帰り頂こう。
「本です」
胸を張って、グッドポーズでドヤ顔をしてきた。なんだこいつ。
「すまん、今から友人の葬式があるんだ」
大事な大事なスケ方を成仏させねえといけない。
泣く演技のためにスラちゃんから水を出してもらった。わーい白色の涙が俺の頬を流れるぜ。
「……本、というところはツッコミを入れないのですか」
ムスッと、ちょっと頬を膨らませて怒ってくる。
本、だなんて名前は少し変だとは思うが、ツッコミを入れる程じゃない。
「なんか絶対違うこと考えてますね。……もう一度言います。私は、本です」
「あー、結構いい響きだね。似合ってる名前だ」
「名前は【ダンジョン経営の基本】ですよ?」
はて、と首を傾げる本ちゃん。
……頭おかしいぞこいつ!?
◆ ◆ ◆
「……と、言うわけです。わかりましたか?」
ムッスーとちょっと怒り気味に俺に早口説明をかましてきた本ちゃん。
俺が適当に頷くと、本ちゃんもうんうん、と満足気な表情で頷いてパッツンの前髪がフリフリと揺れる。
まあ、
・私は本です。(ガチですよ! と強調)
・あなたはダンジョンマスターになりました。
・なので私は本です。(電波要素再発)
ってことらしい。
俺が頭に敷いた時は禍々しい本だったと覚えているけど、今のこの子の姿は白髪赤目であんまり本要素がない気がする。
つまり嘘だ。
「うん。それに、侵入者は殺さないとな……」
今ダンジョンから侵入者がいるっぽい感じがしないのは誤作動的なアレで、この子は多分侵入者だろう。
心は痛むが、俺はこの子を殺めなければいけない。だってダンジョンマスターなのだから。
それに俺のためになってくれる、というのならなら死も厭わないんだろう。
おじさんから回収した剣を抜く。
「目、瞑った方がいいと思うわ。大丈夫、一瞬で終わらせる」
そう言ったら、ポカンと口を開いた後にアワアワと慌てだした。
うーん、スラちゃんには及ばないけどかわいいな。
「じゃ、行くぞー」
「ま、まま、ストップ! 待って、待ってください!」
「わり、マジでDP不足なんだ。助けてくれ」
「う、うぅ、そんな目で見ないでください……じゃなくて!」
「じゃなくて?」
ちょっとモジモジしてたけど、キッとこちらを睨みつけてこう言った。
「私があなたを小金持ちにしましょう! DPいっぱい!」
「よし。じゃあその礎になってくれ」
あのおじさんで200DP。この子で何DPだろう?
剣なんて久しぶりに触ったからまだ手になじまないけど、とりあえず勢いよく振る。
「わ、わー! この人ガチです! やべーやつです!!」
「いや、冷静に考えて自分を本って言ってるお前の方がおかしいぞ」
切る。
あんまり手応えはないかなー。
少女の死体が倒れているだろう地面を見ると、なんとビックリ!
【ダンジョン経営の基本~これであなたも魔王になれる!~】という本が落ちていた。
「……マジか」
衝撃! 自分を本だと言っていた少女は本だったーッ!?
スケ方が勢いよく扉を引く。最初に押すタイプのドアと勘違いしていたのは見逃そう。
「やはり、ダンジョンか」
おじさん男剣士は油断なく剣を引き抜いて、スケ方に向ける。
元プロボクサー(だったらいいな)のスケ方はスッと拳の構えをとった。
おじさんは面白そうに片眉をあげた後、スケ方の拳が当たらないくらいの絶妙な間合いをとる。
なるほどこれはベテランだ。
スケ方の見た目は俺でも勝てそうだなーって思っちゃう程度の貧弱さだが、長年戦いに身を投じてきたであろうおじさんが安易に攻勢に出ないところを考えると、伝わるアレがあるのだろう。
最初に仕掛けたのはスケ方だった。
さっき俺にドヤ顔で見せつけてきたパンチの百倍は遅い拳を繰り出す。
俺からしたら間抜けな図だが、きっと牽制とかそういうもの。
「ほう?」
おじさんもスケ方の腕を狙って切りかかる。
――そしてスケ方は
一切の対応ができないで、何なら衝撃がエグかったのかそのままバラバラに砕け散った。
考えないようにはしていた。していたけど……これは、うん。
「クッソビビってんじゃねーか!!」
ちくしょう。弔わねえぜ、スケ方。
骨粉はいつかありがたく利用するから、それを土葬だと思え。
えー、どうすんのこれ。
DPもう無いんだけど。
「スラちゃん、ここで仲良く死ぬ運命っぽい」
いやだー、って言いたいのか水をポロポロと零しながらゴロゴロ膝の上で震えている。
控えめに言って死ぬほどかわいい。
「……かわいい?」
ん、んー。
あー、良いこと思いついた。
◆ ◆ ◆
「ぬぅ?」
スラちゃんが大慌て、って感じで元スケ方、現畑の肥料に近づいて行く。
そしてバラバラの骨の前でフルフルと震えて、大粒の水を流す。
「……魔物の友情というものか。すまないことをした」
おじさんがちょっと申し訳なさそうに頬をかく。
スラちゃんは自分の身がガンガン削られるのも構わず、スケ方の前で涙を流し続ける。
「これこれ。それでは死んでしまう。大した量はないが、これでも飲め」
おじさんは獣の革の中に入っている、牛乳(多分)をスラちゃんに近づける。優しい。
しかし、スラちゃんはスケ方の骸骨の前で泣いているだけで一向に気づく様子がない。それにちょっとじれったさを覚えたのか、その水筒でチョンチョンした。
「はは、気づいたか」
ちょっと戸惑う様子を見せたスラちゃんだったが、一口飲んでからはたまらん、と言った感じでゴクゴク飲み干す。
そんで水色感があったスラちゃんは白色になった。進化だね。
「お疲れ、スラちゃん」
「――ッ!? だれッ」
反射で剣を抜こうとしたけど、もう遅い。
後ろに忍び寄っていた俺が、おじさんの頭を壁に激突させる。
【DP200を獲得しました】
……いいね。
◆ ◆ ◆
「おめでとうございます。あなたは正式にダンジョンマスターとして認められました」
「おー、どうも。それであなたはどちら様でしょうか?」
なんか玉座の間に戻ったら知らん人がいた。是非今すぐお帰り頂こう。
「本です」
胸を張って、グッドポーズでドヤ顔をしてきた。なんだこいつ。
「すまん、今から友人の葬式があるんだ」
大事な大事なスケ方を成仏させねえといけない。
泣く演技のためにスラちゃんから水を出してもらった。わーい白色の涙が俺の頬を流れるぜ。
「……本、というところはツッコミを入れないのですか」
ムスッと、ちょっと頬を膨らませて怒ってくる。
本、だなんて名前は少し変だとは思うが、ツッコミを入れる程じゃない。
「なんか絶対違うこと考えてますね。……もう一度言います。私は、本です」
「あー、結構いい響きだね。似合ってる名前だ」
「名前は【ダンジョン経営の基本】ですよ?」
はて、と首を傾げる本ちゃん。
……頭おかしいぞこいつ!?
◆ ◆ ◆
「……と、言うわけです。わかりましたか?」
ムッスーとちょっと怒り気味に俺に早口説明をかましてきた本ちゃん。
俺が適当に頷くと、本ちゃんもうんうん、と満足気な表情で頷いてパッツンの前髪がフリフリと揺れる。
まあ、
・私は本です。(ガチですよ! と強調)
・あなたはダンジョンマスターになりました。
・なので私は本です。(電波要素再発)
ってことらしい。
俺が頭に敷いた時は禍々しい本だったと覚えているけど、今のこの子の姿は白髪赤目であんまり本要素がない気がする。
つまり嘘だ。
「うん。それに、侵入者は殺さないとな……」
今ダンジョンから侵入者がいるっぽい感じがしないのは誤作動的なアレで、この子は多分侵入者だろう。
心は痛むが、俺はこの子を殺めなければいけない。だってダンジョンマスターなのだから。
それに俺のためになってくれる、というのならなら死も厭わないんだろう。
おじさんから回収した剣を抜く。
「目、瞑った方がいいと思うわ。大丈夫、一瞬で終わらせる」
そう言ったら、ポカンと口を開いた後にアワアワと慌てだした。
うーん、スラちゃんには及ばないけどかわいいな。
「じゃ、行くぞー」
「ま、まま、ストップ! 待って、待ってください!」
「わり、マジでDP不足なんだ。助けてくれ」
「う、うぅ、そんな目で見ないでください……じゃなくて!」
「じゃなくて?」
ちょっとモジモジしてたけど、キッとこちらを睨みつけてこう言った。
「私があなたを小金持ちにしましょう! DPいっぱい!」
「よし。じゃあその礎になってくれ」
あのおじさんで200DP。この子で何DPだろう?
剣なんて久しぶりに触ったからまだ手になじまないけど、とりあえず勢いよく振る。
「わ、わー! この人ガチです! やべーやつです!!」
「いや、冷静に考えて自分を本って言ってるお前の方がおかしいぞ」
切る。
あんまり手応えはないかなー。
少女の死体が倒れているだろう地面を見ると、なんとビックリ!
【ダンジョン経営の基本~これであなたも魔王になれる!~】という本が落ちていた。
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