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第9話
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寺田はグデングデンに酔って眠ってしまった。
「だらしねえなあ寺田。これくらいで酔い潰れやがって。
たかがテキーラ1本じゃねえか。大将、おあいそ。それからタクシー1台呼んで」
「あいよ! タクシー、ラブホまで1台!」
「あはははは」
そして大将の言う通り、絵梨花は近くのラブホへ寺田を連れて入った。
「ほら、着いたぞ寺田。お前の童貞は貰ったぜ!」
部屋に入り、絵梨花は寺田をそのままベッドに寝かせて自分だけシャワーを浴びた。
(生理前だからムラムラする。昨日は自分でしちゃったしなあ。
会社を出る時、勝負下着に着替えて来たし、準備OK!)
黒のブラとパンティを着けて、絵梨花は湯上がり着に着替えた。
ラブホには紐付きのバスローブは少ない。そういうプレイに使われたり、殺人事件に発展することもあるからだ。
「かわいい顔しちゃって。うふっ」
絵梨花は寺田のあどけない顔を見詰めて微笑むと、寺田の服を脱がし始めた。
もちろん絵梨花はバージンではない、初体験は16歳の夏、高校の同級生だった。
それから男性経験は4人。多くもなく少なくもなくといったところであった。
いよいよボクサーパンツを脱がそうとした時、寺田が寝言を言った。
「桃子先輩、どうしてボクじゃ駄目なんですか・・・」
絵梨花の手が止まった。
「寺田のばか」
絵梨花は泣いた。
目を覚ました寺田は驚いた。
隣で絵梨花が裸で寝ていたからだ。
「えっ!」
「起きたのか? 寺田」
「俺、まさか・・・」
「安心しろ、お前は何もしてねえよ」
「あー、良かった」
「良かったじゃねえだろう? 据え膳食わぬは男のなんとかっていうじゃねえか」
「だって絵梨花は俺の大切な友だちだから」
「寺田、お前って奴はまったくしょうがねえ奴だな?」
絵梨花は軽く寺田にキスをした。
「さあ、風呂入って来いよ。帰るぞ寺田」
「・・・うん」
寺田は風呂場へと向かった。
「寺田のばか・・・、マジメか」
月曜日、桃子は寺田を食事に誘った。
「寺田、今夜ご飯でもどう?」
「いいんですか? 僕で」
「当たり前じゃないの、ちょっと話しておきたいこともあるし」
「はい・・・」
桃子は寺田をお好み焼き屋に誘った。
「お好み焼きって作るの楽しいよね?」
桃子は寺田の前でてきぱきとお好み焼きを焼いた。
「凄いですね、桃子さん」
「私ね、お好み焼きは広島なの。だって色んな工程があって楽しいじゃない?
誰が作っても同じじゃないところがいいのよねえ。
薄力粉をこうやって薄く伸ばしてキャベツをどっさり乗せる。
そしてその上にイカ天と豚バラと九条ネギを乗せて、そしてこうやってひっくり返して隣で焼きそばを炒める。
キャベツがしんなりとして来たら焼きそばはその上に乗せる。目玉焼きを焼いて黄身を崩し、今度はそこへ本体を乗せてひっくり返す。オタフクソースを塗って花カツオと青のりを掛けて完成よ。
桃子スペシャル、広島焼きの出来上がりー! さあ食べて食べて」
桃子はお好み焼きを切り分けると、それを寺田に勧めた。
「はふはふ あちちちち!」
「火傷しないように食べなさいよ。これにビールは最高よねえ」
桃子と寺田は美味しそうに生ビールを飲んだ。
「ゴックゴック あー美味いなあ」
「ホント、最高ね?」
「それで話って何ですか?」
「寺田が私の事をどう思ってくれているのか私にはわからない。
でもね、私は寺田のことはかわいい後輩だと思っているの、弟みたいに。
同じ会社の同僚、仕事仲間として信頼しているわ。
この前は助けてくれて本当にありがとう、感謝してる。でもそれ以上踏み込んでお付き合いする気にはなれないの」
寺田は箸を置いて桃子をまっすぐに見詰めて言った。
「僕、桃子先輩のことが好きです!」
「寺田・・・」
「ずっと好きでした、先輩のことが。今もすごく好きです!」
「ありがとう、でもね」
「それは聞きました、亡くなった優作さんのことが忘れられないことは。
でも死ぬのは優作さんだけじゃありません!
僕も、そして桃子さんもいつ死ぬかなんてわからないじゃないですか!
死んでしまった人はもう帰っては来ないんです!
亡くなった優作さんは果たしてそれでうれしいでしょうか! ずっと自分を思い続けてくれている桃子さんをありがたいと思うでしょうか? 僕ならそうは思いません」
「じゃあどう思うの?」
「悲しくなります。そうして年老いて行く桃子さんのことが」
「・・・私の自己満足だと言いたいの?」
「そうじゃありません、もし僕が死んでも、桃子さんには、桃子さんにはしあわせになって欲しいと思うんです!
その相手が僕じゃダメだと言うのなら諦めます。でも桃子さんにはしあわせになって欲しいんです!」
「私はしあわせよ。すごくしあわせ。だって紀香もいるし、両親もいる。優作もいるし、そして寺田君もいる。
私は今、凄くしあわせ」
「桃子さん・・・。やっぱり僕じゃダメですか?」
「寺田君のことはキライじゃないわ。でもね、まだそういう気になれないの。
だって私の中ではまだ、優作は死んではいないから。ごめんなさい」
寺田は何も言うことが出来なかった。
いつしか生ビールの泡も消え、温くなっていた。
寺田と桃子のこの今の微妙な関係のように。
「だらしねえなあ寺田。これくらいで酔い潰れやがって。
たかがテキーラ1本じゃねえか。大将、おあいそ。それからタクシー1台呼んで」
「あいよ! タクシー、ラブホまで1台!」
「あはははは」
そして大将の言う通り、絵梨花は近くのラブホへ寺田を連れて入った。
「ほら、着いたぞ寺田。お前の童貞は貰ったぜ!」
部屋に入り、絵梨花は寺田をそのままベッドに寝かせて自分だけシャワーを浴びた。
(生理前だからムラムラする。昨日は自分でしちゃったしなあ。
会社を出る時、勝負下着に着替えて来たし、準備OK!)
黒のブラとパンティを着けて、絵梨花は湯上がり着に着替えた。
ラブホには紐付きのバスローブは少ない。そういうプレイに使われたり、殺人事件に発展することもあるからだ。
「かわいい顔しちゃって。うふっ」
絵梨花は寺田のあどけない顔を見詰めて微笑むと、寺田の服を脱がし始めた。
もちろん絵梨花はバージンではない、初体験は16歳の夏、高校の同級生だった。
それから男性経験は4人。多くもなく少なくもなくといったところであった。
いよいよボクサーパンツを脱がそうとした時、寺田が寝言を言った。
「桃子先輩、どうしてボクじゃ駄目なんですか・・・」
絵梨花の手が止まった。
「寺田のばか」
絵梨花は泣いた。
目を覚ました寺田は驚いた。
隣で絵梨花が裸で寝ていたからだ。
「えっ!」
「起きたのか? 寺田」
「俺、まさか・・・」
「安心しろ、お前は何もしてねえよ」
「あー、良かった」
「良かったじゃねえだろう? 据え膳食わぬは男のなんとかっていうじゃねえか」
「だって絵梨花は俺の大切な友だちだから」
「寺田、お前って奴はまったくしょうがねえ奴だな?」
絵梨花は軽く寺田にキスをした。
「さあ、風呂入って来いよ。帰るぞ寺田」
「・・・うん」
寺田は風呂場へと向かった。
「寺田のばか・・・、マジメか」
月曜日、桃子は寺田を食事に誘った。
「寺田、今夜ご飯でもどう?」
「いいんですか? 僕で」
「当たり前じゃないの、ちょっと話しておきたいこともあるし」
「はい・・・」
桃子は寺田をお好み焼き屋に誘った。
「お好み焼きって作るの楽しいよね?」
桃子は寺田の前でてきぱきとお好み焼きを焼いた。
「凄いですね、桃子さん」
「私ね、お好み焼きは広島なの。だって色んな工程があって楽しいじゃない?
誰が作っても同じじゃないところがいいのよねえ。
薄力粉をこうやって薄く伸ばしてキャベツをどっさり乗せる。
そしてその上にイカ天と豚バラと九条ネギを乗せて、そしてこうやってひっくり返して隣で焼きそばを炒める。
キャベツがしんなりとして来たら焼きそばはその上に乗せる。目玉焼きを焼いて黄身を崩し、今度はそこへ本体を乗せてひっくり返す。オタフクソースを塗って花カツオと青のりを掛けて完成よ。
桃子スペシャル、広島焼きの出来上がりー! さあ食べて食べて」
桃子はお好み焼きを切り分けると、それを寺田に勧めた。
「はふはふ あちちちち!」
「火傷しないように食べなさいよ。これにビールは最高よねえ」
桃子と寺田は美味しそうに生ビールを飲んだ。
「ゴックゴック あー美味いなあ」
「ホント、最高ね?」
「それで話って何ですか?」
「寺田が私の事をどう思ってくれているのか私にはわからない。
でもね、私は寺田のことはかわいい後輩だと思っているの、弟みたいに。
同じ会社の同僚、仕事仲間として信頼しているわ。
この前は助けてくれて本当にありがとう、感謝してる。でもそれ以上踏み込んでお付き合いする気にはなれないの」
寺田は箸を置いて桃子をまっすぐに見詰めて言った。
「僕、桃子先輩のことが好きです!」
「寺田・・・」
「ずっと好きでした、先輩のことが。今もすごく好きです!」
「ありがとう、でもね」
「それは聞きました、亡くなった優作さんのことが忘れられないことは。
でも死ぬのは優作さんだけじゃありません!
僕も、そして桃子さんもいつ死ぬかなんてわからないじゃないですか!
死んでしまった人はもう帰っては来ないんです!
亡くなった優作さんは果たしてそれでうれしいでしょうか! ずっと自分を思い続けてくれている桃子さんをありがたいと思うでしょうか? 僕ならそうは思いません」
「じゃあどう思うの?」
「悲しくなります。そうして年老いて行く桃子さんのことが」
「・・・私の自己満足だと言いたいの?」
「そうじゃありません、もし僕が死んでも、桃子さんには、桃子さんにはしあわせになって欲しいと思うんです!
その相手が僕じゃダメだと言うのなら諦めます。でも桃子さんにはしあわせになって欲しいんです!」
「私はしあわせよ。すごくしあわせ。だって紀香もいるし、両親もいる。優作もいるし、そして寺田君もいる。
私は今、凄くしあわせ」
「桃子さん・・・。やっぱり僕じゃダメですか?」
「寺田君のことはキライじゃないわ。でもね、まだそういう気になれないの。
だって私の中ではまだ、優作は死んではいないから。ごめんなさい」
寺田は何も言うことが出来なかった。
いつしか生ビールの泡も消え、温くなっていた。
寺田と桃子のこの今の微妙な関係のように。
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