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第4話
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「もしもし、紀香さんですか?
寺田です。桃子先輩が大変なんですけど、これからそちらに伺っても大丈夫ですか?」
「大変って、どうしたの?」
「坂巻社長に睡眠薬のような物を飲まされたようで、まだ意識がハッキリしません。
おそらく一時的な症状だとは思うので、ご自宅にお連れするとご家族が心配するでしょうし、かと言って病院に行けば警察沙汰になる可能性もあります。
ですから少し紀香さんのところで少し様子を見ようかと思うのですがいかがでしょうか?
僕の家では流石に拙いでしょうし」
「わかったわ。住所はね・・・」
「わかりました、ではこれからお邪魔します」
「気を付けてね」
紀香はマンションの前で待っていてくれた。
「大変だったわね? 桃子、大丈夫かしら? そんなヘンなクスリを盛られたなんて」
「はい、よく眠っているようなのですが、冷たい氷とかで目が覚めるといいのですが」
「とにかく運びましょう」
「はい」
寺田は桃子をクルマから下ろし、おんぶした。
「寺田君、意外とチカラ持ちなのね?」
「高校、大学とラグビーをしていましたから」
「へえー、見掛けによらないわね?」
「よく言われます」
ところがこの寺田、学生時代にはプロからも誘いがあったほどの名ラガーマンだったのである。
紀香も独身だったが、同棲して3年になる彼氏がいた。
「さあ、あがってちょうだい。少しちらかっているけどね。
それからこの人、彼氏なの。気にしないで」
「こんにちは。会社の後輩の寺田といいます。紀香先輩にはいつも迷惑ばかり掛けてすみません」
「どうも、紀香の彼氏です」
紀香の彼氏はバンドマンだった。
いわゆるヒモというやつで、生活の殆どと、小遣いを紀香に貢いで貰っていた。
「桃、桃、大丈夫?」
「う、うーん」
紀香はレジ袋に氷を入れ、静かに桃子の額に乗せた。
「冷たーい、冷たいよー、むにゃむにゃ・・・」
「桃、しっかりして桃!」
すると寺田が台所に行くとコップで水を含み、そのまま口移しで桃子に水を飲ませた。
「ち、ちょっと、寺田君! アンタ何してんの! どさくさに紛れて!」
「この方が早いかと思いまして。
だって紀香さんや彼氏さんでは無理ですよね?」
「そ、それはそうだけど。でも、何もそこまでしなくても・・・」
寺田は桃子の名を呼びながら、頬を叩いた。
「桃子先輩! 桃子先輩! 起きて下さいよ! 会社に遅れますよ!」
「うーん、会社?」
「そうですよ! 会社に遅れちゃいますよ!」
「わかったから、もう少しだけ、寝させてよー」
紀香と寺田は顔を見合わせて笑った。
「大丈夫なようですね?」
「そうね? ところで何があったの?」
「何だかちょっと心配になって少し離れて見ていたんですよ。桃子先輩と坂巻社長のこと。
そうしたら桃子先輩がお手洗いに立った隙にこれですよ」
その寺田の携帯には、グラスに何かを入れている、坂巻社長の姿がしっかりと写っていた。
「睡眠薬か何かかしらね?」
「それからこの後、こうなりました」
ホテルの部屋に向かう、客室係と坂巻に抱きかかえられる桃子の姿が動画に収まっていた。
「これって犯罪じゃないの! 酷い! 桃に警察に被害届を出させるべきよ!」
「それは桃子先輩が眼を覚ましてから、先輩がどう判断するかですね?
その前にご家族が心配されるといけないので、すみませんが紀香先輩、桃子先輩の家に連絡をしていただけませんか?」
「うん、わかった。
寺田君、あんた意外に出来る男なのね? 見直したわ」
「畏れ入ります」
2時間ほどして桃子が眼を覚ました。
「あれー、なんで私、紀香の家にいるの?」
「寺田君が運んで来てくれたのよ、桃をおんぶして」
「えっー、寺田がなんで私をおんぶしたの?」
「アンタが危うく坂巻にレイプされるところだったらしいわよ。
睡眠薬を飲まされたみたいだったそうよ、寺田君がスマホで動画を撮っていてわかったけど。
それからホテルの部屋に連れ込まれそうになった動画も見せてもらった。
大丈夫? 桃子? 病院に行った方がいいんじゃない? 警察にも」
「そうだったんだ。ごめんね、紀香、介抱してもらっちゃって。
寺田は?」
「帰ったわよ、「後はお願いします」って。
警察に被害届を出した方がいいんじゃない?」
「そう。被害届はいいわ、契約のこともあるし。
紀香の傑作デザインも使いたいしね?
それにこれで向こうの弱みも握れたし、これからは仕事もやり易くなるしね?」
「アンタってホント、逞しいのね?」
「私、寺田に助けられたんだ?」
「そうよ、見直したわよ、寺田のこと。それに・・・」
「それに何よ?」
「それに、チューしてたのよアイツ、桃に」
「チュ、チューしてたあ!」
「桃を早く起こさなきゃって、口移しで水を飲ませてたの。
いやらしい意味じゃないわよ。
でも桃を助けようと必死だったわ」
「そうだったんだ・・・」
「お家には連絡しておいたから安心して。
まだ早いから、もう少し寝ましょうか?
朝ごはん、食べて行きなよ」
「うん、ありがとう紀香」
「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
まさかそんなことがあったとは、桃子は知る由もなかった。
(私が寺田に助けられた?)
明日、寺田にお礼を言わなければと桃子は思ったが、色んなことを考えると、中々眠ることが出来なかった。
寺田です。桃子先輩が大変なんですけど、これからそちらに伺っても大丈夫ですか?」
「大変って、どうしたの?」
「坂巻社長に睡眠薬のような物を飲まされたようで、まだ意識がハッキリしません。
おそらく一時的な症状だとは思うので、ご自宅にお連れするとご家族が心配するでしょうし、かと言って病院に行けば警察沙汰になる可能性もあります。
ですから少し紀香さんのところで少し様子を見ようかと思うのですがいかがでしょうか?
僕の家では流石に拙いでしょうし」
「わかったわ。住所はね・・・」
「わかりました、ではこれからお邪魔します」
「気を付けてね」
紀香はマンションの前で待っていてくれた。
「大変だったわね? 桃子、大丈夫かしら? そんなヘンなクスリを盛られたなんて」
「はい、よく眠っているようなのですが、冷たい氷とかで目が覚めるといいのですが」
「とにかく運びましょう」
「はい」
寺田は桃子をクルマから下ろし、おんぶした。
「寺田君、意外とチカラ持ちなのね?」
「高校、大学とラグビーをしていましたから」
「へえー、見掛けによらないわね?」
「よく言われます」
ところがこの寺田、学生時代にはプロからも誘いがあったほどの名ラガーマンだったのである。
紀香も独身だったが、同棲して3年になる彼氏がいた。
「さあ、あがってちょうだい。少しちらかっているけどね。
それからこの人、彼氏なの。気にしないで」
「こんにちは。会社の後輩の寺田といいます。紀香先輩にはいつも迷惑ばかり掛けてすみません」
「どうも、紀香の彼氏です」
紀香の彼氏はバンドマンだった。
いわゆるヒモというやつで、生活の殆どと、小遣いを紀香に貢いで貰っていた。
「桃、桃、大丈夫?」
「う、うーん」
紀香はレジ袋に氷を入れ、静かに桃子の額に乗せた。
「冷たーい、冷たいよー、むにゃむにゃ・・・」
「桃、しっかりして桃!」
すると寺田が台所に行くとコップで水を含み、そのまま口移しで桃子に水を飲ませた。
「ち、ちょっと、寺田君! アンタ何してんの! どさくさに紛れて!」
「この方が早いかと思いまして。
だって紀香さんや彼氏さんでは無理ですよね?」
「そ、それはそうだけど。でも、何もそこまでしなくても・・・」
寺田は桃子の名を呼びながら、頬を叩いた。
「桃子先輩! 桃子先輩! 起きて下さいよ! 会社に遅れますよ!」
「うーん、会社?」
「そうですよ! 会社に遅れちゃいますよ!」
「わかったから、もう少しだけ、寝させてよー」
紀香と寺田は顔を見合わせて笑った。
「大丈夫なようですね?」
「そうね? ところで何があったの?」
「何だかちょっと心配になって少し離れて見ていたんですよ。桃子先輩と坂巻社長のこと。
そうしたら桃子先輩がお手洗いに立った隙にこれですよ」
その寺田の携帯には、グラスに何かを入れている、坂巻社長の姿がしっかりと写っていた。
「睡眠薬か何かかしらね?」
「それからこの後、こうなりました」
ホテルの部屋に向かう、客室係と坂巻に抱きかかえられる桃子の姿が動画に収まっていた。
「これって犯罪じゃないの! 酷い! 桃に警察に被害届を出させるべきよ!」
「それは桃子先輩が眼を覚ましてから、先輩がどう判断するかですね?
その前にご家族が心配されるといけないので、すみませんが紀香先輩、桃子先輩の家に連絡をしていただけませんか?」
「うん、わかった。
寺田君、あんた意外に出来る男なのね? 見直したわ」
「畏れ入ります」
2時間ほどして桃子が眼を覚ました。
「あれー、なんで私、紀香の家にいるの?」
「寺田君が運んで来てくれたのよ、桃をおんぶして」
「えっー、寺田がなんで私をおんぶしたの?」
「アンタが危うく坂巻にレイプされるところだったらしいわよ。
睡眠薬を飲まされたみたいだったそうよ、寺田君がスマホで動画を撮っていてわかったけど。
それからホテルの部屋に連れ込まれそうになった動画も見せてもらった。
大丈夫? 桃子? 病院に行った方がいいんじゃない? 警察にも」
「そうだったんだ。ごめんね、紀香、介抱してもらっちゃって。
寺田は?」
「帰ったわよ、「後はお願いします」って。
警察に被害届を出した方がいいんじゃない?」
「そう。被害届はいいわ、契約のこともあるし。
紀香の傑作デザインも使いたいしね?
それにこれで向こうの弱みも握れたし、これからは仕事もやり易くなるしね?」
「アンタってホント、逞しいのね?」
「私、寺田に助けられたんだ?」
「そうよ、見直したわよ、寺田のこと。それに・・・」
「それに何よ?」
「それに、チューしてたのよアイツ、桃に」
「チュ、チューしてたあ!」
「桃を早く起こさなきゃって、口移しで水を飲ませてたの。
いやらしい意味じゃないわよ。
でも桃を助けようと必死だったわ」
「そうだったんだ・・・」
「お家には連絡しておいたから安心して。
まだ早いから、もう少し寝ましょうか?
朝ごはん、食べて行きなよ」
「うん、ありがとう紀香」
「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
まさかそんなことがあったとは、桃子は知る由もなかった。
(私が寺田に助けられた?)
明日、寺田にお礼を言わなければと桃子は思ったが、色んなことを考えると、中々眠ることが出来なかった。
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