6 / 12
第6話
しおりを挟む
病院の廊下で葵とすれ違った。
「今夜、待ってるから」
「肉を買って行くからすき焼きな?」
「うんわかった」
私は肉を買い、葵のマンションを訪れた。
満面の笑顔で俺に抱きつく葵。
「耕ちゃん、卒業おめでとう!」
「もう知っているのか? 今月いっぱいで病院を辞めることにした」
「そっちじゃなくて奥さんとお別れするんでしょ?
もうすでにさよならしちゃったりして?」
「腹減った。すき焼きにするぞ」
「うん! 準備しておいたよ」
俺たちはすき焼きを食べながらビールを飲んだ。
「ねえねえ、これで私を「山本葵」にしてくれるんだよね?」
俺は肉を卵につけながらそれを頬張った。
「夕べ、女房に離婚届を渡そうとしたら拒否された」
「何それ? 自分だって浮気してるくせに」
「それは俺も同じだ」
「酷い! 私はただのセフレなの? 本気じゃなくて浮気なの?」
葵は涙ぐんでいた。
「そうじゃない、俺は葵も好きだ」
「葵「も」って何よ!」
「ごめん、お前とはもう今日でお別れだ。終わりにしよう」
すると葵は箸を放り投げ、ビール瓶を持つと残っていたビールを俺の頭にゆっくりと注いだ。
俺の頭を伝い、ビールが床に敷かれた絨毯に流れ落ちて行った。
「あなた、少し頭を冷やした方がいいわよ」
俺はビールがなくなるまでじっと我慢していた。
「相手は誰なの?」
「患者だ。酷いうつ病の」
「うつ病だから何! 私はもうそんなのとっくに通り越してるわよ!
誰のせい? あなたのせいでしょう!」
今度は髪の毛を鷲掴みにされた。
精神障害のない人間などいない。それは俺も同じだった。
俺は葵を平手打ちした。
「何をするの!」
「俺はお前を愛してる、脱げ、オペをしてやる」
葵はうっとりとした目で着ていた服を脱ぎ捨て、全裸になった。
「抱いて」
俺たちは激しくキスをしてその場で行為に及んだ。
ダイニングテーブルに手をつかせ、葵をバックから攻めた。
「は は は・・・」
「耕三、べ、ベッドで抱いて・・・」
獣のようになって俺は葵を犯し続けた。
「好きよ好きなの! あなた、が、大好き!」
「今日から俺はお前とここで一緒に暮らす、いいな?」
「よろこんで!」
俺は自分勝手にクライマックスを迎え、葵の顔に精子を浴びせた。
葵は口の周りに飛んだザーメンを舐めた。
「セフレはイヤ、あなたの一番になりたいの」
「バカな女だ」
俺はその日から葵と同棲することにした。
養成所への合格が決まった。
受験資格は18才以上の高卒ということだった。
中卒ではついていけないほどのカリキュラムなのだろうか?
試験は1次が書類審査で、2次が集団面接だった。
「ほう? 山本耕三さんは精神科の医師なんですか?
初めてですよ、そんな人がお笑いをやりたいだなんて、実に愉快」
面接会場に羨望の声があがった。
「お笑いと医者の二刀流やなんて? 大谷じゃあるまいし、何考えてんの?」
「いや、二刀流じゃない、俺は医者を辞めた」
「オッサン、頭どうかしてるんちゃうの? まさかお笑いだけで食っていけるなんて思うてないやろうなあ?」
「食っていくのが目的じゃない。俺はある人を笑わせたいだけだ」
「アンタ、お笑いを舐めてんの?」
「お笑いは物じゃない、舐められるわけがねえだろう」
「この野郎、俺が偏差値32のバカ高の出身だからって舐めんじゃねえぞ、コラッ!」
すると面接官とそこにいた生徒たちが笑った。
「君たちコンビを組んだらどう? 中々いいよ、そのボケとツッコミ。
ふたりとも合格です。あっ、先に言っちゃった。あはははは」
入学金115,000円、年間授業料330,000円。
それから施設使用料として55,000円を支払った。
すべて前払いである。
面接の時に一緒だった、大阪から東京に出て来た末永誠二とすぐに友だちになり、入学式が終わってふたりで焼鳥屋へ飲みに出掛けた。
「驚いたよ、あんなにお笑い志望の人間がいるなんて。
東京と大阪で2,000人もいるそうじゃないか? 教室に入り切れんのかなあ?」
「山ちゃんは何も知らんのやなあ。1ヶ月後には半分になるんやで」
「半分に?」
「養成所に絶望してみんな辞めてまうんよ。天才もゴロゴロおるしな? 自分の才能を思い知らされるちゅうわけや」
そう言って誠二は生ビールを一気に飲んだ。
「いい商売だな? 2,000人から50万ずつ、辞めてもカネは返さない。流石は浪速の商人だ。
年間10億のカネが入るというわけかあ?」
「なあ山ちゃん、ホンマに俺とコンビを組んでくれへんか?」
「コンビかあ? 最初はピンでやるつもりだったがそれもいいかもな?
よろしくな? 誠二」
その夜から俺たちはコンビになった。
ボケは俺でツッコミは誠二になった。
「コンビ名はどないする?」
「そうだなあ、食べ物がいいかもな? 最初は馴染めないが、食べているウチにやみつきになるような・・・。
チョコミント・アイスクリームってのはどうだ?」
「チョコミント・アイスクリームかあ? ちょっと長くないやろか? 舌を噛んでしまいそうやないか?」
「チョコミントは普通アイスだろう? 誠二がチョコで俺がミント。
大阪人のお前と東京人の俺、チョコミントだけじゃ差別化にはならん。
それにチョコプラみたいだろ? いずれにせよどうせ短縮されるよ、『チョコミン』みたいに」
「それじゃあ「チョコザット」やないかい!」
「あはははは」
俺たちはいいコンビになりそうだった。
「今夜、待ってるから」
「肉を買って行くからすき焼きな?」
「うんわかった」
私は肉を買い、葵のマンションを訪れた。
満面の笑顔で俺に抱きつく葵。
「耕ちゃん、卒業おめでとう!」
「もう知っているのか? 今月いっぱいで病院を辞めることにした」
「そっちじゃなくて奥さんとお別れするんでしょ?
もうすでにさよならしちゃったりして?」
「腹減った。すき焼きにするぞ」
「うん! 準備しておいたよ」
俺たちはすき焼きを食べながらビールを飲んだ。
「ねえねえ、これで私を「山本葵」にしてくれるんだよね?」
俺は肉を卵につけながらそれを頬張った。
「夕べ、女房に離婚届を渡そうとしたら拒否された」
「何それ? 自分だって浮気してるくせに」
「それは俺も同じだ」
「酷い! 私はただのセフレなの? 本気じゃなくて浮気なの?」
葵は涙ぐんでいた。
「そうじゃない、俺は葵も好きだ」
「葵「も」って何よ!」
「ごめん、お前とはもう今日でお別れだ。終わりにしよう」
すると葵は箸を放り投げ、ビール瓶を持つと残っていたビールを俺の頭にゆっくりと注いだ。
俺の頭を伝い、ビールが床に敷かれた絨毯に流れ落ちて行った。
「あなた、少し頭を冷やした方がいいわよ」
俺はビールがなくなるまでじっと我慢していた。
「相手は誰なの?」
「患者だ。酷いうつ病の」
「うつ病だから何! 私はもうそんなのとっくに通り越してるわよ!
誰のせい? あなたのせいでしょう!」
今度は髪の毛を鷲掴みにされた。
精神障害のない人間などいない。それは俺も同じだった。
俺は葵を平手打ちした。
「何をするの!」
「俺はお前を愛してる、脱げ、オペをしてやる」
葵はうっとりとした目で着ていた服を脱ぎ捨て、全裸になった。
「抱いて」
俺たちは激しくキスをしてその場で行為に及んだ。
ダイニングテーブルに手をつかせ、葵をバックから攻めた。
「は は は・・・」
「耕三、べ、ベッドで抱いて・・・」
獣のようになって俺は葵を犯し続けた。
「好きよ好きなの! あなた、が、大好き!」
「今日から俺はお前とここで一緒に暮らす、いいな?」
「よろこんで!」
俺は自分勝手にクライマックスを迎え、葵の顔に精子を浴びせた。
葵は口の周りに飛んだザーメンを舐めた。
「セフレはイヤ、あなたの一番になりたいの」
「バカな女だ」
俺はその日から葵と同棲することにした。
養成所への合格が決まった。
受験資格は18才以上の高卒ということだった。
中卒ではついていけないほどのカリキュラムなのだろうか?
試験は1次が書類審査で、2次が集団面接だった。
「ほう? 山本耕三さんは精神科の医師なんですか?
初めてですよ、そんな人がお笑いをやりたいだなんて、実に愉快」
面接会場に羨望の声があがった。
「お笑いと医者の二刀流やなんて? 大谷じゃあるまいし、何考えてんの?」
「いや、二刀流じゃない、俺は医者を辞めた」
「オッサン、頭どうかしてるんちゃうの? まさかお笑いだけで食っていけるなんて思うてないやろうなあ?」
「食っていくのが目的じゃない。俺はある人を笑わせたいだけだ」
「アンタ、お笑いを舐めてんの?」
「お笑いは物じゃない、舐められるわけがねえだろう」
「この野郎、俺が偏差値32のバカ高の出身だからって舐めんじゃねえぞ、コラッ!」
すると面接官とそこにいた生徒たちが笑った。
「君たちコンビを組んだらどう? 中々いいよ、そのボケとツッコミ。
ふたりとも合格です。あっ、先に言っちゃった。あはははは」
入学金115,000円、年間授業料330,000円。
それから施設使用料として55,000円を支払った。
すべて前払いである。
面接の時に一緒だった、大阪から東京に出て来た末永誠二とすぐに友だちになり、入学式が終わってふたりで焼鳥屋へ飲みに出掛けた。
「驚いたよ、あんなにお笑い志望の人間がいるなんて。
東京と大阪で2,000人もいるそうじゃないか? 教室に入り切れんのかなあ?」
「山ちゃんは何も知らんのやなあ。1ヶ月後には半分になるんやで」
「半分に?」
「養成所に絶望してみんな辞めてまうんよ。天才もゴロゴロおるしな? 自分の才能を思い知らされるちゅうわけや」
そう言って誠二は生ビールを一気に飲んだ。
「いい商売だな? 2,000人から50万ずつ、辞めてもカネは返さない。流石は浪速の商人だ。
年間10億のカネが入るというわけかあ?」
「なあ山ちゃん、ホンマに俺とコンビを組んでくれへんか?」
「コンビかあ? 最初はピンでやるつもりだったがそれもいいかもな?
よろしくな? 誠二」
その夜から俺たちはコンビになった。
ボケは俺でツッコミは誠二になった。
「コンビ名はどないする?」
「そうだなあ、食べ物がいいかもな? 最初は馴染めないが、食べているウチにやみつきになるような・・・。
チョコミント・アイスクリームってのはどうだ?」
「チョコミント・アイスクリームかあ? ちょっと長くないやろか? 舌を噛んでしまいそうやないか?」
「チョコミントは普通アイスだろう? 誠二がチョコで俺がミント。
大阪人のお前と東京人の俺、チョコミントだけじゃ差別化にはならん。
それにチョコプラみたいだろ? いずれにせよどうせ短縮されるよ、『チョコミン』みたいに」
「それじゃあ「チョコザット」やないかい!」
「あはははは」
俺たちはいいコンビになりそうだった。
10
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
★【完結】ダブルファミリー(作品230717)
菊池昭仁
恋愛
結婚とはなんだろう?
生涯1人の女を愛し、ひとつの家族を大切にすることが人間としてのあるべき姿なのだろうか?
手を差し伸べてはいけないのか? 好きになっては、愛してはいけないのか?
結婚と恋愛。恋愛と形骸化した生活。
結婚している者が配偶者以外の人間を愛することを「倫理に非ず」不倫という。
男女の恋愛の意義とは?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ルピナス
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。
そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。
物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。
※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。
※1日3話ずつ更新する予定です。
★【完結】恋ほど切ない恋はない(作品241118)
菊池昭仁
現代文学
熟年離婚をした唐沢は、40年ぶりに中学のクラス会に誘われる。
そこで元マドンナ、後藤祥子と再会し、「大人の恋」をやり直すことになる。
人は幾つになっても恋をしていたいものである。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる