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第13話
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運は幼稚園に行くのが楽しいようだった。
瑠璃子は毎朝5時に起きて、運の幼稚園弁当を楽しみながら作っていた。
料理上手な瑠璃子の作る弁当は、かなり手の込んだ弁当だった。
そして私も役所の食堂から弁当に変わった。
1つ作るのも2つ作るのも同じだからと、私の分まで作ってくれるようになったからだ。
新婚当初は愛妻弁当で、役所の同僚たちからも冷やかされたものだったが、自分に子供を作ることができないと告げられた日、私は妻に言った。
「もう弁当は作らなくていいよ」
それ以来、私は役所に弁当を持って行くことは無かった。
私は妻から逃げていたのかもしれない。
そしてまた、妻の愛妻弁当が復活した。
これも運のおかげだった。
私たちは再び夫婦の愛を取り戻すことが出来たのだった。
「はい、これはあなたのお弁当」
「いつもありがとう。
どうだろう? そろそろ運をディズニーランドにデビューさせては?」
すると、瑠璃子の表情がパッと明るくなった。
「私も同じことを考えていたの!
ミッキーたちと写真も残してあげたいし、あの魔法の国を運に見せてあげたい!」
「それじゃあ今度の週末、ディズニーのホテルを予約しておいてくれないか?
エレクトリカルパレードも見せてあげたいしね?」
「まかせてちょうだい!
私たちならシーの方がいいけど、運にはランドの方がいいしね?
楽しみだなあ、運には何を着させて行こうかしら?
私は何がいいかしら? 運を追いかけなきゃならないし、やはりパンツルックかしらね?」
やはり、まだ瑠璃子には私に対して遠慮があったのだろう、私のディズニー行きの提案に、妻は大喜びだった。
週末ということもあり、ディズニーランドはかなり混雑していた。
「すごい人ね?」
「給料日後の土曜日だからね?」
「ほらほらあなた! あそこにドナルドがいるわ!
早く一緒に写真を撮りましょうよ!」
私たち親子はドナルドがみんなに囲まれているところへ走った。
「あなた早く早く、こっちこっち!」
すると、運と瑠璃子に気付いたドナルドが、一緒にポーズを取ってくれた。
「よし、撮るぞー。ハイ、ポーズ」
少しはにかむ運と満面の笑みを見せる瑠璃子。
写真を撮り終えると、ドナルドは息子の頭をポンポンと軽く叩き、私たちに手を振るとまた別の女子高校生たちとの写真撮影に応じていた。
「よかったわね運? ドナルドに会えて?」
「ママ、ドナルドはお尻がかわいいね?」
「そうね? かわいいお尻だったわね?」
それから私たちはジャングルクルーズやピーターパン、イッツ・ア・スモールワールドのアトラクションを巡り、
初めて見る世界に運は驚き、喜び、そして戸惑っていた。
エレクトリカルパレードまで、ホテルで少し休憩することにした。
私たちはホテルのレストランで少し早い夕食を摂った。
初めてのディズニーは、まだ子供の体力では限界があったからだ。
夕暮れ近くにディズニーへ戻ると、すでに場所取りが行われていた。
「あなた! あそこが空いているわ!」
私たちはやっと場所取りに成功した。
場内アナウンスと共に、パレードが始まった。
美しい電飾、音楽とキャラクターたちの陽気な振る舞いと、それを盛り上げるダンサーたち。
私は運を肩車して、より良くミッキーたちが見えるようにしてやった。
運は目を丸くしてそれを見ていた。
そしてその光景を必死にカメラに収めようとする瑠璃子。
フィナーレには花火が打ち上げられた。
ホテルに戻り、私は運と一緒に風呂に浸かった。
「運、また来ような?」
「うん、お父さん、また来ようね? 家族でね?」
私は運の「家族」という言葉に目頭が熱くなり、それを隠すように風呂の湯で顔を洗った。
そうだ、私たちは家族なのだと。
風呂から上がり、リンゴジュースを飲むのが運の毎日のルーティーンだった。
そして歯を磨き、瑠璃子に本を読んでもらって日記をつけて眠る。
運はすでに読み書きが出来るようになっていた。
「もう寝ちゃったわ」
「余程疲れたんだろうな?
君もゆっくり風呂に浸かって来るといい」
「じゃあそうするね?」
瑠璃子は下着姿になり、パウダールームへと消えた。
私は冷蔵庫からビールを取り出し、深夜のニュース番組を観ていた。
髪を乾かす妻のドライヤーの音が聞こえて来た。
バスローブに身を包んだ瑠璃子が出て来た。
「私もいただこうかしら?」
彼女は冷蔵庫からビールを取り出し、私の隣に座るとグラスにビールを注ぎ、美味しそうにそれを飲んだ。
「ああ、おいしーい」
そして瑠璃子は私の頬にキスをした。
「あなた、今日はどうもありがとう。
私、子供とディズニーランドに来ることがずっと夢だったの。
いい思い出がたくさん出来たわ。
運もすごく楽しそうだった」
運はみやげに買ってやったドナルドを抱いて眠っていた。
「そろそろ俺のことを瑠璃子も「お父さん」と呼んでくれないか?」
「えっ?」
瑠璃子のビールを飲む手が止まった。
「君のことを俺が「お母さん」と呼んでいるのに、君が俺を「あなた」と呼ぶのもおかしいだろう?
その方が自然だし」
瑠璃子が私をそう呼ぶことに抵抗があることは分かっていた。
だからこそ、あえて私からそれを提案したのだ。
「わかったわ、・・・お父さん。
なんだか照れちゃう」
そして瑠璃子はバスローブを脱ぎ捨て、私をベッドへ誘った。
「お父さん、私たちも一緒に寝ましょう」
私と瑠璃子はもうひとつのベッドに入った。
「また来ような? 家族で?」
「うん」
やがてベッドが軋み始め、そして瑠璃子はその行為の最中、何度も私を「お父さん」と呼んだ。
瑠璃子は毎朝5時に起きて、運の幼稚園弁当を楽しみながら作っていた。
料理上手な瑠璃子の作る弁当は、かなり手の込んだ弁当だった。
そして私も役所の食堂から弁当に変わった。
1つ作るのも2つ作るのも同じだからと、私の分まで作ってくれるようになったからだ。
新婚当初は愛妻弁当で、役所の同僚たちからも冷やかされたものだったが、自分に子供を作ることができないと告げられた日、私は妻に言った。
「もう弁当は作らなくていいよ」
それ以来、私は役所に弁当を持って行くことは無かった。
私は妻から逃げていたのかもしれない。
そしてまた、妻の愛妻弁当が復活した。
これも運のおかげだった。
私たちは再び夫婦の愛を取り戻すことが出来たのだった。
「はい、これはあなたのお弁当」
「いつもありがとう。
どうだろう? そろそろ運をディズニーランドにデビューさせては?」
すると、瑠璃子の表情がパッと明るくなった。
「私も同じことを考えていたの!
ミッキーたちと写真も残してあげたいし、あの魔法の国を運に見せてあげたい!」
「それじゃあ今度の週末、ディズニーのホテルを予約しておいてくれないか?
エレクトリカルパレードも見せてあげたいしね?」
「まかせてちょうだい!
私たちならシーの方がいいけど、運にはランドの方がいいしね?
楽しみだなあ、運には何を着させて行こうかしら?
私は何がいいかしら? 運を追いかけなきゃならないし、やはりパンツルックかしらね?」
やはり、まだ瑠璃子には私に対して遠慮があったのだろう、私のディズニー行きの提案に、妻は大喜びだった。
週末ということもあり、ディズニーランドはかなり混雑していた。
「すごい人ね?」
「給料日後の土曜日だからね?」
「ほらほらあなた! あそこにドナルドがいるわ!
早く一緒に写真を撮りましょうよ!」
私たち親子はドナルドがみんなに囲まれているところへ走った。
「あなた早く早く、こっちこっち!」
すると、運と瑠璃子に気付いたドナルドが、一緒にポーズを取ってくれた。
「よし、撮るぞー。ハイ、ポーズ」
少しはにかむ運と満面の笑みを見せる瑠璃子。
写真を撮り終えると、ドナルドは息子の頭をポンポンと軽く叩き、私たちに手を振るとまた別の女子高校生たちとの写真撮影に応じていた。
「よかったわね運? ドナルドに会えて?」
「ママ、ドナルドはお尻がかわいいね?」
「そうね? かわいいお尻だったわね?」
それから私たちはジャングルクルーズやピーターパン、イッツ・ア・スモールワールドのアトラクションを巡り、
初めて見る世界に運は驚き、喜び、そして戸惑っていた。
エレクトリカルパレードまで、ホテルで少し休憩することにした。
私たちはホテルのレストランで少し早い夕食を摂った。
初めてのディズニーは、まだ子供の体力では限界があったからだ。
夕暮れ近くにディズニーへ戻ると、すでに場所取りが行われていた。
「あなた! あそこが空いているわ!」
私たちはやっと場所取りに成功した。
場内アナウンスと共に、パレードが始まった。
美しい電飾、音楽とキャラクターたちの陽気な振る舞いと、それを盛り上げるダンサーたち。
私は運を肩車して、より良くミッキーたちが見えるようにしてやった。
運は目を丸くしてそれを見ていた。
そしてその光景を必死にカメラに収めようとする瑠璃子。
フィナーレには花火が打ち上げられた。
ホテルに戻り、私は運と一緒に風呂に浸かった。
「運、また来ような?」
「うん、お父さん、また来ようね? 家族でね?」
私は運の「家族」という言葉に目頭が熱くなり、それを隠すように風呂の湯で顔を洗った。
そうだ、私たちは家族なのだと。
風呂から上がり、リンゴジュースを飲むのが運の毎日のルーティーンだった。
そして歯を磨き、瑠璃子に本を読んでもらって日記をつけて眠る。
運はすでに読み書きが出来るようになっていた。
「もう寝ちゃったわ」
「余程疲れたんだろうな?
君もゆっくり風呂に浸かって来るといい」
「じゃあそうするね?」
瑠璃子は下着姿になり、パウダールームへと消えた。
私は冷蔵庫からビールを取り出し、深夜のニュース番組を観ていた。
髪を乾かす妻のドライヤーの音が聞こえて来た。
バスローブに身を包んだ瑠璃子が出て来た。
「私もいただこうかしら?」
彼女は冷蔵庫からビールを取り出し、私の隣に座るとグラスにビールを注ぎ、美味しそうにそれを飲んだ。
「ああ、おいしーい」
そして瑠璃子は私の頬にキスをした。
「あなた、今日はどうもありがとう。
私、子供とディズニーランドに来ることがずっと夢だったの。
いい思い出がたくさん出来たわ。
運もすごく楽しそうだった」
運はみやげに買ってやったドナルドを抱いて眠っていた。
「そろそろ俺のことを瑠璃子も「お父さん」と呼んでくれないか?」
「えっ?」
瑠璃子のビールを飲む手が止まった。
「君のことを俺が「お母さん」と呼んでいるのに、君が俺を「あなた」と呼ぶのもおかしいだろう?
その方が自然だし」
瑠璃子が私をそう呼ぶことに抵抗があることは分かっていた。
だからこそ、あえて私からそれを提案したのだ。
「わかったわ、・・・お父さん。
なんだか照れちゃう」
そして瑠璃子はバスローブを脱ぎ捨て、私をベッドへ誘った。
「お父さん、私たちも一緒に寝ましょう」
私と瑠璃子はもうひとつのベッドに入った。
「また来ような? 家族で?」
「うん」
やがてベッドが軋み始め、そして瑠璃子はその行為の最中、何度も私を「お父さん」と呼んだ。
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