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第5話 「ここから生きて帰すなピョン!」

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 「ねえねえ、オジサマたちはどうやって月にやって来たのー?」
 「帆船日本丸でここまで来たんや」
 「ホンマに? それはすごいわー。私、惚れてまうやないのー! よう知らんけど」

 「ダダちゃんも関西弁なの? 宇宙人はみんな関西弁なのか?」
 「大阪人って、宇宙人みたいやろ? 誰にでも馴れ馴れしいし、陽気やし。
 なあジャックはん?」。 「そやで。女の子がトイレから戻ってくると「ウンコしてたん?」とか聞くよってな?
 それからすぐに銭の話をする。
 「あんたの家、家賃いくら?」「給料ナンボもろうてんの?」とかゆうてな?
 裏表のない、あのフレンドリーな地球人関係が好っきやねん。
 大阪は商人の街やさかいな? 明るい話と銭が大好きなんや!
 しかしダダちゃん、あんたホンマにベッピンさんやなあ。
 どや? あっちでワシとやりまへんか?」
 「まあ、ジャックはんったら気が早いんやからもうー。
 ホンマに大阪の男は手が早いなあ?」
 「ちゃうちゃう、ワシは大阪人やのうて「うる星人」やて」
 「そやった。それはえらいすんまへんでしたなあ。 あはははは」

 それはまるで、吉本の夫婦めおと漫才を見ているようだった。


 「さあみなさーん。ジャンジャン飲んでねー。
 ここの竜宮城は1時間40ルナで飲み放題なのよ!
 私たちもドリンク、いただいてもいいかしら?」
 「いいよ」
 「もちろん、どうぞ」
 「流石は海の、いえ宇宙の男ね? 気前がいい人って大好き!
 すみませーん! ピンドン(ピンクラベルのドン・ペリニヨン)8本お願いしまーす!
 マグナムボトルでねー!」
 「懐かしいなあー。歌舞伎町とか上野のぼったくりBARを」
 「あの時はビールの小瓶1本で、ひとり20万円だなんて言われてなあ」
 「でもあの時は菊池がワルサーを持っていて助かったよ」
 「どうも習慣になっちまってな? よく先輩から「外地でひとりで飲みに行けるようになったら船乗りとして一人前だ」とか言われていたからな? 護身用だよ」
 「語学はもちろん、女を口説いて、やばくなったらやるしかねえもんな?」
 「でもあん時は、あっちもトカレフなんか出して来たからビビったぜ」
 「そうそう、逃げるが勝ちだからな?」
 「いやあ、走った走った。
 まさか本気で撃ってくるなんて思わねえからさ。
 弾が当たって死んだらどうすんだよ、まったく。
 俺のはモデルガンだったし」
 「菊池らしいよ、ホント」
 「八緒ママ、月に来て何年になるの?」
 「今年で3年かしら?
 ザギンでチイママしてたんだけどね? こっちの方が稼げるからって誘われて。雇われママだけどね?
 それにそろそろ地球もアレだしね?」
 「アレって何だ?」
 「お客さんたち、アレだから月に逃げて来たんじゃなかったの?
 核戦争」
 「ジャックが言っていた通りなのか?」
 「だから言ったやおまへんか? 地球はあと6年で終わりやて。
 信じておらんかったんかいな? 宇宙人がせっかく教えてやったんに」
 「核戦争? 今の世界情勢を見ていると、それも十分ありうる話だな?」
 「あのチャイナウイルスのせいで、世界は大混乱になったからな?」
 「飲みにはいけない、風俗もダメ。
 それなのにあのボンクラ政治家たちは自分の支持率ばかりを気にして知らんぷりだ」
 「テレビも見たくないよな?
 報道番組はいつもチャイナウイルスの話ばかりで、もううんざりだったよ。
 そして今度はウクライナとロシアの戦争に狂気の国、中国と北朝鮮もやりたい放題だしな?」
 「マスコミはゴミだ。
 政府に都合のいいことしか言わねえ」

 その時、八緒ママが口に指を立てて言った。

 「しっ! 誰が聴いているかわからないわよ。
 この話はそこまで。
 さあ楽しく飲みましょう! 皆さんにお酒をお注ぎして」
 「はーい! どうぞ!」

 俺たちは綺麗なキャバ嬢たちと酒を酌み交わした。

 だが、それをじっと聞き耳を立てて聞いていた、月の秘密警察がいた。
 ひときわ大きな耳を持つデビット・ボウイならぬ、ラビット・ボーイだった。


 「ふむふむ。これは大変だぴょん。
 すぐにCIAとKGBとモサドとMI6に報告しないとぴょん。
 よし、すぐにLINEしなくちゃぴょんぴょん。
 「志賀総理や三階幹事長、大池都知事の悪口を言っている地球人を発見しました」っと。
 おっ、すぐに返事が来たぞぴょん。
 何々、


      「殺せ」


 たったのふた文字かぴょん?
 しょうがないぴょん、上司の命令だもんぴょん。
 ごめんねー、地球人さん。
 「全員配置につけ、あの地球人たちをここから生きて帰すなぴょん」っと。
 よし、みんなに一斉送信しちゃったもんね~ぴょん」 


 果たして大丈夫なのか? ジャックと7人の還暦オヤジたちはこのピンチを乗り切ることが出来るのだろうか?

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