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第9話 満月のプロポーズ
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「明日、たまに豪華なイタリアンはどうだい?」
「うんうん、行く行く。
どうしたの急に?」
瞳はすでにその場がプロポーズの場だと期待している様子だった。
(やっとこの日が来たのね!)と。
「ちょっと特別な日にしたいと思ってさ」
「なんだかドキドキするんですけど」
「じゃあ明日、19時に宇都宮駅のスタバで待ってるから。
食事は新宿でしようよ」
「えー、新幹線で東京に!」
「そうだよ、「特別な日」だからね?」
「だったら今日のうちに美容室に行くんだったー」
「いいよ、瞳はいつも綺麗だからそのままで」
「じゃあ、お気に入りのランジェリーで行くからね? 壮一の好きなパステルブルーのやつで」
「楽しみにしているよ、気を付けて来るんだよ」
「うん、壮一もね!」
私は電話を切ると、マイケルと猫じゃらしで遊んだ。
「ほらほら、マイケルー、大好きな猫じゃらしだぞー」
「止めろよ壮一、そんなことしたって俺は・・・」
そういいながらもマイケルは右前足で、猫じゃらしをパンチしてしまうのだった。
「や、やめろよ壮一、やめろってば!」
「ホレホレ、マイケル、ほーら、ほらほらあー」
遂にマイケルは我慢出来ず、前足で猫じゃらしを追いかけ始めた。
「ほれ! はら! それ! もういっちょーっ! もっとか? マイケル?」
「はれ! おろ! それ! どした!」
やはりマイケルは猫である。猫の習性には勝てないようだ。
私とマイケルの猫じゃらし遊びは深夜まで続いた。
翌日、私と瞳は新幹線で東京へと向かった。
東京駅から中央線に乗り換え、有名人も御用達の、新宿のイタリアンレストランで食事をしていた。
「すごーい! この前テレビのバラエティ番組でデヴィ夫人が食べてたお店じゃない!
良く予約が取れたわね? 半年待ちとか言っていたけど」
「知り合いにテレビのディレクターがいてね? その人のコネを使わせてもらったんだ」
「こんな素敵なお店でお食事だなんて夢みたい! ありがとう、壮一」
「今日は特別な日だからね?」
「ワクワクしちゃう。なあに? 特別な日って?」
「後のお楽しみだよ」
瞳のうれしそうな顔。結婚することはお互いの暗黙の了解ではあったが、正式なプロポーズはしてはいなかった。
誠実で、一生心に残るセレモニーにしたかった。
「あんまりドキドキさせないでよ、もう、壮一の意地悪う」
瞳は美味しそうにプリモ・ピアットの手長エビとキャビアのパスタを食べながら、シャンパンを口にした。
瞳のイヤリングがキラリと揺れた。
優雅に食事をする瞳の姿に私は見惚れた。
食事も終わり、ドルチェにオレンジソースの掛けられた、フォンダンショコラとエスプレッソとなり、いよいよかと瞳は期待しているようだったが、レストランでは何事もなく、瞳は多少がっかりしている様子だった。
少し不機嫌そうに歩く瞳。
「ヒールだから疲れちゃったよ、どっかで休もうよー」
新宿アルタの前に出ると、私は時計を確認した。
22:00 ジャスト。
その時、アルタのオーロラビジョンに私の顔が映し出された。
「瞳、僕は君に出会えて本当にしあわせです」
その私の声に驚いて、オーロラビジョンを見上げる瞳。
「これからも苦労を掛けることもあると思いますが、僕の支えになって下さい。
瞳、僕と結婚して下さい」
湧き上がる周囲のどよめきと喝采。
私は瞳に跪き、用意していた指輪ケースを開けた。
「僕と結婚して下さい」
「壮一のバカ、似合わないぞ、こんなサプライズ・・・。
こんな私でよければ、お嫁さんに貰って下さい、お願いします!」
瞳は左手を私に差し出し、私はその薬指に婚約指輪をはめた。
再び沸き起こる大歓声と割れんばかりの拍手、瞳も大粒の涙を零し、傍にいた女性たちも涙を拭って拍手をしてくれた。
「初めて見た、こんなプロポーズ」
私は瞳を抱き締め、誰に憚ることなく、私たちは口づけを交わした。
いつまでもオーディエンスの拍手と歓声は鳴り止まなかった。
新宿三丁目の夜空に、大きな満月が浮かんでいた。
「うんうん、行く行く。
どうしたの急に?」
瞳はすでにその場がプロポーズの場だと期待している様子だった。
(やっとこの日が来たのね!)と。
「ちょっと特別な日にしたいと思ってさ」
「なんだかドキドキするんですけど」
「じゃあ明日、19時に宇都宮駅のスタバで待ってるから。
食事は新宿でしようよ」
「えー、新幹線で東京に!」
「そうだよ、「特別な日」だからね?」
「だったら今日のうちに美容室に行くんだったー」
「いいよ、瞳はいつも綺麗だからそのままで」
「じゃあ、お気に入りのランジェリーで行くからね? 壮一の好きなパステルブルーのやつで」
「楽しみにしているよ、気を付けて来るんだよ」
「うん、壮一もね!」
私は電話を切ると、マイケルと猫じゃらしで遊んだ。
「ほらほら、マイケルー、大好きな猫じゃらしだぞー」
「止めろよ壮一、そんなことしたって俺は・・・」
そういいながらもマイケルは右前足で、猫じゃらしをパンチしてしまうのだった。
「や、やめろよ壮一、やめろってば!」
「ホレホレ、マイケル、ほーら、ほらほらあー」
遂にマイケルは我慢出来ず、前足で猫じゃらしを追いかけ始めた。
「ほれ! はら! それ! もういっちょーっ! もっとか? マイケル?」
「はれ! おろ! それ! どした!」
やはりマイケルは猫である。猫の習性には勝てないようだ。
私とマイケルの猫じゃらし遊びは深夜まで続いた。
翌日、私と瞳は新幹線で東京へと向かった。
東京駅から中央線に乗り換え、有名人も御用達の、新宿のイタリアンレストランで食事をしていた。
「すごーい! この前テレビのバラエティ番組でデヴィ夫人が食べてたお店じゃない!
良く予約が取れたわね? 半年待ちとか言っていたけど」
「知り合いにテレビのディレクターがいてね? その人のコネを使わせてもらったんだ」
「こんな素敵なお店でお食事だなんて夢みたい! ありがとう、壮一」
「今日は特別な日だからね?」
「ワクワクしちゃう。なあに? 特別な日って?」
「後のお楽しみだよ」
瞳のうれしそうな顔。結婚することはお互いの暗黙の了解ではあったが、正式なプロポーズはしてはいなかった。
誠実で、一生心に残るセレモニーにしたかった。
「あんまりドキドキさせないでよ、もう、壮一の意地悪う」
瞳は美味しそうにプリモ・ピアットの手長エビとキャビアのパスタを食べながら、シャンパンを口にした。
瞳のイヤリングがキラリと揺れた。
優雅に食事をする瞳の姿に私は見惚れた。
食事も終わり、ドルチェにオレンジソースの掛けられた、フォンダンショコラとエスプレッソとなり、いよいよかと瞳は期待しているようだったが、レストランでは何事もなく、瞳は多少がっかりしている様子だった。
少し不機嫌そうに歩く瞳。
「ヒールだから疲れちゃったよ、どっかで休もうよー」
新宿アルタの前に出ると、私は時計を確認した。
22:00 ジャスト。
その時、アルタのオーロラビジョンに私の顔が映し出された。
「瞳、僕は君に出会えて本当にしあわせです」
その私の声に驚いて、オーロラビジョンを見上げる瞳。
「これからも苦労を掛けることもあると思いますが、僕の支えになって下さい。
瞳、僕と結婚して下さい」
湧き上がる周囲のどよめきと喝采。
私は瞳に跪き、用意していた指輪ケースを開けた。
「僕と結婚して下さい」
「壮一のバカ、似合わないぞ、こんなサプライズ・・・。
こんな私でよければ、お嫁さんに貰って下さい、お願いします!」
瞳は左手を私に差し出し、私はその薬指に婚約指輪をはめた。
再び沸き起こる大歓声と割れんばかりの拍手、瞳も大粒の涙を零し、傍にいた女性たちも涙を拭って拍手をしてくれた。
「初めて見た、こんなプロポーズ」
私は瞳を抱き締め、誰に憚ることなく、私たちは口づけを交わした。
いつまでもオーディエンスの拍手と歓声は鳴り止まなかった。
新宿三丁目の夜空に、大きな満月が浮かんでいた。
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