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第8話 婚約指輪
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「マイケル、俺、瞳と結婚することにしたんだ」
「良かったじゃないか壮一! そうなれば毎日瞳ちゃんの膝の上に乗ってナデナデしてもらえるし、瞳ちゃんのオッパイに抱かれて眠れるもんね? おまけに大好きな猫じゃらしもしてもらえる」
「猫じゃらしなら俺もしてあげてるじゃないか?」
「どうせなら壮一よりも、瞳ちゃんの方がいいよ。だってボク、イケメン・オス猫だから。
ああ、早く瞳ちゃんの膝で甘えたいなあ」
「じゃあ、これはどうだ? 必殺、喉コチョコチョ攻撃-ッ!」
「ああ、それそれ、それ気持ちいいよ~、壮一」
マイケルはウットリと目を閉じ、喉を鳴らした。
私は婚約指輪を買うために、銀行のお得意先でもある、『マダム麗子・ジュエリーショップ』にやって来た。
「あら三浦さん。社長に御用ですか?」
「いえ、ちょっと婚約指輪を見せていただきたいのですが?」
すると、奥からオーナーの麗子夫人が出て来た。
おそらく店内の様子をモニターカメラで見ていたのだろう。
「三浦さん、こんにちは! 今日はどうしたの? 彼女さんへのプレゼント?」
「婚約指輪をお探しだそうです」
「あら! とうとうイケメン銀行員の三浦さんもご結婚? 残念だわ。うふふ」
「30万円くらいの予算で選んでいただけますか?」
「わかったわ。いつもお世話になっている三浦さんのためですもの、見栄えのする素敵な婚約指輪を選んであげるわね?」
「おねが・・・」
「どうかしたの? 私の頭の上なんか見て?」
「いえ、何でもありません。よろしくお願いします」
「任せて頂戴。うーん、これなんかどうかしら?」
若い店員さんの命玉はライトグリーンのソフトボールくらいの大きさの球体に、「60」と書かれていたが、麗子夫人の命玉はオレンジ色のバランスボールくらいの大きさで、そこには「2」と書かれてあった。
麗子夫人は3年前に社長だったご主人を病気で亡くし、その後、この会社を引継いで、順調に業績を伸ばして来た人だった。
来年の春にはデパートへの出店も決まっていた。
それなのにどうして・・・。
ここへ来る途中もそうだった。
街を行く人たちの頭上には、各々色んな球体が浮かんでいて、すべての球体には数字が書かれてあった。
つまりそれは、
人はいつか必ず死ぬ
ということを意味していた。
子供も若者も老人も、男も女もすべて、誰一人の例外もなく、人は死を迎えるのだ。
麗子夫人はそれぞれタイプの違う3点をショーケースの中から選び出し、私の前にそれらを並べた。
「私の若い頃はダイヤモンドの縦爪が定番で、「お給料の三か月分」なんて時代だったけど、今は普段もつけることが出来る、比較的カジュアルでかわいい物が多いわね。
彼女さんのお気に入りの宝石とかあるの?」
「あるんでしょうけど、訊いたことはありません」
「そう、じゃあ無難にダイヤとプラチナがいいわね、となるとこのどちらかかしら?」
ひとつは¥280,000と値札が付けられていて、もう一つには¥350,000となっていた。
「こちらの方がいいとは思いますが、ちょっと予算オーバーですね~。
でも一生に一度の事だし、こちらにします。この指輪を下さい」
「いいわよ、30万円にしてあげるから。私からの婚約プレゼント」
「そうはいきません、御社は大切なお得意様ですから。
お気持ちだけ頂戴いたします」
「相変わらず真面目な人ね? 三浦さんは」
仕事柄、利益供与に該当するようなことは避けなければならない。銀行で出世するには成果を出すことはもちろんだが、有望な上司に付くこと、そして「落とし穴」には絶対に落ちないことだ。
些細なことが後々命取りになることもあるからだ。
「サイズは分かる?」
「はい、以前、彼女の誕生日プレゼントにルビーの指輪を一緒に選んだことがあるので覚えています」
私がそのサイズを告げると、
「あら、ちょうどこの指輪と同じだわ。これも運命かもね?」
私はそのキラキラと輝く美しいダイヤモンドの指輪を見詰め、喜ぶ瞳の顔を想像した。
「良かったじゃないか壮一! そうなれば毎日瞳ちゃんの膝の上に乗ってナデナデしてもらえるし、瞳ちゃんのオッパイに抱かれて眠れるもんね? おまけに大好きな猫じゃらしもしてもらえる」
「猫じゃらしなら俺もしてあげてるじゃないか?」
「どうせなら壮一よりも、瞳ちゃんの方がいいよ。だってボク、イケメン・オス猫だから。
ああ、早く瞳ちゃんの膝で甘えたいなあ」
「じゃあ、これはどうだ? 必殺、喉コチョコチョ攻撃-ッ!」
「ああ、それそれ、それ気持ちいいよ~、壮一」
マイケルはウットリと目を閉じ、喉を鳴らした。
私は婚約指輪を買うために、銀行のお得意先でもある、『マダム麗子・ジュエリーショップ』にやって来た。
「あら三浦さん。社長に御用ですか?」
「いえ、ちょっと婚約指輪を見せていただきたいのですが?」
すると、奥からオーナーの麗子夫人が出て来た。
おそらく店内の様子をモニターカメラで見ていたのだろう。
「三浦さん、こんにちは! 今日はどうしたの? 彼女さんへのプレゼント?」
「婚約指輪をお探しだそうです」
「あら! とうとうイケメン銀行員の三浦さんもご結婚? 残念だわ。うふふ」
「30万円くらいの予算で選んでいただけますか?」
「わかったわ。いつもお世話になっている三浦さんのためですもの、見栄えのする素敵な婚約指輪を選んであげるわね?」
「おねが・・・」
「どうかしたの? 私の頭の上なんか見て?」
「いえ、何でもありません。よろしくお願いします」
「任せて頂戴。うーん、これなんかどうかしら?」
若い店員さんの命玉はライトグリーンのソフトボールくらいの大きさの球体に、「60」と書かれていたが、麗子夫人の命玉はオレンジ色のバランスボールくらいの大きさで、そこには「2」と書かれてあった。
麗子夫人は3年前に社長だったご主人を病気で亡くし、その後、この会社を引継いで、順調に業績を伸ばして来た人だった。
来年の春にはデパートへの出店も決まっていた。
それなのにどうして・・・。
ここへ来る途中もそうだった。
街を行く人たちの頭上には、各々色んな球体が浮かんでいて、すべての球体には数字が書かれてあった。
つまりそれは、
人はいつか必ず死ぬ
ということを意味していた。
子供も若者も老人も、男も女もすべて、誰一人の例外もなく、人は死を迎えるのだ。
麗子夫人はそれぞれタイプの違う3点をショーケースの中から選び出し、私の前にそれらを並べた。
「私の若い頃はダイヤモンドの縦爪が定番で、「お給料の三か月分」なんて時代だったけど、今は普段もつけることが出来る、比較的カジュアルでかわいい物が多いわね。
彼女さんのお気に入りの宝石とかあるの?」
「あるんでしょうけど、訊いたことはありません」
「そう、じゃあ無難にダイヤとプラチナがいいわね、となるとこのどちらかかしら?」
ひとつは¥280,000と値札が付けられていて、もう一つには¥350,000となっていた。
「こちらの方がいいとは思いますが、ちょっと予算オーバーですね~。
でも一生に一度の事だし、こちらにします。この指輪を下さい」
「いいわよ、30万円にしてあげるから。私からの婚約プレゼント」
「そうはいきません、御社は大切なお得意様ですから。
お気持ちだけ頂戴いたします」
「相変わらず真面目な人ね? 三浦さんは」
仕事柄、利益供与に該当するようなことは避けなければならない。銀行で出世するには成果を出すことはもちろんだが、有望な上司に付くこと、そして「落とし穴」には絶対に落ちないことだ。
些細なことが後々命取りになることもあるからだ。
「サイズは分かる?」
「はい、以前、彼女の誕生日プレゼントにルビーの指輪を一緒に選んだことがあるので覚えています」
私がそのサイズを告げると、
「あら、ちょうどこの指輪と同じだわ。これも運命かもね?」
私はそのキラキラと輝く美しいダイヤモンドの指輪を見詰め、喜ぶ瞳の顔を想像した。
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