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オルカを見た キチマット(カナダ)

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 フィヨルドがあるのはスカンジナビア半島だけではない。
 アラスカに近いカナダにもフィヨルドは存在する。
 僅か数百メートルの断崖絶壁の川幅、だが水深は数百メートルにも及ぶのである。
 おそらく氷河によって削られて出来たのだろう。
 切り立つ断崖が、レーダーの画像を鮮明にしていた。

 バルクキャリア(撒積み貨物船)でオーストラリアのグラッドストーンからアルミナ(アルミニウムの原料)を積載し、太平洋をほぼ斜めに縦断して、カナダのプリンスルパートからキチマット港へ川を遡った。
 パイロット(水先案内人)が乗船しているので、比較的気楽な航海だった。

 すると突然、目の前にオルカの群れがジャンプしている光景と遭遇した。
 それはまるでネイチャー映画を観ているかのようだった。
 帆船・日本丸では夜間、クジラの群れに囲まれ、潮を吹かれて強烈な悪臭があったのを覚えているが、オルカに遭遇したのは初めてだった。
 オルカはとても知能が高く狡猾で、「海のギャング」と呼ばれている。
 マグロ船のはえ縄にかかったマグロを、針のある頭は残して食べると聞いたことがある。
 グルメな哺乳類である。
 マグロとかを食べているんだから、マグロより美味しいのかな?
 北杜夫の『ドクトルマンボウ航海記』では、「マンボウの刺身はマグロのトロと伊勢海老を足して2で割ったような味」だと書かれていたので、「マンボウの刺身あり〼」の貼り紙のある居酒屋で、早速注文してみたら不味かった。
 オルカも同じかもしれないな?


 冬のキチマットは-28℃だった。
 イオンの関係なのか? 雪が南極の氷山のように青白かった。
 ダイヤモンドダストはもちろん、「サンピラー(太陽柱)」も見ることが出来た。
 私は初めて粉砂糖のように握れない雪にも触れた。


 なーんにもない街なのに、ケンタッキーフライドチキンのカーネルおじさんはちゃんと立っていた。
 40年も前の話である。
 街のスーパーで食材を買った時、レジで「cash or charge?」と訊かれた。
 今でこそ日本でも当たり前の話だが、その当時からカナダではカード払いが常識だった。
 日本はカナダから20年以上も遅れていたことになる。

 キチマットのショッピングセンターにタクシーで行く途中、大きなウエスタン調のファミレスでビールを飲んでいると、キャメロン・ディアスのような美女が現れ、いきなりストリップを始めたのには驚いた。


 現地スタッフに「釣りに行きたい」と言ったら、

 「銃がないと危険だ。グリズリーが出る」

 といわれ諦めた。
 キングサーモンもウジャウジャいるが、当時、イクラは捨てていた。
 それを日本の商社マンが見つけて、

 「捨てちゃうんなら、頂戴」
 「好きなだけもって行け」といわれ、大儲けしたそうな。


 そう言えば、乗船してきたパイロットが、ブリッジ(操舵室)にあったクロネコヤマトの段ボール箱を見つけて、

 「この箱は猫を運ぶ箱か?」

 と訊かれ、大笑いした。

 「もちろん!」

 私はドヤ顔でそう答えた。


 それから意外なことに、日本から持って来た「つぶつぶミカンジュース」をパイロットに差し出したらすごく感激された。

 「こんな素晴らしいオレンジジュースは初めてだ!」

 次回はこれを大量に仕入れてカナダで売り捌き、私は大金持ちになろうとした。
 まだあるのかな? はごろもフーズのあのジュース。


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