★エッセイ「センチメンタル・ジャーニー」

菊池昭仁

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アパルトヘイトの街 ダーバン(南アフリカ)

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 アフリカ最南端の喜望峰を回り、南アフリカ、ダーバンに入港した。
 南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)は有名だったので、興味があった。
 当時は人種差別がアメリカでも凄かったが、南アフリカは生活そのものが分離されていると聞いていた。
 それがどんなものかをこの目で確かめてみたかったのである。


 それは荷役作業にも如実に表れていた。
 晴れの日には白人の荷役監督が来て、雨の日には決まって黒人の荷役監督がやって来た。
 今は知らないが、街にあるベンチも白人用と黒人用とに分かれていたほどである。
 日本のテレビでは報道されない理不尽が、世界中には溢れている。
 考えてみて欲しい、この世界は白人のためにあるという現実を。
 インディアンもアボリジニもアジア人もアフリカ人もアラブ人も、すべて白人のパイオニア精神という美辞麗句の元に、圧倒的な軍事力で支配され、搾取されて来たことを。

 食料や資源、財産は略奪され、女はレイプされ、男は奴隷として死ぬまでこき使われた。
 それって開拓なの? 侵略じゃねえの?
 白人は侵略者、エイリアンだ。
 スティングの歌じゃないけどさ、「私はエイリアン、法律で守られたエイリアン」
 あれれ、なんだかロック歌手の「王様」みたいな直訳だけど、本当に日本は平和だ。
 だっていいところしかアホなテレビは放送しないもん。
 何が『イモトのイッテQ』だよ。ちゃんと世界の現実を伝えろよバカ。

 
 アフリカに来ると思う。ここにテレビやラジオ、Tシャツなどが果たして必要なのだろうかと。
 彼らは白人たちの、堕落した文化という名の麻薬を押し付けられているだけじゃないのだろうか?
 「貧困を救え」と彼らは言うが、そんな国にしたのは一体誰なのだろう。
 狩をして生活することはダメなのか?
 ダーバンはそんなことを考えさせられる街だった。

 だが、ダーバンの海の美しさは、私が世界の海で見た、一番幻想的な海だった。
 大海原がまるで湖のように静かになり、夕暮れ時の出港ではあったが、その海と空が、まるでオーストラリア・オパールのように七色が点在する海だった。
 あの海だけはもう一度見てみたいと思う。

 アパルトヘイトはもうゴメンだけどね。

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