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序章
第3話:幕上げ
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「ルイ様......男に二言は無しですよ。腹をくくってください。それと、ルイ様は当分元の世界には帰れないと思われます。少なくとも一年は。私の力では、現実世界への扉はご用意できませんので」
淡々と言い張るルエラだったが、まだルイは覚悟が決まらないようだった。
「........。え? 一年間も戻れないの? 嫌だなぁ.....。とりあえず、この世界の設定? そういうやつ、説明してくれよ。俺の神に愛された才能で三日経たずとも終わらせてやる」
無言でルイを見つめ続けるルエラ――
「はい。では、気を取り直してご説明致します――
ルイ様は、七つの大罪と呼ばれる悪魔をご存知でしょうか? 」
「あの大人気マンガのことか?もちろん知っているぞ。俺は、クラスで人気者になるために努力を惜しまなかったからな。世間で話題のことについては知り尽くしている。まあ、そんな事しなくても、俺はモテたがな」
得意げに話すルイだったが、ルエラは意気消沈したように固まったままだ。ルイのナルシストすぎる性格に愛想をつかしたのか、ルイの無知さに驚いたのかは定かではないが、ルエラは、深いため息をついて、
「いいえ、マンガの話ではありませんが、傲慢、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰、強欲。この七つの欲の悪魔達のことです。とりあえず、ルイ様にはこの七人の悪魔達を倒していただきたいのです。そして、その七人がそれぞれ持つ鍵を手に入れて、伝説の聖剣エクスカリバーが眠っているというアヴァロンゲートを開いてほしいのです」
相変わらず、淡々と言い張るルエラにルイはある意味で圧倒されてしまう。だが、ルイはルエラの話し方のことには目もくれず、
「........大体の話は理解したんだけど、待って、俺はそんな中二真っ盛りの学生がつくったような設定の中で生き抜かなきゃいけないわけ? 」
顎を左手で支えながら、けだるそうに質問するルイはリア充生活を満喫していた現実世界に一刻も早く戻りたいんだという心情を、物語っているようであった。
「中二設定などと、おっしゃらないでください。どうしても、エクスカリバーが必要なのですよ。お分かりいただけましたか? 」
「まあ、分かったけどさ、俺は何をすればいいわけ? さっきから、左手に力込めてるけど魔法が使えるわけでもないよね?」
そう、悪魔を倒してくれとルエラに頼まれてからというもの、この男一条瑠衣は、ずっと身体中のいたるところに力を入れ続けているが、特にこれといった変化は現れない。
「......その通りです。ルイ様は、魔法が使えません。この世界の住人ではありませんので。そのかわり、現実世界で発揮なされた類まれなる運動センスで、この世界では剣術や体術などで戦闘をしていただくことになると思われます。それと、共に戦ってくれる仲間を集めて」
最後を強調して話したのは、ルイだけでは立ち向かえない壁が現れた時、助けてくれる仲間を見つけろという、ルエラなりの優しさなのだと願おう。
「.....で、俺はどこに行けばいいの? 全然予想できないんだけど.......」
「ああ、それにつきましては、この国の王様だった方があなたにとっての最善の未来を本に記してくださいましたよ。王様の魔法は、『その者の最善の未来を見出す』という能力でしたので。ちなみに、私の魔法は『傷を癒す』能力。つまり『治癒』です」
と言うと、ルエラは持っていた短剣で自身の掌を傷つけた。――だが、ルエラの持つ魔法である『治癒』で、一瞬にして傷は無くなり、もとのルエラの美しく白い肌が戻る。アニメや、マンガでは魔法というものを散々見ていたルイもさすがに目の前で見せつけられると目を見張る。
「おお......治った....。何か、光ってたし。それはそうと、王様だったってことは、今はいないの?」
「.........。はい。ルイ様の未来を見出した四日後に――ルイ様が目覚める三日前に、息を引き取りました.....」
涙ぐんで答えるルエラは、誰かの目の前で泣くことをためらっているようにもみえた。ルイは、立ち上がってルエラの前へ。
「....ああ、悪い。辛いことを思い出させちまったか? ごめんな」
それだけ言うと、またルイはもとの座っていた椅子に戻った。
「いいえ、振り返ってばかりはいられません。私たちには、倒さなければならない相手がいるのですから」
ルエラは何かしらの覚悟を決めたように目を瞑る。
「――絶対に...」
「じゃあ、ルエラ。行こうか。その本の導くままに。あと、ルエラも一緒に行くんでしょ?てか、ルエラがいないと俺は何も出来ないしな。.....だったら、俺のことは呼び捨てでいいし、敬語も禁止。そうしよう」
と、ルエラに優しくほほ笑みかけるルイの笑顔は、先程までハーレムでないと嫌だと駄々をこねていた者の顔つきではなかった。
「.......ええ、ルイ。ありがとう。それと、これが王様の形見の剣なのだけれど。一緒に、戦ってくれる?ルイ」
と、ルイに優しくほほ笑みかけるルエラの笑顔は、さっきのルイの笑顔に負けず劣らずであった。
ルイはこの時になって初めて、ルエラの心からの笑顔というものを見た気がした。
「ああ、その七人を倒すまでこの神に愛されし天才の俺が付き合ってやる」
「ふふ、ありがとう。天才さん。....じゃあ、外に出よう。玄関に案内するから着いてきて」
この部屋に案内された時より、玄関に向かっている今の方が二人の距離が近くなっているのは、ルエラだけが気付いていた――
「じゃあ、ルイ、開けて。ここから始まるんだよ」
重たい扉を両手で開けると同時に、ルイの、ルイたちの冒険が幕を上げる―――
淡々と言い張るルエラだったが、まだルイは覚悟が決まらないようだった。
「........。え? 一年間も戻れないの? 嫌だなぁ.....。とりあえず、この世界の設定? そういうやつ、説明してくれよ。俺の神に愛された才能で三日経たずとも終わらせてやる」
無言でルイを見つめ続けるルエラ――
「はい。では、気を取り直してご説明致します――
ルイ様は、七つの大罪と呼ばれる悪魔をご存知でしょうか? 」
「あの大人気マンガのことか?もちろん知っているぞ。俺は、クラスで人気者になるために努力を惜しまなかったからな。世間で話題のことについては知り尽くしている。まあ、そんな事しなくても、俺はモテたがな」
得意げに話すルイだったが、ルエラは意気消沈したように固まったままだ。ルイのナルシストすぎる性格に愛想をつかしたのか、ルイの無知さに驚いたのかは定かではないが、ルエラは、深いため息をついて、
「いいえ、マンガの話ではありませんが、傲慢、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰、強欲。この七つの欲の悪魔達のことです。とりあえず、ルイ様にはこの七人の悪魔達を倒していただきたいのです。そして、その七人がそれぞれ持つ鍵を手に入れて、伝説の聖剣エクスカリバーが眠っているというアヴァロンゲートを開いてほしいのです」
相変わらず、淡々と言い張るルエラにルイはある意味で圧倒されてしまう。だが、ルイはルエラの話し方のことには目もくれず、
「........大体の話は理解したんだけど、待って、俺はそんな中二真っ盛りの学生がつくったような設定の中で生き抜かなきゃいけないわけ? 」
顎を左手で支えながら、けだるそうに質問するルイはリア充生活を満喫していた現実世界に一刻も早く戻りたいんだという心情を、物語っているようであった。
「中二設定などと、おっしゃらないでください。どうしても、エクスカリバーが必要なのですよ。お分かりいただけましたか? 」
「まあ、分かったけどさ、俺は何をすればいいわけ? さっきから、左手に力込めてるけど魔法が使えるわけでもないよね?」
そう、悪魔を倒してくれとルエラに頼まれてからというもの、この男一条瑠衣は、ずっと身体中のいたるところに力を入れ続けているが、特にこれといった変化は現れない。
「......その通りです。ルイ様は、魔法が使えません。この世界の住人ではありませんので。そのかわり、現実世界で発揮なされた類まれなる運動センスで、この世界では剣術や体術などで戦闘をしていただくことになると思われます。それと、共に戦ってくれる仲間を集めて」
最後を強調して話したのは、ルイだけでは立ち向かえない壁が現れた時、助けてくれる仲間を見つけろという、ルエラなりの優しさなのだと願おう。
「.....で、俺はどこに行けばいいの? 全然予想できないんだけど.......」
「ああ、それにつきましては、この国の王様だった方があなたにとっての最善の未来を本に記してくださいましたよ。王様の魔法は、『その者の最善の未来を見出す』という能力でしたので。ちなみに、私の魔法は『傷を癒す』能力。つまり『治癒』です」
と言うと、ルエラは持っていた短剣で自身の掌を傷つけた。――だが、ルエラの持つ魔法である『治癒』で、一瞬にして傷は無くなり、もとのルエラの美しく白い肌が戻る。アニメや、マンガでは魔法というものを散々見ていたルイもさすがに目の前で見せつけられると目を見張る。
「おお......治った....。何か、光ってたし。それはそうと、王様だったってことは、今はいないの?」
「.........。はい。ルイ様の未来を見出した四日後に――ルイ様が目覚める三日前に、息を引き取りました.....」
涙ぐんで答えるルエラは、誰かの目の前で泣くことをためらっているようにもみえた。ルイは、立ち上がってルエラの前へ。
「....ああ、悪い。辛いことを思い出させちまったか? ごめんな」
それだけ言うと、またルイはもとの座っていた椅子に戻った。
「いいえ、振り返ってばかりはいられません。私たちには、倒さなければならない相手がいるのですから」
ルエラは何かしらの覚悟を決めたように目を瞑る。
「――絶対に...」
「じゃあ、ルエラ。行こうか。その本の導くままに。あと、ルエラも一緒に行くんでしょ?てか、ルエラがいないと俺は何も出来ないしな。.....だったら、俺のことは呼び捨てでいいし、敬語も禁止。そうしよう」
と、ルエラに優しくほほ笑みかけるルイの笑顔は、先程までハーレムでないと嫌だと駄々をこねていた者の顔つきではなかった。
「.......ええ、ルイ。ありがとう。それと、これが王様の形見の剣なのだけれど。一緒に、戦ってくれる?ルイ」
と、ルイに優しくほほ笑みかけるルエラの笑顔は、さっきのルイの笑顔に負けず劣らずであった。
ルイはこの時になって初めて、ルエラの心からの笑顔というものを見た気がした。
「ああ、その七人を倒すまでこの神に愛されし天才の俺が付き合ってやる」
「ふふ、ありがとう。天才さん。....じゃあ、外に出よう。玄関に案内するから着いてきて」
この部屋に案内された時より、玄関に向かっている今の方が二人の距離が近くなっているのは、ルエラだけが気付いていた――
「じゃあ、ルイ、開けて。ここから始まるんだよ」
重たい扉を両手で開けると同時に、ルイの、ルイたちの冒険が幕を上げる―――
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