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第5話
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ピピピピっという、目覚まし時計のうるさすぎる音で目が覚めた。
―――はあ...学校か......辛い。いい感じにうまく仮病を使う能力でもあったらなぁ.....
でも、夏海も制服姿で僕に話しかけてくれたから(僕の学校の制服ではないが)、夏海も学校に行っていると思うと、少しだけ元気が出る。何でだろうな。あの笑顔を思い出すだけで、心が浄化されるようだ。
学校についてからは、本当に何もすることなくただただ、ぼーっと窓の外を見ていた。犬の散歩をしている人、幼稚園の制服を着て友達と手を繋ぎながら走る園児達。何も変わらないはずのいつもの街の風景が、今日は、今日だけは、明るかった。
なんとなーく、学校生活を終えると、僕は逃げるように校門を後にした。明日は、夏海との約束の日だから、夏海と会えるきっかけになったあの本を「君と見た星空は」を、もう一度読み返したかったのだ。
―――あれ?僕、なんでこんなに笑ってるんだろう。何でこんなにも.......夏海のことを考えてしまうんだろう....
あ、そうか。明日、夏海に会うからだ。そうだ。深いことを考えるのはよそう。
その日は、寝る間も惜しんであの本を読んでいた。不思議と全く眠くならなかった―――
多分、寝たのは五時とか、六時とかだった。
―――翌朝、七時頃いつもはうるさいと感じる目覚まし時計の音がまるで、爽やかな小鳥のさえずりのように聞こえた。起きた瞬間から、思わず笑ってしまうほど....いつものように支度をする時間さえも、楽しかった。カバンの中に、財布と、携帯と、他にも色々詰め込んで.....しまいに、あの本と―――
駅前のカフェまでは、一キロメートル強はあるけれど、疲れる気がしなかった。
――今日くらい、贅沢してもいいよな。こんな普通人間の僕が経験できる、最初で最後の贅沢だ。
朝十時の約束だったけれど、八時半についてしまった。早すぎた。何だよ......興奮しすぎだよ。僕、落ち着けよ。どうせ、僕の代わりはいくらでもいるんだ。
代わりはいくらでもいる。辛いけど、悲しい現実なのだ。
相変わらずの自己嫌悪に浸っていると、それを遮るようにこの間の綺麗なソプラノ声が聞こえた。
「こんにちは。翔くん。あっ、おはようの方がしっくりくるかな。早く来すぎちゃった.....えへへ」
前の制服姿ではない。白いブラウスに、薄いピンクのスカートを履いている夏海は、清楚で、どこかのタレントさんのようだった。本当に、心から可愛いと思ってしまった。
「いいや、全然大丈夫だよ。僕もさっき来たばっかりだから。また、同じ事考えてたみたいだね」
「そうだね。同じ事考えるなんて....なんか、運命みたいだよね」
え?いや、運命?いや、夏海のような美少女であれば、運命の人なんていくらでもいるだろう.....。だがしかし、こんな美少女が運命の人であれば、死んでも悔いはないな。
「あ、はは、そうだね」
そう言った、僕の声はぎこちなかった。
「じゃあ、また話そうか。あ、私ね、翔くんにオススメしたい本がいくつかあってね......」
――そう言いつつ、僕の隣に座ってきた夏海の横顔は、本当に美しかった
―――はあ...学校か......辛い。いい感じにうまく仮病を使う能力でもあったらなぁ.....
でも、夏海も制服姿で僕に話しかけてくれたから(僕の学校の制服ではないが)、夏海も学校に行っていると思うと、少しだけ元気が出る。何でだろうな。あの笑顔を思い出すだけで、心が浄化されるようだ。
学校についてからは、本当に何もすることなくただただ、ぼーっと窓の外を見ていた。犬の散歩をしている人、幼稚園の制服を着て友達と手を繋ぎながら走る園児達。何も変わらないはずのいつもの街の風景が、今日は、今日だけは、明るかった。
なんとなーく、学校生活を終えると、僕は逃げるように校門を後にした。明日は、夏海との約束の日だから、夏海と会えるきっかけになったあの本を「君と見た星空は」を、もう一度読み返したかったのだ。
―――あれ?僕、なんでこんなに笑ってるんだろう。何でこんなにも.......夏海のことを考えてしまうんだろう....
あ、そうか。明日、夏海に会うからだ。そうだ。深いことを考えるのはよそう。
その日は、寝る間も惜しんであの本を読んでいた。不思議と全く眠くならなかった―――
多分、寝たのは五時とか、六時とかだった。
―――翌朝、七時頃いつもはうるさいと感じる目覚まし時計の音がまるで、爽やかな小鳥のさえずりのように聞こえた。起きた瞬間から、思わず笑ってしまうほど....いつものように支度をする時間さえも、楽しかった。カバンの中に、財布と、携帯と、他にも色々詰め込んで.....しまいに、あの本と―――
駅前のカフェまでは、一キロメートル強はあるけれど、疲れる気がしなかった。
――今日くらい、贅沢してもいいよな。こんな普通人間の僕が経験できる、最初で最後の贅沢だ。
朝十時の約束だったけれど、八時半についてしまった。早すぎた。何だよ......興奮しすぎだよ。僕、落ち着けよ。どうせ、僕の代わりはいくらでもいるんだ。
代わりはいくらでもいる。辛いけど、悲しい現実なのだ。
相変わらずの自己嫌悪に浸っていると、それを遮るようにこの間の綺麗なソプラノ声が聞こえた。
「こんにちは。翔くん。あっ、おはようの方がしっくりくるかな。早く来すぎちゃった.....えへへ」
前の制服姿ではない。白いブラウスに、薄いピンクのスカートを履いている夏海は、清楚で、どこかのタレントさんのようだった。本当に、心から可愛いと思ってしまった。
「いいや、全然大丈夫だよ。僕もさっき来たばっかりだから。また、同じ事考えてたみたいだね」
「そうだね。同じ事考えるなんて....なんか、運命みたいだよね」
え?いや、運命?いや、夏海のような美少女であれば、運命の人なんていくらでもいるだろう.....。だがしかし、こんな美少女が運命の人であれば、死んでも悔いはないな。
「あ、はは、そうだね」
そう言った、僕の声はぎこちなかった。
「じゃあ、また話そうか。あ、私ね、翔くんにオススメしたい本がいくつかあってね......」
――そう言いつつ、僕の隣に座ってきた夏海の横顔は、本当に美しかった
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