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第2章『お仕置き生活続行中』
第28話「籠の鳥」
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今日もシャルリーヌは、いつもの窓際に居た。
飼い主の老人に身体を好きにされているか、もしくは窓際から外をぼうっと眺めているか、シャルリーヌがすることは、その二通りしかなくなっていた。
(……今思えばジェドの所に居た頃は、監視はされていたけど、掃きだめみたいな場所に自分の住む部屋があって、仕事の時間以外は自由でいられたし、わずかばかりでも自由にできるお金もあった)
それが今はどうだろう。そういう風に思いながら、シャルリーヌはがらんとした部屋を見渡した。
屋敷の広さに応じてこの部屋も広さだけはある。だが本来ならもっと内部を飾る為の見栄えの良い家具もあったはずだ。
でもこの部屋には天蓋付きのベッドと、すぐ隣の浴室から持ってきたのであろう浴槽があって、他には椅子とテーブル、衣装ケースがあるだけだった。
シャルリーヌが寝泊まりする為というよりは、老人が彼女を着せ替えしたり、風呂に入れては、彼女の若い身体をいじくり回す為の部屋というほうが正しい。実際、ほとんど毎日のようにそれを繰り返している。
(こういうのを籠の鳥と言うのかしら? わざとそうしているのなら、効果は十分にあるわ。最近私が思うのは、この窓ガラスを割って破片で首を切るか、そのまま逃げられる可能性に期待して飛び降りるか。でも逃げたとして何処へ行けばいいの?)
この屋敷に来た当初は、誰もがそうするかもしれないが、彼女も反抗的だったり逃れようと必死だった。
だがもう、そういう段階は過ぎ去ってしまい、かなり現状を受け入れている。
ただ一つだけ『そうなって欲しい』という願望だけは残っているが、当初はそうなると確信していた事が、なかなか現実にならない事で、最早、願いに変わりつつある。
(……ユベール。貴方はいつ私を迎えに来てくれるの? あとどれだけ待っていたら、私を迎えに来てくれる? 何とかしてここに居るって知らせたい。そうしたら迎えに来てくれる。そう思えば耐えられる……)
―――
シャルリーヌが監禁されているすぐ隣の部屋で、老人と、その雇い主が会話をしていた。
どうやらシャルリーヌについての話のようだ。
「ユベールさま、ようやくお会いできましたな」
シャルリーヌの飼い主、あの老人がユベールにそう言っている。
「そろそろいい感じかと思ったから会いに来ました」
「壊さない程度に維持はできていると思いますよ」
老人は"にたあ"と薄ら笑いを浮かべて満足そうにしている。
「そういう良い仕事をするって噂に聞いたから、貴方に彼女の調教をお願いしたのですよ。僕が直接やったら壊してしまいそうだから」
無表情で淡々と、恐ろしい事を口から出してはいるが、現状の結果には満足していそうだ。
「ご注文通りに完成すれば、あの娘はユベールさましか見ない人形に変わりますよ。そうなってしまったら二度と『人には戻せません』」
「そうでしょうね。人の心はそんなに丈夫にはできていないから、砕け散ったらもう二度とは元に戻せません。でもそれこそが僕の望みです」
シャル。
もうそんなに時間を掛けずとも、キミは本来のキミに戻るよ。
昔のキミをそのまま再現はできないだろうけど、近い状態に戻すことはできるかもしれない。
もうキミはだいぶ穢れてしまったね?
でも安心して。
そんなことはどうでもいいから。
大事なのはキミを僕が手に入れる事。
それ以外はね。
どうでもいいんだよ。
もうすぐだからね?
最後の仕上げは僕がやってあげるよ。
キミの心を粉々に砕くのは、僕の役目だと思うんだよ。
あはははは。楽しみだよ。
また、会いに来るよ。シャルリーヌ。
僕は今でもキミを愛しているから。
*****
愛にもいろいろあるのです(´ー+`)
*****
飼い主の老人に身体を好きにされているか、もしくは窓際から外をぼうっと眺めているか、シャルリーヌがすることは、その二通りしかなくなっていた。
(……今思えばジェドの所に居た頃は、監視はされていたけど、掃きだめみたいな場所に自分の住む部屋があって、仕事の時間以外は自由でいられたし、わずかばかりでも自由にできるお金もあった)
それが今はどうだろう。そういう風に思いながら、シャルリーヌはがらんとした部屋を見渡した。
屋敷の広さに応じてこの部屋も広さだけはある。だが本来ならもっと内部を飾る為の見栄えの良い家具もあったはずだ。
でもこの部屋には天蓋付きのベッドと、すぐ隣の浴室から持ってきたのであろう浴槽があって、他には椅子とテーブル、衣装ケースがあるだけだった。
シャルリーヌが寝泊まりする為というよりは、老人が彼女を着せ替えしたり、風呂に入れては、彼女の若い身体をいじくり回す為の部屋というほうが正しい。実際、ほとんど毎日のようにそれを繰り返している。
(こういうのを籠の鳥と言うのかしら? わざとそうしているのなら、効果は十分にあるわ。最近私が思うのは、この窓ガラスを割って破片で首を切るか、そのまま逃げられる可能性に期待して飛び降りるか。でも逃げたとして何処へ行けばいいの?)
この屋敷に来た当初は、誰もがそうするかもしれないが、彼女も反抗的だったり逃れようと必死だった。
だがもう、そういう段階は過ぎ去ってしまい、かなり現状を受け入れている。
ただ一つだけ『そうなって欲しい』という願望だけは残っているが、当初はそうなると確信していた事が、なかなか現実にならない事で、最早、願いに変わりつつある。
(……ユベール。貴方はいつ私を迎えに来てくれるの? あとどれだけ待っていたら、私を迎えに来てくれる? 何とかしてここに居るって知らせたい。そうしたら迎えに来てくれる。そう思えば耐えられる……)
―――
シャルリーヌが監禁されているすぐ隣の部屋で、老人と、その雇い主が会話をしていた。
どうやらシャルリーヌについての話のようだ。
「ユベールさま、ようやくお会いできましたな」
シャルリーヌの飼い主、あの老人がユベールにそう言っている。
「そろそろいい感じかと思ったから会いに来ました」
「壊さない程度に維持はできていると思いますよ」
老人は"にたあ"と薄ら笑いを浮かべて満足そうにしている。
「そういう良い仕事をするって噂に聞いたから、貴方に彼女の調教をお願いしたのですよ。僕が直接やったら壊してしまいそうだから」
無表情で淡々と、恐ろしい事を口から出してはいるが、現状の結果には満足していそうだ。
「ご注文通りに完成すれば、あの娘はユベールさましか見ない人形に変わりますよ。そうなってしまったら二度と『人には戻せません』」
「そうでしょうね。人の心はそんなに丈夫にはできていないから、砕け散ったらもう二度とは元に戻せません。でもそれこそが僕の望みです」
シャル。
もうそんなに時間を掛けずとも、キミは本来のキミに戻るよ。
昔のキミをそのまま再現はできないだろうけど、近い状態に戻すことはできるかもしれない。
もうキミはだいぶ穢れてしまったね?
でも安心して。
そんなことはどうでもいいから。
大事なのはキミを僕が手に入れる事。
それ以外はね。
どうでもいいんだよ。
もうすぐだからね?
最後の仕上げは僕がやってあげるよ。
キミの心を粉々に砕くのは、僕の役目だと思うんだよ。
あはははは。楽しみだよ。
また、会いに来るよ。シャルリーヌ。
僕は今でもキミを愛しているから。
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愛にもいろいろあるのです(´ー+`)
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