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第1章『お仕置き生活は突然に』

第21話「ユベールのパパ、ブチ切れる」

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 カイトゥスの皇帝ユスランは朝から機嫌が悪かった。

 先頃、レンヌ王国から知らせが届いていた。
 近いうちにレンヌから使者がやってくる。不況に喘ぐレンヌに支援を請うためにやってくるという。
 それは別に構わなかった。
 カイトゥスにとってレンヌを救うくらい造作もない。
 腹を空かせて尻尾を振る犬にエサをやる程度の事だ。

「アランめ! ユベールの事を私が知らないとでも思っているのか!!」

「ユベールさまが口止めされたのかと……」

 カイトゥスの女宰相カーティアが意見を述べるが、皇帝ユスランは猶もなおも激しい怒りを露わにしてこう言った。

「だとしてもだ! 父親である私に伏せるとは許せぬ!! そなたは許せとでも言うのか!!!」

「滅相もございません。レンヌのようなごみ屑は地上から消し去るべきです」

 カーティアは不敵な笑みを浮かべ、さも当たり前にように言い切った。

「今すぐ動ける竜騎士隊は?」

「ユベールさまの火竜騎士団以外は、皇都の守備を回せば2つか、3つは、すぐに招集できます」

「おのれ、レンヌめ……我が息子を殺しかけておいて、タダで済むとは思うなよ……」

 顔中を真っ赤にし、握り込んだ拳の隙間から鮮血が滴っている。皇帝ユスランは、怒りで我を忘れそうになるのを必死に抑えていた。

「皇帝陛下に申し上げます! ユベールさまのご無念は、我が無念!! 是非ともレンヌ掃討戦の先陣はこの私に!!!」

 カイトゥス皇国の主翼を担う、女大将軍ジュスティーナが高らかに名乗りを挙げた。

「よくぞ申したジュスティーナ!! それではレンヌを滅ぼすのに、どれだけの兵が必要だ?」

「あのような辺境のゴミ屑など、竜騎士隊を一隊か二隊お授け下されば、数日で滅亡させてご覧に入れます!!」

「よし! 今すぐにでも―――」

 皇帝ユスランの口から、今にも命令が発せられようとしたその時に、誰かがそれを遮ったさえぎった

「ダメですよ。陛下? そんな事の為に皇都の守備を割くつもりですか」

 すらりとした長身の女性が姿を現すと、落ち着いた口調で皇帝ユスランを窘めたたしなめた

「エッダ! そなた、息子ユベールの為に仕返しをするなと申すのか!」

「そんなわけないでしょう? ユベールをあのような目に遭わされて、はらわたが煮えくり返る思いですわ。ただ、だからと言って皇都の守備は割けません。ですから暗殺者を送って、王族と貴族を全員殺しましょう」

 『ほほほほ』と口に手を当てて、皇妃エッダは残忍に笑っている。

 皇妃エッダにとって、ユベールは義理の息子に当たる。

 彼女の大の親友だった女性がユベールの。その為、その女性が亡き後は、実の息子としてユベールを愛してきた。
 それだけにエッダも、レンヌ王国を相当に恨んでいた。

あの子ユベールに何かあっては竜神さまに申し訳が立たぬ! アランめ!!! 許さんぞ!!」



―――



 んんん?
 いま何か寒気がしたけど。
 今日って暑いよね……
 どこかで誰かが良からぬ事でも企んでいる?

「んん……あ、ユベールさま、おはようございます」

 あああ、そうだった!
 昨夜の僕はどうかしていたよ。
 こないだの課外授業も、やりすぎてしまって後処理が大変だったのに。
 今度はカミラさんとこんな関係に……

「あ、はい。おはようございます」

「おはよございますう!!」

「わ! びっくりしたぁ!! リーゼ居たの!!」

 い、いつからそこに居たの!
 気配を消して僕に近付けるのはリーゼくらいだよ!

「お、怒ってる?」

「別に!! 朝ごはんできてますから!!!」

 言葉ではそう言うが烈火の如く怒っている。
 用事を言い終えると、乱暴に扉を開け放って階下に姿を消してしまった。

「あれれ? リーゼさんすっごく怒ってますね……」

「え、えと、カミラさん、何か着て!」

 粗末なブランケットの中から上半身だけを見せる彼女は、何も身に着けておらず、窓から差し込む陽光に真っ白な肌が照らされていた。

「今更、照れるのですか? 昨夜はあんなに凄かったのに……」

「キ、キスしかしていないじゃないか!」

 そうなのだ。

 熱いキスを交わして強く抱きしめてやると、カミラは失神して気を失ってしまったのだ。

 それがいつの間にかベッドの中で、彼女は全裸になってしまっている。
 ユベールには何故そうなったのか、不可解に思えていたが、それ以前に彼女の姿が彼には刺激が強すぎた。

「じゃあ、今から続きをしますか?」

 これってアレかな?
 怖そうなお兄さんが出てきて、『俺の女に何しとるんじゃコラ!』とかそういうアレ?

「ユベールさま?」

「い、いや何でもないですよ。ごはん食べに行きましょう」





*****

ユベールに美人局する人はいないと思う(´ー+`)

*****

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