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第1章『お仕置き生活は突然に』
第11話「定期魔法試験②…小便王子調子に乗る」
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バカだ、バカだと思っていたけど、こんなにバカで扱いやすかったなんて……ジュリアン、キミの頭の中身に同情するよ。
「ユベール! 俺と勝負しやがれ!!」
ジュクジョ男爵家ガ・スキーが何のひねりもない叫び声を上げた。
ガ・スキーの役目はどうにかして、ユベールを勝負の土俵に上げて火炎を出させることである。
それが単に勝負を申し込んだだけ。
断られたらどうする気なのだろうか。
勝負せざるを得ない仕込みをしろと、ジュリアンも言いたかったはずだ。
まさかジュリアンより頭が悪い人間が居たのかと、ユベールは内心で戦慄していた。
何時もなら放置する所だが、勝負に乗らないと話が進まないので、ユベールはため息をつきたくなる気持ちを抑えてこのバカに合わせることにした。
「毎回最下位の僕しか相手が居ないの?」
仕方が無いので煽り文句で応じてやる事に。
「後悔すんなよ! 行くぜえええ!!」
さすがにこの学院に通う生徒である。頭は致命的に足りないが、練度の高い魔法の才能を発揮している。
もう面倒臭いし早く早退したいユベールは、視界の端でジュリアンのもう一人の手下の存在を確認すると、青い火炎ではなく、更にその上の火炎を披露した。
この場にジュリアンが到着していたなら、手下を止めたかもしれないが、ジュリアンが到着する前に手下がこう叫んでいた。
「さすがジュリアンさま! 青い火炎で勝負を付けるとは凄いっすね!」
勝負の模様は空中を透明な状態で浮遊する、魔法ボットが収集し記憶をしている。その為、ユベールが出した火炎も、当然ながらユベールが出した物と記憶されているが、このボットは記憶をすると言うだけで映像などの記録は取らない。ジュリアンはそこを利用しようと考えたのだ。
「……凄いですね」
ユベールは如何にも不満そうな顔の演技をはじめた。そこへジュリアンが遅れて到着した。
「どうだ! 俺の『青い火炎』は、すげえだろう!!」
ジュリアンは今こう思っているだろう。
『ユベールの成果を奪ったぜ! おまえは黙ってるしかない!!』と。
「……はい、そうですね。再現されたのは『オレンジの火炎』でしたけど」
「……はあ? 青じゃなくて、オレンジ?」
ジュリアンが『オレンジの火炎』と聞いて困惑している間に、周囲には騒ぎを聞き付けて集まった生徒や教師たちで、人だかりが出来ていた。
教師の一人が魔法ボットの記憶を取り出している。そして、その結果を知って愕然としている。
「ユベールくん、君が火炎を出したのかい?」
『ユベールが出した』と聞いて、この場の全員がざわめきはじめるが、ユベールは涼しい顔をしてこう答えた。
「いえ、火炎を出したのはジュリアン王子殿下です。だって僕、魔法使えませんし」
この返答を聞いた教師はすぐさま『魔法ボットが誤作動』と脳内変換して直後にこう叫んだ。
「……ジュリアンさまが『オレンジの火炎』を再現された!! ドラゴンブレスを再現されたぞ!!!」
「すげええええええ!!!!」
「ドラゴンブレスを再現なんて、史上初の快挙じゃないの!!!!」
「やっべえ!! 大陸最強の魔導師ジュリアンの誕生に立ち会っちまった!!!!」
「あ……え、え、えと、ちょっと、待って?」
ジュリアンは場の大騒ぎに悪い予感がしている。口から出る言葉は、途切れ途切れで頼りなかった。
「ジュリアンさま!! 魔法聖教会に報告しますね!!!! 貴方さまはきっと、『魔法聖人』の歴代最高位に就かれるはずですよ!!!」
「い、いや、落ち着こう、な?」
幾ら何でも『オレンジの火炎』を出したと嘘を言うのは無理がある。
それはジュリアンも、薄々無理だと思っているようだ。
「こんな快挙を落ち着いていられますか!!!!!」
「きゃああああ!! ジュリアンさま!! 抱いて!! 私を好きにしてー!!」
「何よ! 抜け駆けする気!!! 私が先よ!!!」
「え? おまえら有名な美人姉妹だけど、婚約してたよな?」
ジュリアンは事の重大さより、目の前の美人姉妹の虜になりつつある。
「あんな奴いらないわ!! ジュリアンさまに嫁ぎます!!」
「私が先に結婚してもらうの! ジュリアンさま! 今宵、私を食べて!!」
「しょ、しょうがねえな!! おまえらをドラゴンブレスで調理してやるぜ!! うはははははははは!!」
美女の甘い誘惑に我を忘れたジュリアンを、ユベールは満足そうに見つめていた。
もとより今更、嘘だったと、ユベールのやった事だと言った所で誰も信じない。
確かにドラゴンブレスは再現されているのだ。
魔法が使えないと、周知されているユベールがやったとは誰も信じない。
ユベールは自分の欠点を、ジュリアンを刺し貫く武器に換えたのだ。
ジュリアンという名の、底の抜けた泥舟が行き着く先は地獄だろうか。
恐らくそれを知っているのは、ユベールだけだろう。
さて、これで仕込みは完了かな?
魔法聖教会に嘘なんかついたら、どうなるのか僕でもわからないな。
魔法聖人の認定の前に、『火炎を再現』することになるだろうけど、キミどうするつもり?
前回は、廃嫡した上で、領地と私財没収で済ませたけど、まさかそれで済むなんて思ってないよね?
安心して、命は取らないから。
だって殺したら、もうキミで遊べなくなるから。
根こそぎ奪い取って、絶望さえもできないくらい、何もかも無くなったら許してあげるよ。
*****
内容おかしい所あったので修正しました(´ー+`)
*****
「ユベール! 俺と勝負しやがれ!!」
ジュクジョ男爵家ガ・スキーが何のひねりもない叫び声を上げた。
ガ・スキーの役目はどうにかして、ユベールを勝負の土俵に上げて火炎を出させることである。
それが単に勝負を申し込んだだけ。
断られたらどうする気なのだろうか。
勝負せざるを得ない仕込みをしろと、ジュリアンも言いたかったはずだ。
まさかジュリアンより頭が悪い人間が居たのかと、ユベールは内心で戦慄していた。
何時もなら放置する所だが、勝負に乗らないと話が進まないので、ユベールはため息をつきたくなる気持ちを抑えてこのバカに合わせることにした。
「毎回最下位の僕しか相手が居ないの?」
仕方が無いので煽り文句で応じてやる事に。
「後悔すんなよ! 行くぜえええ!!」
さすがにこの学院に通う生徒である。頭は致命的に足りないが、練度の高い魔法の才能を発揮している。
もう面倒臭いし早く早退したいユベールは、視界の端でジュリアンのもう一人の手下の存在を確認すると、青い火炎ではなく、更にその上の火炎を披露した。
この場にジュリアンが到着していたなら、手下を止めたかもしれないが、ジュリアンが到着する前に手下がこう叫んでいた。
「さすがジュリアンさま! 青い火炎で勝負を付けるとは凄いっすね!」
勝負の模様は空中を透明な状態で浮遊する、魔法ボットが収集し記憶をしている。その為、ユベールが出した火炎も、当然ながらユベールが出した物と記憶されているが、このボットは記憶をすると言うだけで映像などの記録は取らない。ジュリアンはそこを利用しようと考えたのだ。
「……凄いですね」
ユベールは如何にも不満そうな顔の演技をはじめた。そこへジュリアンが遅れて到着した。
「どうだ! 俺の『青い火炎』は、すげえだろう!!」
ジュリアンは今こう思っているだろう。
『ユベールの成果を奪ったぜ! おまえは黙ってるしかない!!』と。
「……はい、そうですね。再現されたのは『オレンジの火炎』でしたけど」
「……はあ? 青じゃなくて、オレンジ?」
ジュリアンが『オレンジの火炎』と聞いて困惑している間に、周囲には騒ぎを聞き付けて集まった生徒や教師たちで、人だかりが出来ていた。
教師の一人が魔法ボットの記憶を取り出している。そして、その結果を知って愕然としている。
「ユベールくん、君が火炎を出したのかい?」
『ユベールが出した』と聞いて、この場の全員がざわめきはじめるが、ユベールは涼しい顔をしてこう答えた。
「いえ、火炎を出したのはジュリアン王子殿下です。だって僕、魔法使えませんし」
この返答を聞いた教師はすぐさま『魔法ボットが誤作動』と脳内変換して直後にこう叫んだ。
「……ジュリアンさまが『オレンジの火炎』を再現された!! ドラゴンブレスを再現されたぞ!!!」
「すげええええええ!!!!」
「ドラゴンブレスを再現なんて、史上初の快挙じゃないの!!!!」
「やっべえ!! 大陸最強の魔導師ジュリアンの誕生に立ち会っちまった!!!!」
「あ……え、え、えと、ちょっと、待って?」
ジュリアンは場の大騒ぎに悪い予感がしている。口から出る言葉は、途切れ途切れで頼りなかった。
「ジュリアンさま!! 魔法聖教会に報告しますね!!!! 貴方さまはきっと、『魔法聖人』の歴代最高位に就かれるはずですよ!!!」
「い、いや、落ち着こう、な?」
幾ら何でも『オレンジの火炎』を出したと嘘を言うのは無理がある。
それはジュリアンも、薄々無理だと思っているようだ。
「こんな快挙を落ち着いていられますか!!!!!」
「きゃああああ!! ジュリアンさま!! 抱いて!! 私を好きにしてー!!」
「何よ! 抜け駆けする気!!! 私が先よ!!!」
「え? おまえら有名な美人姉妹だけど、婚約してたよな?」
ジュリアンは事の重大さより、目の前の美人姉妹の虜になりつつある。
「あんな奴いらないわ!! ジュリアンさまに嫁ぎます!!」
「私が先に結婚してもらうの! ジュリアンさま! 今宵、私を食べて!!」
「しょ、しょうがねえな!! おまえらをドラゴンブレスで調理してやるぜ!! うはははははははは!!」
美女の甘い誘惑に我を忘れたジュリアンを、ユベールは満足そうに見つめていた。
もとより今更、嘘だったと、ユベールのやった事だと言った所で誰も信じない。
確かにドラゴンブレスは再現されているのだ。
魔法が使えないと、周知されているユベールがやったとは誰も信じない。
ユベールは自分の欠点を、ジュリアンを刺し貫く武器に換えたのだ。
ジュリアンという名の、底の抜けた泥舟が行き着く先は地獄だろうか。
恐らくそれを知っているのは、ユベールだけだろう。
さて、これで仕込みは完了かな?
魔法聖教会に嘘なんかついたら、どうなるのか僕でもわからないな。
魔法聖人の認定の前に、『火炎を再現』することになるだろうけど、キミどうするつもり?
前回は、廃嫡した上で、領地と私財没収で済ませたけど、まさかそれで済むなんて思ってないよね?
安心して、命は取らないから。
だって殺したら、もうキミで遊べなくなるから。
根こそぎ奪い取って、絶望さえもできないくらい、何もかも無くなったら許してあげるよ。
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内容おかしい所あったので修正しました(´ー+`)
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