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第1章『お仕置き生活は突然に』
第4話「王太子ジュリアン、失禁する」
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レンヌ王国の王宮では、王太子ジュリアンがアラン王に叱責を受けていた。
理由は当然、ユベールを殺しかけた事でだ。
だが、その理由を述べて、ユベールが大国の皇子だと言っても、ジュリアンは何故、叱責されるのかと不思議そうな顔をしている。
それには理由がある。
"まず王太子ジュリアンはアホである"
学園では座学も実技も申し分なく、優れた成績を修めているが、基本的にはアホである。
基本的な範囲でしかまともに対応できず、取り巻きに判断を委ねるというか、吹き込まれて利用されるようなアホである。
「お前はシリオラ姫との婚約まで勝手に反故にして、今度はユベールさまを……!」
アラン王の額の青筋は、今にも破裂しそうに怒張している。ジュリアンを思う存分に、殴り倒してやりたい衝動と必死に戦っているのだ。
「お言葉ですが父上、シリオラはとんでもない悪女です。シャルリーヌがそう言ってました!」
ジュリアンには隣国の第1王女との結婚の約束があった。
その第1王女シリオラは容姿こそ平凡だが、優しさと慈愛に満ち溢れ、その寛容さはどんな深い海よりも深く、恋人や夫を立てるデキル女である。
加えて父王や家族、家臣から国民にまで慕われるほとんど完璧な女性なのだ。
ジュリアンのほうから一方的に婚約破棄をしているが、シリオラにとってはそれこそ幸せな事だ。アホな夫を持たなくて済んだのだから。
大方、シャルリーヌに何か吹き込まれたのだろう。
もしくはシャルリーヌの美貌に釣られたのか。
「確証はあるのか!!」
「いいえ、ありませんが。シャルリーヌとは真実の愛を結びました!! もう離れる事などできません! できないのです!!!」
言い切って清々しい顔をしている。
その様子を父王は怒りの形相で睨みつけ、宰相を始めとした家臣たちからは冷ややかな視線を浴びているのだが。
まるで悲恋な物語の主人公のように振舞っている。
「お前という奴は……」
アラン王は額に手を当ててため息をついた。
「父上? お疲れですか?」
「お前のせいでこうなっているのだぞ!!」
「はあ? 何故ですか?」
そしてもう一つの理由だ。
こちらについてはアラン王にも問題がある。
ジュリアンに全ての非があるとは言えないが、アラン王はジュリアンが最初の子供でかつ、学業優秀、魔法の才能も十二分、加えて容姿も優れている。王子としてこの上のない条件を備えるジュリアンを甘やかしたのだ。
それがジュリアンの増長を招いている。
自分を愛する父が、自分を害する事などしない。
ジュリアンはそう思っているから、父王の話をまともに聞いていないし、話の本質も理解していない。
「ユベールさまは、カイトゥスの皇子だと言っているだろうが!!」
「はあ? あのクソ虫がですか? 何の冗談ですか」
「冗談を言うために、家臣を全員集めるわけがないだろう!!」
ジュリアンは今更になって謁見の間を、ぐるりと見渡した。
確かに王の言うように、武官から文官までズラリと居並んでいる。
現在、王都に滞在している全ての家臣が揃っている。
「何でみんなで集まっているのです?」
「お前がユベールさまを殺しかけたからだ!!」
「え……ま、まさか、本当にカイトゥスの?」
「だからそうだと言っているだろうが!! この愚か者! お前はレンヌを滅ぼすつもりか!!!」
アラン王は腹から声を張り上げて怒り狂っている。
ようやく話が通じたのだ。
ここまで話が通じないバカなのかと、怒りと無念さが入り混じった想いをしている。
「あ、ああ、あああ……そ、そんな! し、知らなかったのです!」
「知らないで済むわけがないだろう!!」
「そ、そうだ! シャルリーヌです! あの女に、だ、騙されたのです!!」
先ほどは『真実の愛』とか言ったその口で、今度は彼女を差し出す気でいる。
そんなジュリアンの節操の無さは、アラン王の怒りに火を注いだ。
「お前! 先ほどはシャルリーヌを、きちんとした相手だと言っておきながら売り渡す気か!! それでも王太子か! この国の王子として恥ずかしくないのか!!」
怒鳴りつかれたアラン王は、ふらふらとした足取りで玉座に倒れ込むようにして座った。
「王太子殿下。ユベールさまは殿下の首を所望されております」
宰相のオーギュストが、アラン王に代わってジュリアンへの追撃をはじめた。
今回の件でオーギュストも、カイトゥスとレンヌの友好維持に奔走している。このバカ王子に文句の一つも言いたいのだろう。
「そ、そそそそ、そそんな! 俺はまだ17歳だぞ! あんまりだ! オ、オーギュスト!! た、たた助けて! あのクソ虫に頼んでくれ!!」
顔中から汁を垂らして汚い事、この上ない。神にでも祈るような格好で宰相オーギュストに縋りついているが、宰相は涼しい顔をしてジュリアンを見下ろしている。普段ならこんな態度をする家臣を、王太子は絶対に許さないだろう
「王太子殿下はこう申されてますが、どうされますか? ユベールさま」
この発言を聞いた瞬間のジュリアンの顔は見物だった。
まさか、この場にユベールが居るなど、想定してなかったのだろう。
「相変わらず、クソ虫呼ばわりですか? 貴方は死にたいのですね」
何とも愉快そうな顔をしたユベールが現れた。
居並ぶ家臣たちの一人に紛れて、ユベールはアラン王と、ジュリアンのやり取りを最初から聞いていたのだ。
「あびゃああああああ!!! ゆべ、ゆへーる! ゆへえる!!」
予想外の不意打ちに相当驚いている。
顔中だけでなく、身体中から液体を撒き散らして失禁してまった。
ド派手な王太子の衣装が小便でビッタビタになっている。
「はは、お漏らしするなんて情けないですね」
ユベールは口に手を当てて、さぞかし可笑しそうにしている。
さて、ジュリアン。
キミをどうしてあげよう?
簡単にトドメは刺しませんよ。
王太子殿下?
*****
効果音は『ぶしゃー!』です(´ー+`)
*****
理由は当然、ユベールを殺しかけた事でだ。
だが、その理由を述べて、ユベールが大国の皇子だと言っても、ジュリアンは何故、叱責されるのかと不思議そうな顔をしている。
それには理由がある。
"まず王太子ジュリアンはアホである"
学園では座学も実技も申し分なく、優れた成績を修めているが、基本的にはアホである。
基本的な範囲でしかまともに対応できず、取り巻きに判断を委ねるというか、吹き込まれて利用されるようなアホである。
「お前はシリオラ姫との婚約まで勝手に反故にして、今度はユベールさまを……!」
アラン王の額の青筋は、今にも破裂しそうに怒張している。ジュリアンを思う存分に、殴り倒してやりたい衝動と必死に戦っているのだ。
「お言葉ですが父上、シリオラはとんでもない悪女です。シャルリーヌがそう言ってました!」
ジュリアンには隣国の第1王女との結婚の約束があった。
その第1王女シリオラは容姿こそ平凡だが、優しさと慈愛に満ち溢れ、その寛容さはどんな深い海よりも深く、恋人や夫を立てるデキル女である。
加えて父王や家族、家臣から国民にまで慕われるほとんど完璧な女性なのだ。
ジュリアンのほうから一方的に婚約破棄をしているが、シリオラにとってはそれこそ幸せな事だ。アホな夫を持たなくて済んだのだから。
大方、シャルリーヌに何か吹き込まれたのだろう。
もしくはシャルリーヌの美貌に釣られたのか。
「確証はあるのか!!」
「いいえ、ありませんが。シャルリーヌとは真実の愛を結びました!! もう離れる事などできません! できないのです!!!」
言い切って清々しい顔をしている。
その様子を父王は怒りの形相で睨みつけ、宰相を始めとした家臣たちからは冷ややかな視線を浴びているのだが。
まるで悲恋な物語の主人公のように振舞っている。
「お前という奴は……」
アラン王は額に手を当ててため息をついた。
「父上? お疲れですか?」
「お前のせいでこうなっているのだぞ!!」
「はあ? 何故ですか?」
そしてもう一つの理由だ。
こちらについてはアラン王にも問題がある。
ジュリアンに全ての非があるとは言えないが、アラン王はジュリアンが最初の子供でかつ、学業優秀、魔法の才能も十二分、加えて容姿も優れている。王子としてこの上のない条件を備えるジュリアンを甘やかしたのだ。
それがジュリアンの増長を招いている。
自分を愛する父が、自分を害する事などしない。
ジュリアンはそう思っているから、父王の話をまともに聞いていないし、話の本質も理解していない。
「ユベールさまは、カイトゥスの皇子だと言っているだろうが!!」
「はあ? あのクソ虫がですか? 何の冗談ですか」
「冗談を言うために、家臣を全員集めるわけがないだろう!!」
ジュリアンは今更になって謁見の間を、ぐるりと見渡した。
確かに王の言うように、武官から文官までズラリと居並んでいる。
現在、王都に滞在している全ての家臣が揃っている。
「何でみんなで集まっているのです?」
「お前がユベールさまを殺しかけたからだ!!」
「え……ま、まさか、本当にカイトゥスの?」
「だからそうだと言っているだろうが!! この愚か者! お前はレンヌを滅ぼすつもりか!!!」
アラン王は腹から声を張り上げて怒り狂っている。
ようやく話が通じたのだ。
ここまで話が通じないバカなのかと、怒りと無念さが入り混じった想いをしている。
「あ、ああ、あああ……そ、そんな! し、知らなかったのです!」
「知らないで済むわけがないだろう!!」
「そ、そうだ! シャルリーヌです! あの女に、だ、騙されたのです!!」
先ほどは『真実の愛』とか言ったその口で、今度は彼女を差し出す気でいる。
そんなジュリアンの節操の無さは、アラン王の怒りに火を注いだ。
「お前! 先ほどはシャルリーヌを、きちんとした相手だと言っておきながら売り渡す気か!! それでも王太子か! この国の王子として恥ずかしくないのか!!」
怒鳴りつかれたアラン王は、ふらふらとした足取りで玉座に倒れ込むようにして座った。
「王太子殿下。ユベールさまは殿下の首を所望されております」
宰相のオーギュストが、アラン王に代わってジュリアンへの追撃をはじめた。
今回の件でオーギュストも、カイトゥスとレンヌの友好維持に奔走している。このバカ王子に文句の一つも言いたいのだろう。
「そ、そそそそ、そそんな! 俺はまだ17歳だぞ! あんまりだ! オ、オーギュスト!! た、たた助けて! あのクソ虫に頼んでくれ!!」
顔中から汁を垂らして汚い事、この上ない。神にでも祈るような格好で宰相オーギュストに縋りついているが、宰相は涼しい顔をしてジュリアンを見下ろしている。普段ならこんな態度をする家臣を、王太子は絶対に許さないだろう
「王太子殿下はこう申されてますが、どうされますか? ユベールさま」
この発言を聞いた瞬間のジュリアンの顔は見物だった。
まさか、この場にユベールが居るなど、想定してなかったのだろう。
「相変わらず、クソ虫呼ばわりですか? 貴方は死にたいのですね」
何とも愉快そうな顔をしたユベールが現れた。
居並ぶ家臣たちの一人に紛れて、ユベールはアラン王と、ジュリアンのやり取りを最初から聞いていたのだ。
「あびゃああああああ!!! ゆべ、ゆへーる! ゆへえる!!」
予想外の不意打ちに相当驚いている。
顔中だけでなく、身体中から液体を撒き散らして失禁してまった。
ド派手な王太子の衣装が小便でビッタビタになっている。
「はは、お漏らしするなんて情けないですね」
ユベールは口に手を当てて、さぞかし可笑しそうにしている。
さて、ジュリアン。
キミをどうしてあげよう?
簡単にトドメは刺しませんよ。
王太子殿下?
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