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三
第三十話
しおりを挟む「わぁ、綺麗だねぇ」
初日はゆっくりと堂々たるその姿を誇示するように、次第に赤みを増していく。
去年のことを顧みればまた様々な出来事が起こったなと、しみじみ考えた。そこに、自分がしてあげられたことは、何もないのが悔やまれる。
ただ隣にいる息子の「うん」と相槌を打つその仕草は、とても清々しかった。
初めて反抗的な態度を見せたあの冬。
驚き委縮もしたが、嬉しくもあったのだ。それは、無口でいられるより、何倍も増しであるから。この子の素直な心がぶつけられている。母としては喜ぶべきと、受け止めた。
その後学校へ再訪すると、来てないと聞かされた時には頭が真っ白になった。どうして連絡してくれないのかと苛立ったが、怒るだけ無駄だと諦めた。
次にあの担任と話したのは、最近の騒動の最中。
「瑞樹君は、いじめを受けたなどとは一言も言ってないですから」
と告げられた。
つくづくだなと落胆するも、その目は少し動揺していたようだった。
夏、突然バイトをすると報告された時には、仰天した。飛び上がるほど嬉しかったが、反面不安でこっそり覗きに行っていた。
「いらっしゃいませ!」
と元気な声を張り上げる姿が目に飛び込むと、涙が頬を伝った。
親ばかだろうと情けないが、あの笑顔に、昔の我が子が投影されたのだ。
このままどうかどうか順調に、引き続きあの子をお守りください、と何度手を合わせたことか知れない。だが願い事などただの自己満足に過ぎないと気落ちする出来事に、また悩まされた。
そして今、輝く様なこの表情を見ると、ただの取り越し苦労、自分は必要ないのではないかとさえ思わされる。
子供は立ちはだかる試練を自分自身で乗り越えていくもの。そこに出来ることは何もなく、唯一あるならそれは、寄り添うこと。
熟練した看護師でありながら、我が子のことになると全くの素人同然で、そこから学ぶことは計り知れない。
これも父が守ってくれているからなのかと、また神秘的な力に気持ちを委ねてしまう。
『きっと大丈夫』
赤みが存分に辺りを包むと、白色の閃光がすっと天に突き抜けた。
傍らではその景色に携帯を向ける姿が。自ら写真を撮るなどこれまでに一度もなかった子。
「うまく、撮れた?」
「うん」
満足気にそれを見つめる息子はそして、こう言った。
「友達に、見せてあげるんだ」
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