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覚醒
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「どうだ?奴の攻撃は止められそうか? 」
金川さんが、苦しそうに顔を歪ませながら、使えなくなった右手を抑えている。
「いいえ、絶対に止めるんです。」
とは、いったものの、彼には、攻防・遠近、すべてにおいて、隙が無い。
彼がまだ、『普通の』魔法使いであった時なら、やりようがいくらでもあった、こちらから近づかなければ、いくらでもやりようが、あったのだから。
私たちが、バックステップで距離をとると、予想通り絶対物質による、遠距離攻撃が飛んでくる。
金色の双竜が、ウネリ、交錯し電波塔の柱を食らいながら、こちらも捕食せんという勢いで、私たちに襲い掛かる。
「金川さん、彼の攻撃は見えないんですか? 」
「あいにくな。俺の専門は、自然界に存在する物質だけだ。そもそも、この世界で、自然界以外の物質が存在すること自体がおかしいんだよ。」
そうだ。だからこそ『魔法』。彼の体に宿る二つの魔法は、そもそも科学的に証明することなんてできっこない。
魔法に適応するにはそうしたらよいか。
私は目をつむり考える。
北条さんの猛撃をかわしながら。
そして、私は祖父の言葉を思い出した。
「ねえ、なんで本堂おじいちゃんは大兄弟助を止めることが、できたの? 」
おじいちゃんは少し考えてから、こう答えた。
「私にもわからん。でも一つ確信できることは、左遷された異世界で、なんども、美奈皇后の時戻りの魔法を見せてもらっていたからかもしれないね。」
おじいちゃんはつづける。
「美奈皇后はとてもやさしい方だった。病弱だった子供のことで、直訴にきた父親の話を小耳にいれると、夜中こっそり、お宮を抜け出すと、そのものの家に、赴いては、秋に夜桜を咲かせ。」
「『死ぬ前に、飼っていた犬にもう一度会いたい。』と嘆いていた老人のことを小耳に入れなさると、老人の家にお邪魔なさっては、犬を降霊させて、おみおくりさせたり。」
「お転婆なお姫様。」
「まったくだ、昼はデクの棒の教育係、夜は皇后さまの護衛ときた、寝る暇なんてなかったよ。」
「そしてだね、ある時、#視える__・ようになったんだよ。魔法の本質が。」
「ん?どうした?倫? 」
「私にもできるようになるかな? 」
おじいちゃんは笑顔で顔を傾けた。
「ああ、倫なら必ずできるようになる。だってキミは私の孫なのだから。」
「金川さん。三十秒だけ時間を頂戴。」
「じょおおだんじゃねぇ。」
彼は、北条さんの拳を無我夢中で避けながら、半ば悲鳴に近い声をあげた。
「北条さんは削らなくていい。逃げるだけでいいから。」
「今の状況で、それができる風に見えるのかよ。」
「あなたも魔法使いでしょ。根性見せて。」
「くそがっ。どうにかしろよ。馬鹿野郎。」
<左に十センチ、後ろに五ミリ。>
万城さんだ。
「おまえ、メガネは。」
「錬華は自分の心配だけをして。」
そうしている間にも、熱を帯びたアギトが、金川さんの耳を食いちぎる。
「ちっ。再生がおせえ。これも真魔法の力かよ。」
私は北条さんの#魔法を視る__・_ことに専念した。
いつもの彼とは、まるで違う。
「全然しゃべらない。」
「そりゃあな。もともとああゆう奴だぜこいつは。鷲利場に会うまではな。」
「でもよ、今のほうが、全然いいぜ。お前らしい。北条力とは、まさにこのような人間のことをいうんだろうな。」
そんな。私は認めたくなかった。
「今の北条さんは嫌。洗脳されていて。」
「鷲利場さんのことを思い出して。」
彼は、攻撃の手を緩めると、頭を抱えた。
「そいつは、雇い主のターゲットで......俺は、彼女のことなんて知らない。」
「知っているはずです。アナタのパートナーで、仕事のバディーで。」
「許嫁なんですからあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「《エクステンド》」
【絶対領域】
世界から『色』が消える。金川さんの虹色も、万城さんの紅い瞳も、黒澄さんの灰色も、桐生さんの黄色い閃光も、光明の橙色の炎も、そして、北条さんの二つの淡い蒼色の光も大麻に掛けられていた洗脳も。
「ちっ。厄介な真似を。」
彼は再び、催眠をかけようとする。
「無駄ですよ。この絶対領域の中では、いかなる能力も発動できません。」
「たとえそれが、魔法だとしても......ね。」
桐生さんが、むっくと起き上がり、後頭部を撫でる。
「それをやるなら事前に言ってくれよな。トラウマなんだよ。それ。」
「ふーんそれは、いいことをききました。」
「すまん世話をかけたみたいだな。」
北条さんはムクッと立ち上がる。
「絶対領域の魔法ジャミングか......やっぱりとんでもないやつだよ。倫は。」
北条さんは向き返り、倒れている鷲利場さんの元に向かった。
「おい。俺になんかいうことあるんじゃないか。」
「そういう仲でもないだろ。俺たちはjkじゃなくて、ライバルなんだからよ。」
「ちっ。食えないやつ。」
私は困惑した。とどめは、北条さんがしてくれると思ったから。
「あの私は。」
「奴は無能力者同然だよ。それに脱獄して間もないわけだから、体力も倫の方が上。」
「馬鹿にしないでください。私も本堂家の人間として、日々、鍛錬を重ねているんですから。」
「これからは、もっと鍛えないとな。そうすれば、倫は守を超えられる。」
そういって、彼は、後ろ向きで手をふった。
「薄情とは思うなよ。俺はまた彼女を裏切った。せめて、再投獄の時間まで、彼女のそばにいてやりたいんだ。」
私は、ゆっくり、彼に恐怖をあたえられるように。尻もちをついた、目の前の、クズ野郎に迫りよる。
「まて、ほら、本堂さんとこの孫娘だろ。君の祖父とは仲がいいんde₋₋₋」
彼の頬を殴りとばす。
一発じゃたりない。
だけど、時間もたりない。
私の仕事は、ビック・ファーザーを止めること。
私は立ち上がり、制御室を目指した。
金川さんが、苦しそうに顔を歪ませながら、使えなくなった右手を抑えている。
「いいえ、絶対に止めるんです。」
とは、いったものの、彼には、攻防・遠近、すべてにおいて、隙が無い。
彼がまだ、『普通の』魔法使いであった時なら、やりようがいくらでもあった、こちらから近づかなければ、いくらでもやりようが、あったのだから。
私たちが、バックステップで距離をとると、予想通り絶対物質による、遠距離攻撃が飛んでくる。
金色の双竜が、ウネリ、交錯し電波塔の柱を食らいながら、こちらも捕食せんという勢いで、私たちに襲い掛かる。
「金川さん、彼の攻撃は見えないんですか? 」
「あいにくな。俺の専門は、自然界に存在する物質だけだ。そもそも、この世界で、自然界以外の物質が存在すること自体がおかしいんだよ。」
そうだ。だからこそ『魔法』。彼の体に宿る二つの魔法は、そもそも科学的に証明することなんてできっこない。
魔法に適応するにはそうしたらよいか。
私は目をつむり考える。
北条さんの猛撃をかわしながら。
そして、私は祖父の言葉を思い出した。
「ねえ、なんで本堂おじいちゃんは大兄弟助を止めることが、できたの? 」
おじいちゃんは少し考えてから、こう答えた。
「私にもわからん。でも一つ確信できることは、左遷された異世界で、なんども、美奈皇后の時戻りの魔法を見せてもらっていたからかもしれないね。」
おじいちゃんはつづける。
「美奈皇后はとてもやさしい方だった。病弱だった子供のことで、直訴にきた父親の話を小耳にいれると、夜中こっそり、お宮を抜け出すと、そのものの家に、赴いては、秋に夜桜を咲かせ。」
「『死ぬ前に、飼っていた犬にもう一度会いたい。』と嘆いていた老人のことを小耳に入れなさると、老人の家にお邪魔なさっては、犬を降霊させて、おみおくりさせたり。」
「お転婆なお姫様。」
「まったくだ、昼はデクの棒の教育係、夜は皇后さまの護衛ときた、寝る暇なんてなかったよ。」
「そしてだね、ある時、#視える__・ようになったんだよ。魔法の本質が。」
「ん?どうした?倫? 」
「私にもできるようになるかな? 」
おじいちゃんは笑顔で顔を傾けた。
「ああ、倫なら必ずできるようになる。だってキミは私の孫なのだから。」
「金川さん。三十秒だけ時間を頂戴。」
「じょおおだんじゃねぇ。」
彼は、北条さんの拳を無我夢中で避けながら、半ば悲鳴に近い声をあげた。
「北条さんは削らなくていい。逃げるだけでいいから。」
「今の状況で、それができる風に見えるのかよ。」
「あなたも魔法使いでしょ。根性見せて。」
「くそがっ。どうにかしろよ。馬鹿野郎。」
<左に十センチ、後ろに五ミリ。>
万城さんだ。
「おまえ、メガネは。」
「錬華は自分の心配だけをして。」
そうしている間にも、熱を帯びたアギトが、金川さんの耳を食いちぎる。
「ちっ。再生がおせえ。これも真魔法の力かよ。」
私は北条さんの#魔法を視る__・_ことに専念した。
いつもの彼とは、まるで違う。
「全然しゃべらない。」
「そりゃあな。もともとああゆう奴だぜこいつは。鷲利場に会うまではな。」
「でもよ、今のほうが、全然いいぜ。お前らしい。北条力とは、まさにこのような人間のことをいうんだろうな。」
そんな。私は認めたくなかった。
「今の北条さんは嫌。洗脳されていて。」
「鷲利場さんのことを思い出して。」
彼は、攻撃の手を緩めると、頭を抱えた。
「そいつは、雇い主のターゲットで......俺は、彼女のことなんて知らない。」
「知っているはずです。アナタのパートナーで、仕事のバディーで。」
「許嫁なんですからあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
「《エクステンド》」
【絶対領域】
世界から『色』が消える。金川さんの虹色も、万城さんの紅い瞳も、黒澄さんの灰色も、桐生さんの黄色い閃光も、光明の橙色の炎も、そして、北条さんの二つの淡い蒼色の光も大麻に掛けられていた洗脳も。
「ちっ。厄介な真似を。」
彼は再び、催眠をかけようとする。
「無駄ですよ。この絶対領域の中では、いかなる能力も発動できません。」
「たとえそれが、魔法だとしても......ね。」
桐生さんが、むっくと起き上がり、後頭部を撫でる。
「それをやるなら事前に言ってくれよな。トラウマなんだよ。それ。」
「ふーんそれは、いいことをききました。」
「すまん世話をかけたみたいだな。」
北条さんはムクッと立ち上がる。
「絶対領域の魔法ジャミングか......やっぱりとんでもないやつだよ。倫は。」
北条さんは向き返り、倒れている鷲利場さんの元に向かった。
「おい。俺になんかいうことあるんじゃないか。」
「そういう仲でもないだろ。俺たちはjkじゃなくて、ライバルなんだからよ。」
「ちっ。食えないやつ。」
私は困惑した。とどめは、北条さんがしてくれると思ったから。
「あの私は。」
「奴は無能力者同然だよ。それに脱獄して間もないわけだから、体力も倫の方が上。」
「馬鹿にしないでください。私も本堂家の人間として、日々、鍛錬を重ねているんですから。」
「これからは、もっと鍛えないとな。そうすれば、倫は守を超えられる。」
そういって、彼は、後ろ向きで手をふった。
「薄情とは思うなよ。俺はまた彼女を裏切った。せめて、再投獄の時間まで、彼女のそばにいてやりたいんだ。」
私は、ゆっくり、彼に恐怖をあたえられるように。尻もちをついた、目の前の、クズ野郎に迫りよる。
「まて、ほら、本堂さんとこの孫娘だろ。君の祖父とは仲がいいんde₋₋₋」
彼の頬を殴りとばす。
一発じゃたりない。
だけど、時間もたりない。
私の仕事は、ビック・ファーザーを止めること。
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