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ファイル:3 優生思想のマッドサイエンティスト
能力者たち
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俺たちは、六条で桐生慎二に会った後、昼食をとり、極東の住民たちに聞き込み調査を行っていた。
「もうこんな時間だ。」
カーミラは手元のアナログ時計を見ながら、そう答えた。
カーミラの言葉で、腹が空いていることに気づき、腹がグーっとなる。
「北条は食いしん坊さんだね。またご飯食べに行こう。何を食べようか? 」
腹が減るのは当然だ。この男とは消費カロリーが違いすぎる。
「麺類はもう飽きたかな? この世界にも米が? 」
「うん、勿論だよ。極東は米所だからね。雨が多くて、夏期がある場所じゃ無いと、お米は育たないんだ。」
普段平等社会で飯を食う時は、そんなことを考えてもいなかった。
おそらく、俺だけではなく、平等社会人の殆どがそうだろう。
AIが自動で食糧を生産し、加工、運搬して、ショッピングモールまで運んでいるのだから。
「牛飯が良いかもね。美味しいよ牛飯。」
また聞いたことのない料理だ。
俺は心が弾んだ。
カーミラが紹介してくれる蕎麦屋は絶品だったからだ。
次はどんな美味に出会えるのかと思い、また腹の虫が鳴る。
数分歩いた先に暖簾を垂らしたストリートレストランがある。
カーミラがソレをくぐるので、俺もそれを真似た。
蕎麦屋と同じだ。
カウンター席というらしい。
平等社会にも、接客業がない訳では無いが、このカウンター席というものは、店員と、俺たちとの距離が近く、どこか安心できるものがある。
おじさん、牛飯二つちょうだい。
「お、カーミラ陛下じゃあないか。どうした?桐生にでも会いにきたのか? 」
陛下という敬称がどのようなものかは分からないが、彼が常連だということには変わりないのだろう。
「うん、彼が借りた本を返してくれなくてね。グランディルから飛んできたわけだよ。」
「そりゃまたアイツらしいな。」
「へいおまち。」
俺たちに二つの大きなお椀が差し出される。
牛飯?
お椀によそられた米の上に、牛肉が乗っている。
「「いただきます。」」
箸で一口口に運ぶ。
「美味い。」
不思議と言葉がこぼれていた。
「アッシは美味いものしか出さねえよ。それが職人の誇りって奴だからな。」
俺は無言で牛飯を突いていた。
しまいにはお椀を持ち上げると、米を箸でかきこむ。
「ところでおじさん? 最近、ここらで変わったことはないかな? 例えば、平等社会人が異様に増えたとか? 」
おじさんは、少し考え込んでいた。
「そうだな。平等社会人が増えた。そりゃそうだよ。観光客は日々増えるばかりだ。」
「その分、文化の違いからの衝突は起こるし、治安は良くなっているとは言えねえ。」
「それだけ? 」
「なぁ陛下よ。こっちの世界に定住するとしたら、まず何が必要だと思う? 」
カーミラは少し考え込んでから答えた。
「極東通貨? 」
「それもある。平等社会のデジタル通貨に対応している店はそう多くない。俺の店でも検討中だ。だから平等社会人は普通、出島で、通貨のトレードを行うんだよ。」
おい、カーミラ!! そんなことを聞いていないぞ。
「あはは、そうだったんだ。知らなかった。」
おじさんは続ける。
「だが、定住には、それよりも必要なものがある。分からないか? 」
「住む場所。」
俺はこう答えた。
「正解だ。『場所』さえあれば良い。あとは自分で拵えるなり、なんなりすれば良いからな。」
「ここ最近、極東で新しい集合住宅ができたとかそういう話は聞かないなぁ。」
「もしかしたら、辺境の地とか、山奥で生活をしているのかも知れないが。」
「それも現実的ではないな。」
「ほう、坊主、それはなぜだ? 」
俺は続けた。
「AIに生活の全てを任せた平等社会人が、原始的な生活を営めるはずが無い。」
彼らは火の起こし方すら知らないのだ。俺だってそう。
オマケに、山奥で能力やらを使用すれば、極東に感知されて取り締まられる。
リベリオンがあんな事件を起こしたのだから。
「なるほど。」
カーミラは頷いた。
「おじさんありがとう。ご馳走様。」
それから席を立つ。
俺も後に続いた。
「カーミラ陛下。気をつけろよ。またお前、危ない事件に首を突っ込んでいるんだろう? 」
「ありがとうおじさん。でもこれが、僕の責務だから。」
俺はカーミラの後を追った。
「もう良いのか? 」
「うん。おそらく極東に密入国者はいないんだ。よく考えてみればそう。わざわざ、お上の目が光っている極東に住む必要なんてないんだよ。」
「あてはあるのか? 」
「うん。グランディルでもセルでも極東でもないとするのなら……メリゴかウボクの国辺りだと思う。それにカタルゴ大陸の線も捨て切れないな。」
「あそこら辺は土地が大きいから、人々を監視するのも難しい。おそらく、そこに、改造を手引きしている人間も…… 」
「どこに行くんだ? 」
「鉄道に乗ろう北条。まずはウボクの国から調査するんだよ。」
「もうこんな時間だ。」
カーミラは手元のアナログ時計を見ながら、そう答えた。
カーミラの言葉で、腹が空いていることに気づき、腹がグーっとなる。
「北条は食いしん坊さんだね。またご飯食べに行こう。何を食べようか? 」
腹が減るのは当然だ。この男とは消費カロリーが違いすぎる。
「麺類はもう飽きたかな? この世界にも米が? 」
「うん、勿論だよ。極東は米所だからね。雨が多くて、夏期がある場所じゃ無いと、お米は育たないんだ。」
普段平等社会で飯を食う時は、そんなことを考えてもいなかった。
おそらく、俺だけではなく、平等社会人の殆どがそうだろう。
AIが自動で食糧を生産し、加工、運搬して、ショッピングモールまで運んでいるのだから。
「牛飯が良いかもね。美味しいよ牛飯。」
また聞いたことのない料理だ。
俺は心が弾んだ。
カーミラが紹介してくれる蕎麦屋は絶品だったからだ。
次はどんな美味に出会えるのかと思い、また腹の虫が鳴る。
数分歩いた先に暖簾を垂らしたストリートレストランがある。
カーミラがソレをくぐるので、俺もそれを真似た。
蕎麦屋と同じだ。
カウンター席というらしい。
平等社会にも、接客業がない訳では無いが、このカウンター席というものは、店員と、俺たちとの距離が近く、どこか安心できるものがある。
おじさん、牛飯二つちょうだい。
「お、カーミラ陛下じゃあないか。どうした?桐生にでも会いにきたのか? 」
陛下という敬称がどのようなものかは分からないが、彼が常連だということには変わりないのだろう。
「うん、彼が借りた本を返してくれなくてね。グランディルから飛んできたわけだよ。」
「そりゃまたアイツらしいな。」
「へいおまち。」
俺たちに二つの大きなお椀が差し出される。
牛飯?
お椀によそられた米の上に、牛肉が乗っている。
「「いただきます。」」
箸で一口口に運ぶ。
「美味い。」
不思議と言葉がこぼれていた。
「アッシは美味いものしか出さねえよ。それが職人の誇りって奴だからな。」
俺は無言で牛飯を突いていた。
しまいにはお椀を持ち上げると、米を箸でかきこむ。
「ところでおじさん? 最近、ここらで変わったことはないかな? 例えば、平等社会人が異様に増えたとか? 」
おじさんは、少し考え込んでいた。
「そうだな。平等社会人が増えた。そりゃそうだよ。観光客は日々増えるばかりだ。」
「その分、文化の違いからの衝突は起こるし、治安は良くなっているとは言えねえ。」
「それだけ? 」
「なぁ陛下よ。こっちの世界に定住するとしたら、まず何が必要だと思う? 」
カーミラは少し考え込んでから答えた。
「極東通貨? 」
「それもある。平等社会のデジタル通貨に対応している店はそう多くない。俺の店でも検討中だ。だから平等社会人は普通、出島で、通貨のトレードを行うんだよ。」
おい、カーミラ!! そんなことを聞いていないぞ。
「あはは、そうだったんだ。知らなかった。」
おじさんは続ける。
「だが、定住には、それよりも必要なものがある。分からないか? 」
「住む場所。」
俺はこう答えた。
「正解だ。『場所』さえあれば良い。あとは自分で拵えるなり、なんなりすれば良いからな。」
「ここ最近、極東で新しい集合住宅ができたとかそういう話は聞かないなぁ。」
「もしかしたら、辺境の地とか、山奥で生活をしているのかも知れないが。」
「それも現実的ではないな。」
「ほう、坊主、それはなぜだ? 」
俺は続けた。
「AIに生活の全てを任せた平等社会人が、原始的な生活を営めるはずが無い。」
彼らは火の起こし方すら知らないのだ。俺だってそう。
オマケに、山奥で能力やらを使用すれば、極東に感知されて取り締まられる。
リベリオンがあんな事件を起こしたのだから。
「なるほど。」
カーミラは頷いた。
「おじさんありがとう。ご馳走様。」
それから席を立つ。
俺も後に続いた。
「カーミラ陛下。気をつけろよ。またお前、危ない事件に首を突っ込んでいるんだろう? 」
「ありがとうおじさん。でもこれが、僕の責務だから。」
俺はカーミラの後を追った。
「もう良いのか? 」
「うん。おそらく極東に密入国者はいないんだ。よく考えてみればそう。わざわざ、お上の目が光っている極東に住む必要なんてないんだよ。」
「あてはあるのか? 」
「うん。グランディルでもセルでも極東でもないとするのなら……メリゴかウボクの国辺りだと思う。それにカタルゴ大陸の線も捨て切れないな。」
「あそこら辺は土地が大きいから、人々を監視するのも難しい。おそらく、そこに、改造を手引きしている人間も…… 」
「どこに行くんだ? 」
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