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ファイル:1 リべレイター・リベリオン
奇襲
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翌日、俺たちは化学工場跡に集まった。
俺たちがついた頃には、既に公安の人間、能力者狩りのフリーランス、バウンティーハンターなどが集まっていた。
「よお。新入り、遅いぞ。」
犯罪課の上司が俺の背中をポンポンと叩く。
「新入りじゃなくて、北条っス。」
「よお、ちゃんと起きれたか? 」
「はい。」
「私が起こすまで寝てたでしょうが。」
と鵞利場。
というのにも語弊がある。
俺はちゃんと一時間前に手錠のアラームをセットしていたのに、鵞利場がその一時間前、つまり二時間前に突然モーニングコールをしてきたのだ。
どうやら朝飯を作るのを手伝うということらしかった。
俺はというと、彼女の踏み台を動かしたり、材料や器具を出し入れしただけであったが。
「「ハハハハハ。」」
和やかな笑いが起こる。
気がつけば俺も笑っていた。
俺は気を引き締め直すために、犯罪課の上司に質問した。
「異世界人はまだ来られないのですか? 」
彼も真剣な眼差しで俺を見る。
「ああ、まだみたいだな。そういやお前は長官と行動を共にしてたから、異世界人を見たんだってな。」
俺は無言でゆっくりと頷いた。
「はい。一度だけ、あっちの世界で。」
「奴らは、その、どんな感じだったんだ。」
異世界という存在に、彼の理解が追いついていないせいか、質問が抽象的になっている。
俺はその問いに対して抽象的に答えた。
「奴らは武器を持った野蛮な奴らです。」
「そして…… 手錠は無く、なんの制約も無く能力を使っていました。」
上司が俺の顔を覗き込む。
「どうした? 顔色が悪いぞ。」
この感情は彼らに対する畏敬の念からでは無い、自分を欺いていることに対する恐怖だ。
「なるほどなぁ…… 」
「誤魔化せた」というよりは、相手が誤った認識をしたということの方が正しい。
ひとまず、その場を凌ぐことができた。
___不意に甲高い悲鳴が上がった。
気がつけば、業務用の宅配アンドロイドが、人々を襲っているでは無いか。
俺の手錠が音もなく外れる。
鵞利場では無い。
[迂闊だった。すまない北条くん。]
長官との通信が繋がる。
「どうなっていやがる。業務用のアンドロイドが人を襲っているぞ。」
[奴らは確かに正規のアンドロイドだ。だから、この突発的な状況に対処出来なかった。それにメインプログラムには、なんの異常もない。それもおかしな話だ。]
「じゃあ奴らはなぜ人を襲っている? 人を襲えないようにプログラムされているんだろ? 」
[こちらからの映像じゃ、よくわからない。すまない。]
「なら、俺に任せてください。」
俺は彼らの前まで接近すると、襲われている人間たちを、アンドロイドから引き剥がし、両手でガッチリ捉えた。
刹那、機体の温度が上がり始めていることを確認した俺は、跳躍し、空中でアンドロイドの爆風を受け止める。
幸い、被害を最小限に抑えることが出来た。
しかし、それは人々の恐怖を煽り、さらなる混乱を招く。
爆発の間際、アンドロイドの背中から、光るケーブルらしき何かが離れていっているのを俺は見逃さなかった。
「有線だと? 」
道理でレーダーにも映らないわけだ。
もちろんメインプログラムにも異常は見当たらないはず。
「クソっ。」
鵞利場がアンドロイドと善戦している最中に、バウンティーハンターたちが、それとの戦闘に苦戦していた。
俺は慌てて彼らの元に戻ると、アンドロイドに飛び乗る。
「【伍ノ岩】」
【ロンドン橋堕ちた】
頭をかち割り、そのまま飛び乗ると、全身で爆風を受け止める。
「長官、有線接続の遠隔操作なら、理論上、どれほどの細さまでなら、信号を無理矢理書き換えられる? 」
[そうか、その手が。コードなんて理論上どこまで細くても可能だよ。ただ信号さえ送れれば良い。]
「鵞利場。背中を狙え。」
彼女は無言でアンドロイドの背中に回り込むと、回し蹴りを放った。
光る糸のようなものが、業務用のアンドロイドから引き剥がされ、暴走が止まった。
だが俺は疾走すると、その糸を追いかけた。
犯人へと続く、その糸口を。
ビルの壁に飛び移り、壁を走り出すと、屋上で跳躍し、今度は摩天楼の谷へと飛び降りると、深淵深くまで落ちていき、ダクトをかわしながら、薄暗い地面に着地する。
走りながら室外機を踏み台に跳躍。
糸をつかみ損ねて、地面に転がる。
すぐに立ち上がると、突き当たりを右に曲がったそれを追いかけた。
しかし、角を曲がったところで。
[警告:逃亡は重罪です。]
手錠に再びロックがかかる。
「クソっ。」
糸も見失ってしまった。
「長官!! 」
[冷静になりたまえ、君は明らかに敵の罠にハマっていた。おびき出されているんだよ。]
「なら罠ごと噛み砕くまでです。俺のこの能力なら。」
[君の任務は来賓の護衛。敵を深追いすることではないだろう? ]
「……分かりました。戻ります。」
襲撃者の目的はなんなんだ? 私怨? それとも異世界人との交流を良しとしない人間の仕業か?
なぜ? 俺たちが消耗すれば、平等社会の命運だって危なくなるはずなのに。
[こちらは私が調査をしておく。君は護衛と、明日の戦いに向けて備えて置いてくれ。]
俺は化学工場へと戻り始めた。
俺たちがついた頃には、既に公安の人間、能力者狩りのフリーランス、バウンティーハンターなどが集まっていた。
「よお。新入り、遅いぞ。」
犯罪課の上司が俺の背中をポンポンと叩く。
「新入りじゃなくて、北条っス。」
「よお、ちゃんと起きれたか? 」
「はい。」
「私が起こすまで寝てたでしょうが。」
と鵞利場。
というのにも語弊がある。
俺はちゃんと一時間前に手錠のアラームをセットしていたのに、鵞利場がその一時間前、つまり二時間前に突然モーニングコールをしてきたのだ。
どうやら朝飯を作るのを手伝うということらしかった。
俺はというと、彼女の踏み台を動かしたり、材料や器具を出し入れしただけであったが。
「「ハハハハハ。」」
和やかな笑いが起こる。
気がつけば俺も笑っていた。
俺は気を引き締め直すために、犯罪課の上司に質問した。
「異世界人はまだ来られないのですか? 」
彼も真剣な眼差しで俺を見る。
「ああ、まだみたいだな。そういやお前は長官と行動を共にしてたから、異世界人を見たんだってな。」
俺は無言でゆっくりと頷いた。
「はい。一度だけ、あっちの世界で。」
「奴らは、その、どんな感じだったんだ。」
異世界という存在に、彼の理解が追いついていないせいか、質問が抽象的になっている。
俺はその問いに対して抽象的に答えた。
「奴らは武器を持った野蛮な奴らです。」
「そして…… 手錠は無く、なんの制約も無く能力を使っていました。」
上司が俺の顔を覗き込む。
「どうした? 顔色が悪いぞ。」
この感情は彼らに対する畏敬の念からでは無い、自分を欺いていることに対する恐怖だ。
「なるほどなぁ…… 」
「誤魔化せた」というよりは、相手が誤った認識をしたということの方が正しい。
ひとまず、その場を凌ぐことができた。
___不意に甲高い悲鳴が上がった。
気がつけば、業務用の宅配アンドロイドが、人々を襲っているでは無いか。
俺の手錠が音もなく外れる。
鵞利場では無い。
[迂闊だった。すまない北条くん。]
長官との通信が繋がる。
「どうなっていやがる。業務用のアンドロイドが人を襲っているぞ。」
[奴らは確かに正規のアンドロイドだ。だから、この突発的な状況に対処出来なかった。それにメインプログラムには、なんの異常もない。それもおかしな話だ。]
「じゃあ奴らはなぜ人を襲っている? 人を襲えないようにプログラムされているんだろ? 」
[こちらからの映像じゃ、よくわからない。すまない。]
「なら、俺に任せてください。」
俺は彼らの前まで接近すると、襲われている人間たちを、アンドロイドから引き剥がし、両手でガッチリ捉えた。
刹那、機体の温度が上がり始めていることを確認した俺は、跳躍し、空中でアンドロイドの爆風を受け止める。
幸い、被害を最小限に抑えることが出来た。
しかし、それは人々の恐怖を煽り、さらなる混乱を招く。
爆発の間際、アンドロイドの背中から、光るケーブルらしき何かが離れていっているのを俺は見逃さなかった。
「有線だと? 」
道理でレーダーにも映らないわけだ。
もちろんメインプログラムにも異常は見当たらないはず。
「クソっ。」
鵞利場がアンドロイドと善戦している最中に、バウンティーハンターたちが、それとの戦闘に苦戦していた。
俺は慌てて彼らの元に戻ると、アンドロイドに飛び乗る。
「【伍ノ岩】」
【ロンドン橋堕ちた】
頭をかち割り、そのまま飛び乗ると、全身で爆風を受け止める。
「長官、有線接続の遠隔操作なら、理論上、どれほどの細さまでなら、信号を無理矢理書き換えられる? 」
[そうか、その手が。コードなんて理論上どこまで細くても可能だよ。ただ信号さえ送れれば良い。]
「鵞利場。背中を狙え。」
彼女は無言でアンドロイドの背中に回り込むと、回し蹴りを放った。
光る糸のようなものが、業務用のアンドロイドから引き剥がされ、暴走が止まった。
だが俺は疾走すると、その糸を追いかけた。
犯人へと続く、その糸口を。
ビルの壁に飛び移り、壁を走り出すと、屋上で跳躍し、今度は摩天楼の谷へと飛び降りると、深淵深くまで落ちていき、ダクトをかわしながら、薄暗い地面に着地する。
走りながら室外機を踏み台に跳躍。
糸をつかみ損ねて、地面に転がる。
すぐに立ち上がると、突き当たりを右に曲がったそれを追いかけた。
しかし、角を曲がったところで。
[警告:逃亡は重罪です。]
手錠に再びロックがかかる。
「クソっ。」
糸も見失ってしまった。
「長官!! 」
[冷静になりたまえ、君は明らかに敵の罠にハマっていた。おびき出されているんだよ。]
「なら罠ごと噛み砕くまでです。俺のこの能力なら。」
[君の任務は来賓の護衛。敵を深追いすることではないだろう? ]
「……分かりました。戻ります。」
襲撃者の目的はなんなんだ? 私怨? それとも異世界人との交流を良しとしない人間の仕業か?
なぜ? 俺たちが消耗すれば、平等社会の命運だって危なくなるはずなのに。
[こちらは私が調査をしておく。君は護衛と、明日の戦いに向けて備えて置いてくれ。]
俺は化学工場へと戻り始めた。
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