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平等な社会
風呂だ風呂
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裏路地を出て、交差点を渡り、ビルに設置された巨大なスクリーンを見る。
次元転移装置。
蝠岡蝙が異世界と共に作成したモノ。
この世界と並行して存在する世界へと飛び立つための物だ。
公安の犯罪課は、この装置を公にすることに対して、あまり肯定的では無かったらしい。
それも、全て映像課の横暴だ。
彼らは進んで情報局へと情報を流した。
これも蝠岡がいかに悪い人間か、凶悪な犯罪者であるかを民衆に知らしめるプロパガンダだ。
スクリーンでは、彼の自宅からマスコミにとって都合のいいものだけを掘り出し、彼の人格否定を行なっている。
あまり気持ちの良いモノでは無かった。
だが、この手法が使われて続けるのは、その方が民衆を惹きつけることが出来るからだ。
当事者である俺は、不思議と早足になり、銭湯へと急いだ。
早くスクリーンから逃げたい。
だが情報局から流される彼に対する中傷は、各方面から巨大スクリーンに映し出されており、俺はその恐怖から逃げることが出来ない。
銭湯に入り、他所のスクリーンと同時放映されている小型のモニターに目を背けながら、カウンターを潜った。
手錠の数値がまた減る。
暖簾をくぐり、脱衣所に入ると、服を脱いで、洗濯機に放り込む。
貴重品入れ場を見つけて、反射的に、自分の服から、闇社会で流通している硬貨を探したが…そうだ、それらは全て公安に没収されていたので、次は手錠を外そうとする。
が、甲高い警告音が鳴ったので、俺は手錠を外そうとするのをやめた。
[警告:ペナルティー1]
俺にはその意味が分からなかった。
まぁこれほどの機械であれば、水に濡れただけで壊れるようなことは無いであろう。
手首を洗えないのは、まぁこれも仕方のないことだ。
洗剤を買うと、洗濯物にふっかけ、蓋をしてめたから、洗濯・脱水・乾燥を選択する。
俺が浴槽に入ろうとすると、両手の鎖が解除される。
すると寛大なご主人様からメッセージが届いた。
[風呂入んの? 鎖だけは解除してあげるわ。体洗えないでしょ。自分の連れている執行者が臭いだなんて言われても困るし。PS:洗濯終わったらすぐに公安に直行して。他所彷徨いてたらまた腕輪閉めるから。]
昨夜のこともあってか、彼女は少しだけ俺に優しかった。
優しい?
追記で自分が改めて彼女に監視されていると知った俺は、なんとも言えない気持ちになった。
「これも、俺がやってきたことに対する報い……か。」
流石にオモテ社会と長い間関係を立っていた俺も、湯船に浸かる前に、身体を洗わなければならないという最低限のマナーも知らない訳では無い。
そういう奴は、トイレで糞を流さない奴と同じぐらいタチが悪い。
腰掛けに乗っている風呂桶を手に取ると、ひっくり返して、蛇口の下に置く。
蛇口を捻り、シャワーを浴びてから……シャンプーはどっちだったっけな。
モクモクと泡立ててから、頭を流し、ボディーソープを泡立てると、両手で身体を擦りまくった。
次はボディータオルが必要だな。
なんて考えながら、身体の泡を汲まなく流し終え、湯船に浸かる。
「今日から仕事か。」
最初の仕事はなんであろうか?
ハードワーク。
宜野座さんはそう言っていた。
ということは書類の整理とか聞き込み調査じゃなくて、もっとヤベーことなのかな。
と働いたことのない元裏社会が妄想を膨らませてみる。
湯船から出ると、脱衣所の出入り口で、凄まじい送風が起こった。
生暖かくも、強烈な風が身体の水分を綺麗にさっぱり飛ばしてしまう。
洗濯機は既に乾燥を終えていた。
手錠を洗濯機にかざすと、扉が勢いよく開く。
まだ暖かい熱気と共に、香料が俺の鼻腔をくすぐった。
服を着てから脱衣所を出る。
俺の両手を鎖ががっちりとらえる。
こうまでタイミングが良いと、俺はもう生きている気がしなかった。
外は蝠岡の話題から少し逸れて、専門家と名乗る怪しい人物が、次元転移装置がいかに危険であるかを熱弁している。
抽象的な表現や、専門用語が多く、俺にはよく理解できなかったが、彼自身も理解できている気がしなかった。
他のアナウンサーたちも、彼の言葉に時折首を傾げている。
日が登り始めて、仕事の前に、快楽ボックスへと入るモノ、能力者を見つけては囲い込んでリンチする者が現れ始める。
俺は急いで公安に向かった。
自動操縦のタクシーは使わない。
豚箱にぶち込まれている間は、体を動かすことがなかったから好都合だ。
途中でスーパーにより、朝飯を調達して、握り飯にかぶりつきながら、公安を目指す。
相変わらずスクリーンは沈黙を許さなかった。
一人の男が蝠岡に暴言を吐いている。
ずっと彼に対する内容を報道しているのだろう。
彼に対する悪意は徐々に増幅しつつある。
息を切らすことなく公安の前についた俺は、警備用ロボに手錠を見せると、エレベーターに乗り、犯罪課に急いだ。
次元転移装置。
蝠岡蝙が異世界と共に作成したモノ。
この世界と並行して存在する世界へと飛び立つための物だ。
公安の犯罪課は、この装置を公にすることに対して、あまり肯定的では無かったらしい。
それも、全て映像課の横暴だ。
彼らは進んで情報局へと情報を流した。
これも蝠岡がいかに悪い人間か、凶悪な犯罪者であるかを民衆に知らしめるプロパガンダだ。
スクリーンでは、彼の自宅からマスコミにとって都合のいいものだけを掘り出し、彼の人格否定を行なっている。
あまり気持ちの良いモノでは無かった。
だが、この手法が使われて続けるのは、その方が民衆を惹きつけることが出来るからだ。
当事者である俺は、不思議と早足になり、銭湯へと急いだ。
早くスクリーンから逃げたい。
だが情報局から流される彼に対する中傷は、各方面から巨大スクリーンに映し出されており、俺はその恐怖から逃げることが出来ない。
銭湯に入り、他所のスクリーンと同時放映されている小型のモニターに目を背けながら、カウンターを潜った。
手錠の数値がまた減る。
暖簾をくぐり、脱衣所に入ると、服を脱いで、洗濯機に放り込む。
貴重品入れ場を見つけて、反射的に、自分の服から、闇社会で流通している硬貨を探したが…そうだ、それらは全て公安に没収されていたので、次は手錠を外そうとする。
が、甲高い警告音が鳴ったので、俺は手錠を外そうとするのをやめた。
[警告:ペナルティー1]
俺にはその意味が分からなかった。
まぁこれほどの機械であれば、水に濡れただけで壊れるようなことは無いであろう。
手首を洗えないのは、まぁこれも仕方のないことだ。
洗剤を買うと、洗濯物にふっかけ、蓋をしてめたから、洗濯・脱水・乾燥を選択する。
俺が浴槽に入ろうとすると、両手の鎖が解除される。
すると寛大なご主人様からメッセージが届いた。
[風呂入んの? 鎖だけは解除してあげるわ。体洗えないでしょ。自分の連れている執行者が臭いだなんて言われても困るし。PS:洗濯終わったらすぐに公安に直行して。他所彷徨いてたらまた腕輪閉めるから。]
昨夜のこともあってか、彼女は少しだけ俺に優しかった。
優しい?
追記で自分が改めて彼女に監視されていると知った俺は、なんとも言えない気持ちになった。
「これも、俺がやってきたことに対する報い……か。」
流石にオモテ社会と長い間関係を立っていた俺も、湯船に浸かる前に、身体を洗わなければならないという最低限のマナーも知らない訳では無い。
そういう奴は、トイレで糞を流さない奴と同じぐらいタチが悪い。
腰掛けに乗っている風呂桶を手に取ると、ひっくり返して、蛇口の下に置く。
蛇口を捻り、シャワーを浴びてから……シャンプーはどっちだったっけな。
モクモクと泡立ててから、頭を流し、ボディーソープを泡立てると、両手で身体を擦りまくった。
次はボディータオルが必要だな。
なんて考えながら、身体の泡を汲まなく流し終え、湯船に浸かる。
「今日から仕事か。」
最初の仕事はなんであろうか?
ハードワーク。
宜野座さんはそう言っていた。
ということは書類の整理とか聞き込み調査じゃなくて、もっとヤベーことなのかな。
と働いたことのない元裏社会が妄想を膨らませてみる。
湯船から出ると、脱衣所の出入り口で、凄まじい送風が起こった。
生暖かくも、強烈な風が身体の水分を綺麗にさっぱり飛ばしてしまう。
洗濯機は既に乾燥を終えていた。
手錠を洗濯機にかざすと、扉が勢いよく開く。
まだ暖かい熱気と共に、香料が俺の鼻腔をくすぐった。
服を着てから脱衣所を出る。
俺の両手を鎖ががっちりとらえる。
こうまでタイミングが良いと、俺はもう生きている気がしなかった。
外は蝠岡の話題から少し逸れて、専門家と名乗る怪しい人物が、次元転移装置がいかに危険であるかを熱弁している。
抽象的な表現や、専門用語が多く、俺にはよく理解できなかったが、彼自身も理解できている気がしなかった。
他のアナウンサーたちも、彼の言葉に時折首を傾げている。
日が登り始めて、仕事の前に、快楽ボックスへと入るモノ、能力者を見つけては囲い込んでリンチする者が現れ始める。
俺は急いで公安に向かった。
自動操縦のタクシーは使わない。
豚箱にぶち込まれている間は、体を動かすことがなかったから好都合だ。
途中でスーパーにより、朝飯を調達して、握り飯にかぶりつきながら、公安を目指す。
相変わらずスクリーンは沈黙を許さなかった。
一人の男が蝠岡に暴言を吐いている。
ずっと彼に対する内容を報道しているのだろう。
彼に対する悪意は徐々に増幅しつつある。
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