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エピローグ
異世界の旅
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「お前に言われた通り、桐生慎二に、お前の魔法を託したぞ。」
鉄格子越しに私に話しかけているのは、かつての私の親友、本堂守だ。
今は彼が取り締まる側で、私が大罪人。
「ありがとう。ちゃんと黒澄千代は魔法使いとして覚醒してくれたのかな。」
本堂は渋い顔をしながら頷いた。
「しかしなぜ……魔法は桐生慎二に託した方が安全なのでは? 」
私はそれを否定する。
「ダメだよ。彼に魔法を与えちゃあ。すぐサボるに決まっている。その分、彼を引っ張るのが得意な黒澄は、この役が適任だ。彼よりオツムも良いしね。」
「しかし……適正の無いものが、魔法を使えば……お前もどうなるか分かっているだろ? 」
本堂は真剣な顔で私をまっすぐ見ている。
「いや、台与鬼子、彼なら大丈夫だ。彼には魔法の素質がある。彼ならきっと彼女を支えていけるはずだ。彼に魔法を与えなかったのは、そのためでもある。」
「専門家のお前が言うのなら問題ないんだろうね。」
(私は専門家ではなく、科学者だが。)
私は両手の手錠を気怠そうに掲げると、彼に提案した。
「ところで、私はいつまでこの状態なのかな。君たち、政権を取ったんだろ? ビック・ファーザー保守派のクーデターも防いでさ。」
「外出許可ぐらいしてくれても良いんじゃ無い? そりゃ彼らからの手紙で退屈することなんて無いんだけどね。」
彼は少し考えているようだ。
「そうだな。今度飲みに行こう。久しぶりにな。」
「やっぱり持つべきは友だな。」
* * *
アレからさらに一ヶ月。
俺たちは、極東の追手と、公安の追手から逃れるために、神の壜の世界を行ったり来たりしていた。
蝠岡は俺が任務をサボるたびに、俺たちに進捗を確認する手紙を送りつけて来る。
まるで俺たちのことを見ているようだ。
「ほら、慎二、行くよ。あの岡の向こうに私たちの尋ね人がいるかもしれない。」
俺は起き上がると、凛月を拾い上げて、腰に下げた。
「しゃあねえなぁ!! 」
物語はここで終わるかもしれないが、俺たちの放浪はつづく……
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今は彼が取り締まる側で、私が大罪人。
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「しかしなぜ……魔法は桐生慎二に託した方が安全なのでは? 」
私はそれを否定する。
「ダメだよ。彼に魔法を与えちゃあ。すぐサボるに決まっている。その分、彼を引っ張るのが得意な黒澄は、この役が適任だ。彼よりオツムも良いしね。」
「しかし……適正の無いものが、魔法を使えば……お前もどうなるか分かっているだろ? 」
本堂は真剣な顔で私をまっすぐ見ている。
「いや、台与鬼子、彼なら大丈夫だ。彼には魔法の素質がある。彼ならきっと彼女を支えていけるはずだ。彼に魔法を与えなかったのは、そのためでもある。」
「専門家のお前が言うのなら問題ないんだろうね。」
(私は専門家ではなく、科学者だが。)
私は両手の手錠を気怠そうに掲げると、彼に提案した。
「ところで、私はいつまでこの状態なのかな。君たち、政権を取ったんだろ? ビック・ファーザー保守派のクーデターも防いでさ。」
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「そうだな。今度飲みに行こう。久しぶりにな。」
「やっぱり持つべきは友だな。」
* * *
アレからさらに一ヶ月。
俺たちは、極東の追手と、公安の追手から逃れるために、神の壜の世界を行ったり来たりしていた。
蝠岡は俺が任務をサボるたびに、俺たちに進捗を確認する手紙を送りつけて来る。
まるで俺たちのことを見ているようだ。
「ほら、慎二、行くよ。あの岡の向こうに私たちの尋ね人がいるかもしれない。」
俺は起き上がると、凛月を拾い上げて、腰に下げた。
「しゃあねえなぁ!! 」
物語はここで終わるかもしれないが、俺たちの放浪はつづく……
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