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二人の過去

ペンタゴン

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「リワン、下がってろ。」
 俺はリワンを後ろに下がらせるとドラゴン・ファングを右手に出現させて、ペンタゴン向けて構える。
「何だ、その禍々しい剣は? 」
「俺についた、あだ名、分かるだろう? 竜騎士だ。」
「なるほどな。魔導剣か。お前さんの力量は噂通りみたいだ。」
 時空壊で身体強化し、木々の間を駆け巡る。
 ペンタゴンは杖を構えて、俺のことを目で追っているようだった。
 奴の背後に周り、ドラゴン・ファングを逆手に持つと、急降下して、飛びかかった。
[ウォーター・ウェーブ]
 刹那、彼は左手を後ろに掲げると、滝のような水を放出する。
---隆龍リュウリュウ---
 ドラゴンファングを、両手で、身体の中心に構えて、ペンタゴンのウォーター・ウェーブを斬る。
 振り上げて回転しながら、彼に斬りつけた。
 ペンタゴンは、バックステップで、間一髪ソレを避ける。
 彼は自分と距離を取ると、両足で着地し、杖を突いて、再び静止する。
「ディスペルが発動しない。なるほど、ソイツは、炎属性では無いわけだ」
 俺は考察している奴と再び距離を詰めて、ペンタゴン向けて、刃を向けた。
。」
 彼は杖でドラゴン・ファングを受け止める。
 木々をかき分けながら、ペンタゴンと並走する。
[ファイアー・アロー]
 奴が放った無数の火の矢を、捌きながら、交わしながら、再びペンタゴンに接近する。
[ウインド・ペガサス]
 風圧で吹き飛ばされる。
[アース・クエイク]
 地面が鋭く尖り、俺の喉笛を狙う。
 滴る汗が、大地の刃へと落ちて、キラリと光沢を見せた。
 飛び上がると、今度は上空に黒い雲が立ち混み始める。
 俺が避ける姿勢を取った時には、既に魔術が発動していた。
[サンダー・フォール]
 身体を限界までくねらせて、攻撃を避けようとした。
 太ももを雷が掠り、激痛が脳天まで駆け巡る。
「ぐあああああ。」
 今の今まではこんなことは無かったのに。
 理性が失われていたことで、痛覚が鈍っていたのか、ソレとも俺がエスカリーナから受けていた魔素が消滅したからか。
 どちらも違う。
 ソレは、アスピとの修行で痛いほど分かっていた。
「ドラゴン・ファング。お前か? 」
「なるほど、お前の魔導剣の特性は、全てを壊し、全てを通す諸刃の剣だな。」
[ブリザード・エンチャント!! 」
 ブリザード?
 奴の使える五属性とは関係の無い、いや、そもそも氷属性の魔術なんて存在しないのだ。
「……って顔をしてるなお前。」
「そもそも龍属性なんて聞いたことねえけどなぁ俺は。」
 そして、彼は耳元で囁く。
「お前のプロフィール調べたぜ。炎と、闇魔術が得意なんだってな。」
 彼を杖ごと振り払う。
---燠見アウェイク---
 この短期間で、俺の術を見ただけで、複合属性の魔術を習得したというのか?
なんて、こっちとら何年もやってるんだよ。」
。」
 俺の見せた手の内が、彼の戦闘の幅を広げてしまったということか。
[サンダー・ストーム]
 彼の杖から、荒れ狂う竜巻が出現し、俺を襲う。
 ドラゴンファングで、その迸る牙を斬り裂き、ペンタゴンの顔を見る。
___不敵に笑っている。
[ファイアー・テンペスト]
 しまった!!
 乾いたこの空間に、灼熱の業火が襲いかかる。
 木々が勢いよく燃え始め、ここら一帯の空気が薄くなり始める。
「エッちゃん!! 」
 バカ、人のことを心配している場合かよ。
 咄嗟にルマで彼女を異空間に連れ出す。
「ほう、やっと勇者の力を使ったか、なぜ、ソレを使わない? 今、伝説の勇者は君に味方しているのだろう? 」
 なぜって?
 なぜかって?
 そんなの決まってるじゃねえか
 アイツの力を使ってお前に勝っても、意味がないからだよ


--- 妄劔ー紅モウトウ・クレナイ---


 俺が魔王軍時代に、最も愛用していた最高の一振り。
 俺は、ドラゴン・ファングを左腕に持ち替えると、右手に紅を構えた。
 刹那、俺の身体と影が融合する。
 おそらく、コレが本来のコイツの固有能力。
 エスカリーナの魔素を受けていたことが、逆に、コイツの本来の能力を阻害していたわけか。
「刀が一本増えたところで、お前の敗北は変わらない。さぁ。さぁ早く。時空間魔術を使え!! お前をねじ伏せることで、俺は初めて過去から解放される。」
 何が任務だ。
 結局お前の個人的感情じゃねえか。
 一歩踏み出す。
 身体が、紙のように軽い。
 時空壊や、燠見の感覚では無い。
 いや、むしろ、コレら二つの所謂呪術って奴は、身体に重量感が増すんだ。
 世界がゆっくりと動き始めるから。
 紅、お前のおかげなんだな。
 俺が振るった紅で、ペンタゴンの顔が初めて歪む。
「残念だが、俺はやつマスター・リーの一番弟子じゃ無いし、アイツの力も、意思も何一つ受け継いじゃいない。」
 俺が全部壊したから。
 だが、コイツは、俺がマスター・リーを超えたのだと勘違いしている。
 俺は何一つ乗り越えられてなどいない。
 現に
 今も
 火の矢を疾走して交わし、濁流に一振りで割れ目を作ると、その中を置いてきた世界の中で、ゆっくりと歩いていった。
「すんばらしい!! 君は最高だよ!! 俺は、お前を倒して、マスター・リーを超える!! 」
「真の王宮魔導士として、もう、後釜とも、棚ボタ腰巾着とも呼ばれないさ。」
「俺が、俺こそが、歴代最強の王宮魔導士なんだぁ!! 」
 彼は杖を自ら投げ飛ばすと、両手にマグマの剣と、氷塊の刃を作り出し、ソレらに雷を宿した。
「速い!! 」
 だが、俺の足元にも及ばない。
 無様にキマってる二対の眼を横切り、紅の柄で、奴の腹部を強打する。
 続いて、回し蹴りで、背中を強打した。
 両足を地面につけた後に跳躍し、今度は、ドラゴンファングの等身で、彼の肩を殴る。
 そのまま前転し、着地すると、回し蹴りで、彼の左脚を蹴り飛ばした。

_____呪術を解除し、彼がパタリと地面に倒れる。
「俺に負けてるようじゃ、お前は師匠マスター・リーにも弟弟子アスィールにも、一生勝てねえよ。」
   
       * * *

 森の火を消して、安全な場所で लुमाルマを使う。
 次元をこじ開けて、彼女を連れ出す。
「大丈夫か? 息はできるか? 」
「うん、ありがとうエッちゃん。」
「ソレと、ごめんなさい。なんの役にも立てなくて。」
「お前のその力が、みんなの役に立つことは知っている。」
「だけど、ソレはアスィールのためのモノだ。その時まで絶対に使うな。」
「エッちゃんって不器用だよね。」
「うるさい。さっさと行くぞアイツの両親に会いに行くんだろ? 」
「うん…… 」
「ったく。ただでさえ、アイツの両親になんて会いたくないのによ。」
「分かる。苦手な人と会う日に雨が降っちゃったら余計に億劫になるよね。」
 俺たちはアスィールの両親が住んでいる小屋へと向かった。
 

 

 
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