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魔王討伐

लुमा

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[お疲れ、。]
「いや、まだ僕は勇者では無いさ。」
 そうだ。
 勇者とは魔族を撃ち滅ぼす存在では無い。
 今、この瞬間もこの魔術लुमाを待っている人たちがいる。
「…………へっへっへ……血まみれじゃないですかアナタ。ったく勇者らしくない。」
 最後に残ったジェスターハットが喋った。
「そういうアンタは道化らしくないな。」
「我を捨てなきゃいけなかったんです。私は。」
「でも。素晴らしかったでしょう? 私の変身ショーは。」
「うん。立派だったよ。」
「声援ありが_____ 」
 そこでジェスターハットも崩れ去り、クラウン・インベント・トゥー・デットという存在は、完全にこの世から消え去った。
[死んだ幹部はチリすら残らない。なぜだか分かるか? ]
「ディアブロスもそうでした。なぜ、魔王は、幹部に、このような仕打ちをするのでしょうか? 」
[魔王は、彼らに崩壊を強要していない。彼ら幹部が自分から望んだことなんだ。]
「敵に情報を与えないためか…… 」
[いこう。感傷に浸っている暇はないぞ。]
「分かりました。」
 僕は振り返って、大声で叫んだ。
「生きている人はいますか? 」
 皮のマントの下から、ウェストランドの兵士が這い出てくる。
「動ける人は、負傷した人の安否を。怪我の重い人から応急処置をお願いします。順番に王都へと送りますから。」
「あと、もう一つ。感染症の疑いがある人は、申し出て下さーい。」

       * * *

「勇者アスィール。今回の働きはご苦労であった。」
 僕に対するビギニア王からの態度は180°変わった。
 コレで良かったんだ。
 コレで。
 僕は王への謁見をサッサと済ませると、仲間たちの元へと向かった。
「アスィール!! 」
「フォース。まだ動かないで。傷が開くから。」
「アナタ、本当に時空間魔術を。」
「そうだよ。ポータルはもう各国に開いて来た。コレで人もモノも冒険者のいる安全な場所を行き来できる。」
 ノースランドからは、塩、海産物、食物を保存するための氷を。
 イーストランドからは家畜や、果物を。
 サウスランドは療養者に住む場所を提供、民衆のストレス発散の場として。
 そしてここ、ウェストランドからは、麦や米などの農作物を各国に供給することとなった。
 人々を लुमाルマに送るということは、二度とextendは使えないだろう。
 だが大丈夫だ。
 僕には伝説の武具たちがいる。
[すまないアスィール。だけど、透過のアシストは引き続き行う。この力は魔王との戦いに不可欠だ。]
「君が謝ることじゃない。元々コレは僕がやらなきゃいけない操作なんだ。それを肩代わりしてくれるだけでありがたいよ。」
 僕は頭に包帯が巻かれているドレイクに詰め寄った。
「ところで、リワン姉ちゃんは? 」
「アンタ……ウチは怪我人やで。安静にさせてや。」
「………サウスランドで十二使徒たちと暮らしとる。座標や。」
 僕は、病棟から南国へとワープした。
 捻れたトンネルの先、螺旋に広がる白い世界
 僕の目の焦点が合う頃には、そこは南国のとある平原だった。
 ドレイクは僕たちの気を使って、本来小屋がある場所よりも少し南側の座標を教えてくれたらしい。
 平原の丘に、一軒の木造の小屋が見える。
 僕は深呼吸して、気持ちを整えた。
 頬を叩き、気合を入れ直す。
「ヨシっ。」
 なにが良いのかは自分でも分からなかったが、なんか落ち着けた気がした。
 僕は丘を登り、小屋を目指す。
「リワン姉ちゃん!! アスィールが帰って来たよ。」
 確か、名前は……
 レントだったっけ?
 エリンとコリーヌは少し背が伸びたような気がする。
 キュリオス姉さんは相変わらずだった。
 鍛錬の途中だったようで、泥だらけの兜を脱ぐと、こちらへ複雑な顔を向けてくる。
「コラ、キュリオス。私たちがこんなふうになったのは、アスィールのせいじゃないって言っているでしょ。」
 僕はゆっくり丘を登り、リワン姉さんの元へ向かった。
「十二使徒の人たちは? 一緒なんでしょ? 」
 距離が離れているので、不思議と声がデカくなる。
「フィフスさんが、子供たちも、知らない人たちと暮らすのはストレスになるだろうって。山の中腹に小屋を立てて共同で住んでいるよ~~。」
 二人の距離は徐々に縮まっていく。
 そして。
「ごめん。フォースから聞いた。リワン姉さんの背が低いのは、体質じゃないって。」
「僕を救うために『寿命』を使ったから、その分、若返ったんだって。」
 リワン姉さんは僕を抱きしめた。
「それが私の役割だった。今でもそう。」
「でもね。」
 リワン姉さんは僕を離すと、僕を屈ませて、僕の顔をじっと見た。
「その防具。無事勇者になれたのね。」
「リワンッ!! 」
「キュリオス。もう、彼を許してあげて。私はなにも怒っていないわ。自分の境遇にも、自分が歩んできた道にも、自分に課せられた使命に対しても。」
「リー様もきっと天国で喜んでいる。私たちはそのために王宮へと招かれたんだから。」
「姉さん!! 」
「なぁにアスィール。」
「僕、魔王を倒して帰ってくるよ。」
「そんでエシール兄さんを連れ戻してくる。」
「うん。それがアナタの使命。さぁ、十二使徒の人たちにも挨拶をして来なさい。」
「そしたら!! 」
「もしまだ姉さんの気持ちが変わっていないっていうのなら。」
「僕、決めたんだ。」
僕は深呼吸した。
「リワン姉さん。僕と結婚して欲しい。」
 姉さんは、目に涙を溜めている。
 泣かせてしまった。
 僕は最低な人間だ。
「うん、ありがとう。ずっと待っているから。早く魔王を倒して帰って来て。アスィール。」
「リワン姉さん…… 」
「さぁ行きなさい。マスター・リーの最高傑作。勇者アスィール。アナタを待っているのは私だけじゃない。タイムリミットは刻一刻と近づいているのよ。」
「ああ、行ってくるよ。」
 僕はセカンドと話をすべく、山の中腹に見える十二使徒の小屋へとワープした。

 
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