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イーストランドへ
入港
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「アスピ!! バフを頼む。」
「言われなくとも!! 」
アスピが杖を構え、僕に魔術をかけた。
[フィジカル・エンチャント]
身体を薄橙の膜が多い、不思議と身体が熱くなる。
軽くなった剣を再び構え、伸びてきたイカの脚か、タコの脚か分からないソレを交わす。
そして頭上からの大きな影に気づき、慌てて回避行動を取ろうとした。
「ボサっとするな少年!! 」
フォースが発砲し、海洋性の軟体動物がバランスを崩し、海に大きく倒れ込む。
衝撃で船が揺れ、アスピたちが、倒れないように、バランスを取る。
---疾風---
僕は甲板を蹴り上げると、船の外に大きく飛び出し、迫り来る脚を軽快に避けながら、軟体動物の本体へと迫った。
【紫電一閃】
紫色の迸る雷に薄橙の光が合わさり、真紅の輝きが軟体動物を一刀両断した。
甲板に着地し、アスピとハイタッチする。
「まだまだだな少年。」
フォースが立ち上がり、こちらにやって来る。
「だが、最後のは悪くなかった。」
船長が船橋からブルブルと震えながら出てくる。
「ホンマ、あんなデカいバケモンが襲って来るっちゅうのは…… 」
アスピが首を傾げた。
「ホントに。ここらの海は、水温の変化も少なくて、穏やかな海なのに、あんなバケモノが出て来るなんて。」
「バケモノっちゅったらアンタらもやろ。あんなデカブツを腰の剣でスパーッ。まぁお陰で助かったわ。今三途の川渡らずに済んでるのも君らのおかげやで。腰は抜けてもて、当分操縦できそうにないけどな。」
「おーい弥太郎。舵は任せたで。ワイはちょっと部屋で休むから。」
船橋の方から「分かりました。」
という声が聞こえる。
それからは何の問題が起こることも無く、ポートストールに到着した。
弥太郎が、ぎこちない操縦で、桟橋へと船を停める。
その時はヒヤヒヤとしたが、こうして彼の運転見ると、船長の運転はいかに荒っぽいものであったかが分かる。
元気になった船長が碇をポイっと投げて、桟橋へと橋を下ろす。
「さぁつきましたで、お客さん。」
「おいお前ら、船ぇの整備はじめんでぇ。夕餉には終わらせよか。」
「「「へぇーい。」」」
整備士たちが一斉に返事をした。
「船長、弥太郎さんたちありがとう。」
僕は彼らに手を振ると、桟橋へと降りた。
「コラ、後ろを向いて歩くと、落っこちるわよ。」
アスピが僕を支えてくれた。
「ありがとう。アスピ。」
フォースは港を見渡すと、バックからスクロールを取り出すと、インクで何やら描き始めた。
「コレがフィヨルドか。本で読んだことはあったが…… 」
僕は傾斜に立ち並ぶ煉瓦の建物を見上げた。
「凄い。イーストランドの港は山がこんなに近くにあるんだ。」
「はい、平地の多いウェストランドとは違い、島全体が一つの山のようになっています。」
「見てください。」
僕は彼女が指を指した金色の絨毯の方を見た。
「凄い、小麦畑? 」
「はい、段々畑です。イーストランドは平地が少ないですから、ああやって小麦を作っているのですよ。」
「ねぇ、アレは? アレは? 」
「果樹園ですね。我が国の名産品の一つです。水はけが良く、果実を育てるのにもってこいなんですよ。」
そう話しているうちに、僕たちはポートストルの市場に入っていた。
「お待ちしておりました。アスピ殿、クリート殿。そして、勇者たち。」
どうやら僕の噂は、もうイーストランドまで届いてしまったらしい。
「通信魔術が発達して以来。情報は人より早く飛ぶようになりました。聞きましたよ。貴方たちのご活躍を。あなた様のその腰の剣で、憎きディアストの心の臓を一突きなさったとか。」
どれだけ人の声の速さが変わってしまっても、尾びれが付くことだけは変わらないらしい。
「いいえ、アスピ様、そんな顔をなさらないで下さい。そのような意味で言ったわけでは。」
「気にしないでください。バント。私は一つも傷付いてはおりませんから。」
アスピは持ち前の営業スマイルで、使者を宥めた。
「バント、謁見の日程は? 」
「はい、クリート様。2日後の朝です。」
「ギリギリですね。なぜ融通を利かせて、余分に時間調整を行わないのか。コレでは休息を取ることも、アスィールさんたちにポートストルを案内することも出来ないでは無いですか? 」
「すみません、まざかこのタイミングで勇者が現れるとは、私たちの想定外の出来事でしたので。」
「帰りはソリを用意させて頂きます。どうか観光は謁見の後で…… 」
「大丈夫です。気にしなくて良いですよ。」
バントは頭をペコペコさせながら、役所へと戻って行った。
「さあ行きましょう。」
彼女はそう言って、山頂に聳え立つ城を指差す。
「え、あそこまで? 徒歩で? もう僕クタクタだよ。」
「軍事的な理由では、この上ない立地ですよ。」
流石にフォースも顔を青ざめている。
「船とかは? 川は無いのかここは? 」
「地下河川ならありますよ。ですがそれも全部下り用です。」
「魔術で登るのは? 」
「魔族もそうやって城まで登って来るかも知れませんね。」
「チッ魔術結界か。抜け目がないな、イーストランドの連中は。」
「さぁ、行きますよ。今日中に中腹のイーストサイドの支部まで登ります。」
「さぁ、迷える子羊たち。私たちの後に続きなさい。」
僕のフォースは、渋々クリートたちの後を追った。
「言われなくとも!! 」
アスピが杖を構え、僕に魔術をかけた。
[フィジカル・エンチャント]
身体を薄橙の膜が多い、不思議と身体が熱くなる。
軽くなった剣を再び構え、伸びてきたイカの脚か、タコの脚か分からないソレを交わす。
そして頭上からの大きな影に気づき、慌てて回避行動を取ろうとした。
「ボサっとするな少年!! 」
フォースが発砲し、海洋性の軟体動物がバランスを崩し、海に大きく倒れ込む。
衝撃で船が揺れ、アスピたちが、倒れないように、バランスを取る。
---疾風---
僕は甲板を蹴り上げると、船の外に大きく飛び出し、迫り来る脚を軽快に避けながら、軟体動物の本体へと迫った。
【紫電一閃】
紫色の迸る雷に薄橙の光が合わさり、真紅の輝きが軟体動物を一刀両断した。
甲板に着地し、アスピとハイタッチする。
「まだまだだな少年。」
フォースが立ち上がり、こちらにやって来る。
「だが、最後のは悪くなかった。」
船長が船橋からブルブルと震えながら出てくる。
「ホンマ、あんなデカいバケモンが襲って来るっちゅうのは…… 」
アスピが首を傾げた。
「ホントに。ここらの海は、水温の変化も少なくて、穏やかな海なのに、あんなバケモノが出て来るなんて。」
「バケモノっちゅったらアンタらもやろ。あんなデカブツを腰の剣でスパーッ。まぁお陰で助かったわ。今三途の川渡らずに済んでるのも君らのおかげやで。腰は抜けてもて、当分操縦できそうにないけどな。」
「おーい弥太郎。舵は任せたで。ワイはちょっと部屋で休むから。」
船橋の方から「分かりました。」
という声が聞こえる。
それからは何の問題が起こることも無く、ポートストールに到着した。
弥太郎が、ぎこちない操縦で、桟橋へと船を停める。
その時はヒヤヒヤとしたが、こうして彼の運転見ると、船長の運転はいかに荒っぽいものであったかが分かる。
元気になった船長が碇をポイっと投げて、桟橋へと橋を下ろす。
「さぁつきましたで、お客さん。」
「おいお前ら、船ぇの整備はじめんでぇ。夕餉には終わらせよか。」
「「「へぇーい。」」」
整備士たちが一斉に返事をした。
「船長、弥太郎さんたちありがとう。」
僕は彼らに手を振ると、桟橋へと降りた。
「コラ、後ろを向いて歩くと、落っこちるわよ。」
アスピが僕を支えてくれた。
「ありがとう。アスピ。」
フォースは港を見渡すと、バックからスクロールを取り出すと、インクで何やら描き始めた。
「コレがフィヨルドか。本で読んだことはあったが…… 」
僕は傾斜に立ち並ぶ煉瓦の建物を見上げた。
「凄い。イーストランドの港は山がこんなに近くにあるんだ。」
「はい、平地の多いウェストランドとは違い、島全体が一つの山のようになっています。」
「見てください。」
僕は彼女が指を指した金色の絨毯の方を見た。
「凄い、小麦畑? 」
「はい、段々畑です。イーストランドは平地が少ないですから、ああやって小麦を作っているのですよ。」
「ねぇ、アレは? アレは? 」
「果樹園ですね。我が国の名産品の一つです。水はけが良く、果実を育てるのにもってこいなんですよ。」
そう話しているうちに、僕たちはポートストルの市場に入っていた。
「お待ちしておりました。アスピ殿、クリート殿。そして、勇者たち。」
どうやら僕の噂は、もうイーストランドまで届いてしまったらしい。
「通信魔術が発達して以来。情報は人より早く飛ぶようになりました。聞きましたよ。貴方たちのご活躍を。あなた様のその腰の剣で、憎きディアストの心の臓を一突きなさったとか。」
どれだけ人の声の速さが変わってしまっても、尾びれが付くことだけは変わらないらしい。
「いいえ、アスピ様、そんな顔をなさらないで下さい。そのような意味で言ったわけでは。」
「気にしないでください。バント。私は一つも傷付いてはおりませんから。」
アスピは持ち前の営業スマイルで、使者を宥めた。
「バント、謁見の日程は? 」
「はい、クリート様。2日後の朝です。」
「ギリギリですね。なぜ融通を利かせて、余分に時間調整を行わないのか。コレでは休息を取ることも、アスィールさんたちにポートストルを案内することも出来ないでは無いですか? 」
「すみません、まざかこのタイミングで勇者が現れるとは、私たちの想定外の出来事でしたので。」
「帰りはソリを用意させて頂きます。どうか観光は謁見の後で…… 」
「大丈夫です。気にしなくて良いですよ。」
バントは頭をペコペコさせながら、役所へと戻って行った。
「さあ行きましょう。」
彼女はそう言って、山頂に聳え立つ城を指差す。
「え、あそこまで? 徒歩で? もう僕クタクタだよ。」
「軍事的な理由では、この上ない立地ですよ。」
流石にフォースも顔を青ざめている。
「船とかは? 川は無いのかここは? 」
「地下河川ならありますよ。ですがそれも全部下り用です。」
「魔術で登るのは? 」
「魔族もそうやって城まで登って来るかも知れませんね。」
「チッ魔術結界か。抜け目がないな、イーストランドの連中は。」
「さぁ、行きますよ。今日中に中腹のイーストサイドの支部まで登ります。」
「さぁ、迷える子羊たち。私たちの後に続きなさい。」
僕のフォースは、渋々クリートたちの後を追った。
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