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第7章【愛の言葉】
56罪 在りし日の過去を垣間見よ・3 (6)①
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「ぅ……」
胃の中の物がひっくり返るように湧き上がってくる感覚を覚えた。
ハルナは両手で口を押え、何かが出てくるのを抑えた。吐きたいくらいの光景。気持ち悪いくらいの景色。
「なにごとかっ⁉」
バン、と大きな音を立てて先ほどまでハルナが盗み見していた部屋から見知らぬ男が二人飛び出してきた。
ハドリーの身体をべたべたと触っていた、知らない男。この男達のせいでハドリーはメイド達に嫌な言葉を浴びせられていたのだと、ハルナはフルフルと怒りに震えた。
脳が煮えたぎってしまいそうなくらい、頭に血がのぼる感覚。
「……こ、これは」
ぽつりと男の一人が呟いた瞬間、ハルナの足元でうごめいていた黒い手の触手が男二人に向かって伸びた。
ずちゃっ……と嫌な音を立てて、男二人が部屋の目の前で崩れ落ちるように倒れた。また、黒い手の中に男の顔がある。
ハルナの周りは血だまりが出来て、頭の奪われた『死体』が四体……転がっていた。
「一体なんの騒ぎ……」
白くてつるりとした素材のガウンのようなものを羽織った神国王――深月が部屋から出てきた。そして、そのすぐ後にハドリーが姿を見せる。
ハドリーの姿を確認した瞬間、ハルナは嬉しそうな笑顔を浮かべ両手を伸ばした。
「おかあさ――――」
「これはどういうことだ、ハドリー」
ハルナの言葉を遮って、冷たく鋭い深月の声が響いた。
ビクリと、深月の背後でハドリーの肩が揺れた。けれど、何も答えられない。答えられるわけがない。
ハドリーもこの現状を何も理解できていないのだから。何も力も持っていないと思っていたハルナの足元から伸びでている紫色掛かった黒い触手のような手は一体なんなのか、ハドリーも知りたかった。一体何が起こっているのか、知りたかった。
「も、申し訳ございません。私には一体何が起きているのか…………」
理解できません、と|ハドリーは言おうとした。けれど、その言葉を深月は待ってくれようとしなかった。
「分からないでは済まさんぞ。我は、力の何も持っていないヤツだから生かした。お前が体を差し出してきたから、育ててやった」
たんたんと、語るように話す深月からピリピリとした空気が流れ出てきた。
それは怒りか、憎しみか、恐怖か。様々な感情が内包され、よくわからない。表情から感情を理解しようとも、ハドリーは今、深月の後ろにいる。見ることなど出来ない。否、見ても分からないのかもしれない。
実際、話す深月の表情は無表情で、目を見開きハルナから目を逸らすまいとしていた。
胃の中の物がひっくり返るように湧き上がってくる感覚を覚えた。
ハルナは両手で口を押え、何かが出てくるのを抑えた。吐きたいくらいの光景。気持ち悪いくらいの景色。
「なにごとかっ⁉」
バン、と大きな音を立てて先ほどまでハルナが盗み見していた部屋から見知らぬ男が二人飛び出してきた。
ハドリーの身体をべたべたと触っていた、知らない男。この男達のせいでハドリーはメイド達に嫌な言葉を浴びせられていたのだと、ハルナはフルフルと怒りに震えた。
脳が煮えたぎってしまいそうなくらい、頭に血がのぼる感覚。
「……こ、これは」
ぽつりと男の一人が呟いた瞬間、ハルナの足元でうごめいていた黒い手の触手が男二人に向かって伸びた。
ずちゃっ……と嫌な音を立てて、男二人が部屋の目の前で崩れ落ちるように倒れた。また、黒い手の中に男の顔がある。
ハルナの周りは血だまりが出来て、頭の奪われた『死体』が四体……転がっていた。
「一体なんの騒ぎ……」
白くてつるりとした素材のガウンのようなものを羽織った神国王――深月が部屋から出てきた。そして、そのすぐ後にハドリーが姿を見せる。
ハドリーの姿を確認した瞬間、ハルナは嬉しそうな笑顔を浮かべ両手を伸ばした。
「おかあさ――――」
「これはどういうことだ、ハドリー」
ハルナの言葉を遮って、冷たく鋭い深月の声が響いた。
ビクリと、深月の背後でハドリーの肩が揺れた。けれど、何も答えられない。答えられるわけがない。
ハドリーもこの現状を何も理解できていないのだから。何も力も持っていないと思っていたハルナの足元から伸びでている紫色掛かった黒い触手のような手は一体なんなのか、ハドリーも知りたかった。一体何が起こっているのか、知りたかった。
「も、申し訳ございません。私には一体何が起きているのか…………」
理解できません、と|ハドリーは言おうとした。けれど、その言葉を深月は待ってくれようとしなかった。
「分からないでは済まさんぞ。我は、力の何も持っていないヤツだから生かした。お前が体を差し出してきたから、育ててやった」
たんたんと、語るように話す深月からピリピリとした空気が流れ出てきた。
それは怒りか、憎しみか、恐怖か。様々な感情が内包され、よくわからない。表情から感情を理解しようとも、ハドリーは今、深月の後ろにいる。見ることなど出来ない。否、見ても分からないのかもしれない。
実際、話す深月の表情は無表情で、目を見開きハルナから目を逸らすまいとしていた。
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