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第6章【守護者二人の過去】

44罪 二人が狙われる理由①

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深月みつきは、力を持つ者のいないはずの神国で一番であり続けたかった……ってこと?」
「おそらくは」

 ひかるの問いかけに聖月みづきは真面目な声色で肯定しながら、小さくかぶりを振った。
 認めたくない位には自己中心的な考え方だ。一国の主だという人間が力を得てしまったための暴走に、不運にも二人の少女の運命が巻き込まれてしまった。
 本当だったら、ハルナもゑレ妃えれひもあの若さで亡くなるはずはなくて、二人とも大人になり、誰かと恋愛をして元気に幸せに一生を終えていたはずなのだ。
 ハルナは分からないが、ゑレ妃えれひに関してはいい傾向に向かいつつあったのだ。それが、たった一人の自己中心的な考え方のせいで、その幸せな未来は刈り取られてしまった。

「そのために、ゑレ妃えれひさんもハルナさんも……殺されてしまった、と……?」
耀ひかり、落ち着いて」
「ですが、ひかるっ」
「気持ちはよくわかるから……」

 ふるふると両手を震わせながら、湧き上がる怒りに耐える耀ひかり
 今にも爆発してしまいそうな彼の肩に触れて、ひかるは宥めるかのように声を掛けた。ひかるだって耀ひかりの気持ちはよくわかる。ゑレ妃えれひともハルナとも深からずとも浅くはない関係だ。耀ひかりが怒りに震えるのと同様に、ひかるだって怒りが湧き上がってくるのは当然のことだった。

「もしそうだとしたら、ゑレ妃えれひさんの両親は……」
「……」
「…………」

 耀ひかりの言葉に、ひかる聖月みづきも何も言えなかった。
 少なからず『無関係』ではないだろう。娘であるゑレ妃えれひはもちろんの事、ハルナとも深い関わりを彼らは持っていたのだから。

「――だから、なんですよ」
「……え?」

 ぽつりと聞こえた聖月みづきの言葉に、一瞬何のことかわからずにひかるは首を傾げた。
 何度もその瞳を瞬かせて、聖月みづきを見つめる。その言葉の真意を聞くために。

「ハルナさんの魂はおそらくですが、あと一度の転生にしか耐えられないでしょう。そして、ゑレ妃えれひさんはハルナさんのように転生の回数に限りはまだありませんが……それでも、もうお二人の不幸を見たくはないのです」
「だから……二人の魂をここに保管していた、と?」
「はい。お二人一緒に……幸せな未来に旅立ってほしいと思いまして」

 一人ずつではなく、二人一緒に……という聖月みづきの願いに、何か強い思いを感じた。

「お二人は、ともに過ごした時間がありながらも、二人で幸せな時間を過ごすことは出来ませんでした。二人で幸せな時間を過ごせたのは……おそらく七つの大罪グリモワールだった初めの頃だけでしょう。そして、お二人の兄弟である他の七つの大罪グリモワールの方たちは、未だ行方知らず」

 そう呟いてから、聖月みづきゑレ妃えれひとハルナのオーブを見つめた。
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