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第4章【ずっとずっと大切な人】

27罪 思いやり⑤

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(……本当に、いろいろありすぎだよ……)

 両腕で両目を覆い隠すように、私は腕をクロスさせて顔を押し当てた。視界は遮られ、ほんのりと明かりが腕の隙間をぬって入ってくるくらいだ。
 人生で二度目のセックスは、やはりただただ嫌なもので、気持ち悪いものだった。なのに、心とは裏腹に感じてしまう体がうらめしい。
 好きでもない人と無理やりセックスしているだけなのに、感じて濡れてイって……自分の体なのに自分のものじゃないみたいで、凄く嫌だった。
 初めては、本当は好きな人――ヴェル君とが良かった。だけど、それは叶うことのない願望。

(ヴェル君が静と別れることがない限りは……絶対にありえない)

 そう思ったところで、親友の静がヴェル君と別れればいいのにと少しでも考えてしまっている自分に気付き、嫌な気持ちになった。
 まるで私自身がヴェル君と付き合いたいから別れればいいのにって思ってるみたいで、凄く自分本位でげんなりした。親友の静の幸せを私は願えないのか?

(……ヴェル君が大切に思っている静が慰み者にされなかっただけ、良しとしよう)

 そう思わないとやってられなかった。心が崩壊しそうだった。
 私はヴェル君のために、そして親友である静のために、“自ら望んで”敵に身を差し出したのだ。
 誰に言われたわけでもない。誰にそうさせられたわけでもない。“私自身の意思”なんだ。

(だけど……やっぱり、好きな人とちゃんとシたいな……)

 そう思うのは、きっと女の子なら誰でもそうだと思う。
 というか、女だとか男だとか関係ないと思う。誰しもが、セックスをするなら好きな人とがいいはずだ。好きじゃない人とセックスしたい! なんて……それこそ、依存症の人かなにかじゃないか。
 もちろん、こんなの偏見でしかないとは思う。私が知らないだけで、もしかしたら誰でもいいからセックスがしたいと思っている人はいるのかもしれない。だけど、私は違う。私は好きな人としたい。

(ヴェル君と……シたかったな……)

 そう思うのは自由だと思うからこそ、私は心の中でぽつりと呟いた。
 ヴェル君は、どんな風にセックスするんだろう。どんな風に愛を囁いてくれて、どんな風に触って、どんな風な表情をするんだろう。

(…………っ)

 そんなことを考えていたら、体がゾクリとした感覚にとらわれた。お腹のあたりがキュンとするというか、腰がゾワゾワするというか。
 ああ、これ以上考えたらいけない。そんな警鐘が頭の中で鳴り響いている気がした。

(……寝よ。きっと、それが一番いい)

 そんな風に自分に言い聞かせながら、私は目をギュッと閉じて布団に潜り込んだ。
 頭まで布団をかぶり、静が寝るであろう方面に背中を向ける形で体を丸めて眠りについた。
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