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第3章【一途に想うからこそ】

20罪 在りし日の過去を垣間見よ・2⑨

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 ぱくっ!

「んひっ!?」

 ゑレ妃えれひ白卯はくうの耳を甘噛みした瞬間、白卯はくうは小さな悲鳴を上げた。
 そして、次の瞬間、青年の姿をしていたはずの白卯はくうがポンッと大きな音を立てて白い煙を放った。

「は、はくぴょん!?」

 驚きの声を上げるゑレ妃えれひの視線の先には、小さな真っ白な兎の姿があった。真っ赤な瞳がぽつんと二つ浮いたように見えるくらい、兎の毛並みは真っ白だった。

「姫様……それは、いけません」
「はく……ぴょん?」

 小さい兎が、小さな声で情けなく呟いた。その声を聞いて、ゑレ妃えれひはその兎が白卯はくうだと理解出来た。

「この姿は……本当なら姫様には見せたくありませんでした……」
「え、なんで?」
「なんでって……姫様、お聞きしますが、なぜ今、そんなにワクワクした目で私を見つめているのでしょうか?」

 じり、と近寄るゑレ妃えれひと、じりっと後ずさる白卯はくう

「え、抱っこしたい」
「……だからですよ、姫様……」
「え?」
「姫様をお守りする私が、姫様に抱っこされるなど……っ」

 そんな事あってはならないと小さく呟く白卯はくうを無視して、ゑレ妃えれひ白卯はくうを抱き上げた。
 小さな腕の中に優しく抱き留められる白卯はくうは、なんとも言えない感情を抱いたのか、声にならない声を漏らしていた。

「はくぴょん?」
「な、なんでもありませんっ」

 そう言いながらも、ゑレ妃えれひの腕の中から逃げようとしないのは、おそらく居心地が良かったからだろう。
 心地よくて、もっとゑレ妃えれひの腕の中に居たいと白卯はくうが思ってしまったからだろう。
 その後、たびたびゑレ妃えれひ白卯はくうに雪兎の姿になって欲しいと強請るようになったらしい。

* * *

「ハルナ様―?」

 前回の記憶のハルナから二年くらい前の記憶。三歳くらいの小さなぷっくりとしたハルナは、豪華なドレスを身に着けていた。
 そして、高そうな壺などが点々と置かれている廊下を、ハルナはパタパタと走っていた。母親であるメイドから逃げるだめに、だ。
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