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第3章【一途に想うからこそ】
19罪 引っかかる思いと信じたい気持ち⑭
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そんな彼女が私を貶めて、裏切って、見下して、悲しんで苦しんで辛い思いをしている姿を見てほくそ笑んでいる姿なんて、私は想像できない。
(……私の考えすぎだよね)
そう思う事にした。だって、過去に静の言う事を信じて身を引いたあと、今回みたいにその男の子と静が付き合ったりしていたわけじゃない。もし、それで付き合ったり関係を持っていたりしていたのなら、そう思ってしまっても仕方がないのかもしれないが。きっと、凄く好きになったヴェル君が静を選んだことが、そして協力を申し出てくれていた静が私に何も告げずにヴェル君を好きになって付き合うようになったことがショックで、そんな風に考えて結びつけてしまったんだろう。静が、私が傷つくようなことを進んでするはずがない。
(そう……だよね?)
私はそう思いながら、前を歩く静の背中を真っすぐ見つめた。ヴェル君の隣を歩きながら楽しげに会話をしている静の横顔を見て、少しだけチクリと胸が痛んだ。
昨日の事で私の事を凄く心から心配してくれていた静の事を、そんな風に疑ってしまった自分がふがいなかった。
* * *
森の中を彷徨い歩いて二日。私達は子ノ国の森にある石碑を探し回っていた。前回の卯ノ国と違って今回は誰も石碑の場所を教えてくれない。案内してくれる人だっていない。
土地勘のない私達は、ただひたすらに闇雲に探し回る事しか出来なかった。
「なかなか見つからないね……」
歩き続けることも、長時間かかれば疲れてくる。だけど、休んでいられるほど時間が有限にあるわけじゃない。
いつ神国の人達が襲ってくるかもわからない。子ノ国の人達が私達を見つけ、神国に密告するかもわからない。
「仕方ないね、こればっかりは」
「ええ。頑張って見つけましょう」
ふぅっと大きく息を吐き出しながら呟くヴェル君の言葉を、肯定しながら静も額にかいた汗を手の甲でぬぐった。
卯ノ国のように子ノ国は雪が降っているわけでもなく、涼しいわけでもない。そんな中で慣れない道を闇雲にあちこち探し回っているのだ。疲れも、熱さもピークになっていく。
「私達、七つの大罪の前世の記憶を封じ込めてるんだし、私達と共鳴したりしてくれないのかな」
「……共鳴、か」
「してくれたら確かに楽かもしれないわね。でも、力を使えるわけじゃないし、共鳴なんてさせられるのかしら」
七つの大罪の力を扱えるようになっていたら、もしかしたら可能性はあったかもしれない。その力を揮うことで共鳴させることが出来たかもしれない。
けれど現状、私達は七つの大罪の力を取り戻しているわけではない。まだ過去の記憶だって一つしか取り戻していない。そんな状態で石碑と共鳴なんて出来るかなんて、可能性はゼロに近い気がする。
「確かに力は使えないかもしれないけど、でも過去の記憶に七つの大罪としての力はすでに一部取り返してはいるはずだし……」
理論上は出来るんじゃないだろうかとも思えた。
まあ、やり方なんて知らないし思いつきもしないのだから、現状、詰んでいることには変わりないだろう。
だからといって何もせずに無理と決めつけてしまうのも違うような気もして、私は両手をジッと見つめてその場に立ち止まった。何かできるんじゃないか、何かあるんじゃないかと、私は取り戻したはずの力に意識を向けてみることにした。
(……私の考えすぎだよね)
そう思う事にした。だって、過去に静の言う事を信じて身を引いたあと、今回みたいにその男の子と静が付き合ったりしていたわけじゃない。もし、それで付き合ったり関係を持っていたりしていたのなら、そう思ってしまっても仕方がないのかもしれないが。きっと、凄く好きになったヴェル君が静を選んだことが、そして協力を申し出てくれていた静が私に何も告げずにヴェル君を好きになって付き合うようになったことがショックで、そんな風に考えて結びつけてしまったんだろう。静が、私が傷つくようなことを進んでするはずがない。
(そう……だよね?)
私はそう思いながら、前を歩く静の背中を真っすぐ見つめた。ヴェル君の隣を歩きながら楽しげに会話をしている静の横顔を見て、少しだけチクリと胸が痛んだ。
昨日の事で私の事を凄く心から心配してくれていた静の事を、そんな風に疑ってしまった自分がふがいなかった。
* * *
森の中を彷徨い歩いて二日。私達は子ノ国の森にある石碑を探し回っていた。前回の卯ノ国と違って今回は誰も石碑の場所を教えてくれない。案内してくれる人だっていない。
土地勘のない私達は、ただひたすらに闇雲に探し回る事しか出来なかった。
「なかなか見つからないね……」
歩き続けることも、長時間かかれば疲れてくる。だけど、休んでいられるほど時間が有限にあるわけじゃない。
いつ神国の人達が襲ってくるかもわからない。子ノ国の人達が私達を見つけ、神国に密告するかもわからない。
「仕方ないね、こればっかりは」
「ええ。頑張って見つけましょう」
ふぅっと大きく息を吐き出しながら呟くヴェル君の言葉を、肯定しながら静も額にかいた汗を手の甲でぬぐった。
卯ノ国のように子ノ国は雪が降っているわけでもなく、涼しいわけでもない。そんな中で慣れない道を闇雲にあちこち探し回っているのだ。疲れも、熱さもピークになっていく。
「私達、七つの大罪の前世の記憶を封じ込めてるんだし、私達と共鳴したりしてくれないのかな」
「……共鳴、か」
「してくれたら確かに楽かもしれないわね。でも、力を使えるわけじゃないし、共鳴なんてさせられるのかしら」
七つの大罪の力を扱えるようになっていたら、もしかしたら可能性はあったかもしれない。その力を揮うことで共鳴させることが出来たかもしれない。
けれど現状、私達は七つの大罪の力を取り戻しているわけではない。まだ過去の記憶だって一つしか取り戻していない。そんな状態で石碑と共鳴なんて出来るかなんて、可能性はゼロに近い気がする。
「確かに力は使えないかもしれないけど、でも過去の記憶に七つの大罪としての力はすでに一部取り返してはいるはずだし……」
理論上は出来るんじゃないだろうかとも思えた。
まあ、やり方なんて知らないし思いつきもしないのだから、現状、詰んでいることには変わりないだろう。
だからといって何もせずに無理と決めつけてしまうのも違うような気もして、私は両手をジッと見つめてその場に立ち止まった。何かできるんじゃないか、何かあるんじゃないかと、私は取り戻したはずの力に意識を向けてみることにした。
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