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第3章【一途に想うからこそ】

17罪‬ 身代わり⑦

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「変に心配させちゃってるのかもしれないけど、ちゃんと考えあってのことだからね?」
「考え?」
「うん。実はね……人の気配を感じると目が覚めるというか、眠りが浅くなっちゃうみたいでね。だから少しだけ距離を離してテントを張っただけなんだ!」

 だから心配しなくていいよ! と力強く説明をする私の言葉を、勘ぐって深読みする人がいるかは分からない。けれど、本当の想いを口にするのはなんとなく申し訳ない気がして、私は嘘と本当を少しずつ織り交ぜて説明することにした。

「……それなら、いいんだけどさ」
「みんなの近くで寝たくなったら遠慮なくテント移動させてきていいのよ?」

 ヴェル君は私の考えを尊重してくれてはいるものの、その口調から納得していないことが分かった。静にいたっては私の事を心の底から心配してくれているようで、むしろ私が悪い事をしてしまったかなと不安になるような面持ちで私の手を両手で包み込むように握ってくれた。
 なんだか騙しているようで少しだけ申し訳なさを感じたが、だからといって正直に話すかと言われれば話さない。付き合っている二人を祝福できていないこと、そして未練たらしくヴェル君への思いをいまだに捨てきれず引きずっていることを知られたくないからだ。
 もしかしたら、気付かれているかもしれないけれど。

「静もヴェル君も、心配してくれてありがとうね。でも、大丈夫だよ」

 きちんと笑いかけられていたか心配だったけれど、これ以上あれこれ踏み込まれるのが嫌だった私の気持ちを理解してくれたのか、それ以上は二人から何も言われずに終わった。

「じゃあ、またいつもみたいに魔法かけていくよ?」
「ええ、お願いするわ」
「いつもありがとうね、ヴェル君」
「そんなこと別に構わないよ」

 ぐいっと腕まくりをするような動作をしながらヴェル君は私達のテントへと歩みを向けた。真兄のテント、静のテント、ヴェル君自身のテント、そして少しだけ距離の離れた場所にある私のテントに順番に魔法をかけてくれるヴェル君を、私は泉の近くの岩場に腰かけて見ていた。

(いつ見ても手際がいいなぁ)

 そんなヴェル君のおかげで、私達は快適に野宿でも過ごすことが出来ているのだから彼に感謝しなければならない。本当にありがたい。私も魔法が使えたら何かお手伝いが出来たのかなとも思うが前世でふるっていたはずの七つの大罪グリモワールの力ですら取り戻せていないのだから、ないものねだりはやめておこうとも思った。
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