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第2章【交わる二人の歯車】

16罪‬ 好きな人は大好きな友達の恋人でした②

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「雪ちゃん、ごめんね……雪ちゃんのためにヴェル君に接触して話をしているうちに……彼の事、好きになってしまったの」
「……そ、か。うん……ヴェル君、素敵だもんね。好きに……なっちゃうのも、分かる、よ」

 静の話を聞き、私は一生懸命笑顔を浮かべた。ちゃんと笑えていたかは分からない。だけど、私はこれ以上みじめにはなりたくなかった。
 ぎゅっと敷布団のシーツを握りしめ、私は無理矢理笑顔を張り付けたまま、静とヴェル君を見つめた。

「なるべく早く、気持ち切り替えるように頑張るから……だから、友達ではいて、ね」

 未練がましいような気がするけど、これからも一緒に旅を続けていく仲間だ。仲悪くはなりたくなかった。

「もちろんだよ、雪ちゃん」
「こんなことで、絆が壊れるわけないでしょう」

 そんな風に優しく言葉を投げかけてくれるヴェル君と静。だけど、今だけは、二人一緒に居るのを見たくなかった。早く、一人になりたかった。堪えて堪えて我慢している心を早く解放してあげたくて、私は布団に再び横になりながら。

「ごめん……そろそろ辛いから、いいかな?」

 酔った自分を理由に、一人になりたいと遠回しに告げた。きっと、優しいヴェル君と静なら、察して一人にしてくれるだろう。

「あ、ごめん。そうだよね」
「ヴェルくん……行きましょうか」
「……そう、だね」

 両想いのはずなのに、どこかぎこちなさを感じる二人。だけど、付き合い始めたばかりなら、そういうものなのかな? とも思って、私は部屋を出ていく二人の後姿を黙って見つめた。
 そして、部屋に誰もいなくなったことを確認すると、こらえていた涙が瞳からぼろぼろと零れ落ちた。

「……ぅっ」

 枕に顔をうずめて、声を押し殺して涙を流した。
 大好きだった。凄く、ヴェル君の事が大好きだった。協力してくれると言っていた静がヴェル君の事を好きになってしまうのは、仕方がない事だと思う。好きな気持ちは誰にも留められるような物じゃないのは、私が一番よく知っているから。
 だけど、だけどね……友達、それも親友に好きな人をこっそりかっさらわれたような気がして、凄く複雑な気持ちなんだ。付き合う前に、好きになった時点で“好きになっちゃったんだ”って言ってほしかった。そんなの私のわがままだって分かってる。だけど、まるで裏切られたみたいで、凄く凄く悲しかった。
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