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第2章【交わる二人の歯車】

16罪‬ 好きな人は大好きな友達の恋人でした⑫

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「雪様、よろしいでしょうか?」
「あ、はい。どうぞ」

 真兄が来るかと思っていたから、予想外の声が聞こえて驚いた。襖が開き、白卯と真兄が一緒に部屋の中に入ってきたのを確認すると、私はゆっくりと体を起こして二人の方を見た。

「ああ……本当に、目が腫れていらっしゃいますっ。大丈夫でございますかっ⁉」
「……真兄」

 おろおろとしながら私に近寄ってくる白卯の言葉を耳にして、私はじとーとした視線を真兄に送った。確かにはっきりと「誰かに見られたくない」とは言わなかったかもしれないけど、真兄はその真意に気付いて「その顔で外に出たくないだろう?」と聞いてくれたんじゃなかったのか? 白卯に知られてしまったじゃないか……と私は無言の圧力を真兄に向けた。

「すまない、雪」

 私の言わんとしていることを理解したのか、真兄は申し訳なさそうに肩をすくめながら私に近寄ってきた白卯と並ぶように佇んだ。

「さすがに用途を聞かずにお渡しするわけにも参りませんから……真殿を責めないでください、雪様」
「……もう、しょうがないなぁ……」

 白卯にそう言われてしまえば、私はこれ以上真兄をじと目で見るわけにもいかなくて、苦笑を浮かべて肩をすくめた。
 白卯から差し出された濡れた布と氷を受け取ると、それらを腫れた両目を抑えるように宛がった。氷を覆った濡れた布からひんやりとした冷たさを感じ取り、ほぅっと心地よさに息が漏れた。

「真兄、白卯、ありがとう」
「いや」
「どういたしまして、雪様」

 両目を覆い隠した状態で伝えたお礼の言葉。見えないけど、二人が柔らかい笑みを浮かべているんじゃないかと思えた。声色がそんな感じだったから、そう思っただけなんだけど、たぶん間違っていないと私は思えた。

「それより、いったい何があったのですか?」
「……っ」

 真兄は上手い事話をそらすことが成功したけれど、白卯はそうはいかなかった。問われた言葉に息を呑み、私は戸惑い言葉が出てこなかった。

「雪様?」
「雪?」

 その様子が異様に思えたのか、心配そうに声をかけてくる二人の声に私は余計に何も言えなくなった。言えるわけがない。

「な、んでもないよ! 起きたらこうなってて……もしかしたら何か夢でも見て寝ながら泣いちゃってたのかも!」

 もの凄く苦しい言い訳だとは思ったけれど、これで二人をはぐらかすことが出来たらラッキーだと思った。ハハハ、と元気に笑い声を上げながら、なんでだろうねーととぼける。だけど、私のその発言に対して白卯も真兄も何も返事を返してくれず、変な沈黙だけが流れた。
 き、気まずい……
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