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第2章【交わる二人の歯車】

14罪 在りし日の過去を垣間見よ・1⑤

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「あの……私、ゑレ妃の記憶も他の過去の記憶も全部含めて、取り戻したいんです」

 ゑレ妃の過去のことでこれだけ傷ついている二人に、こんな事を告げるのは酷かもしれないと思った。だけど、話さなければいけない事なのは確かで。
 それに、もしかしたらその過去の記憶を通して、亡くなったゑレ妃の気持ちもわかるかもしれないなんて、少しでも思ったのも本当で。

「それで、石碑を捜し歩いているんです」
「過去の……記憶、を?」
「はい。とある目的のために、思い出さなきゃいけないんです」

 詳しい事は、全く関係のないこの人たちを巻き込む訳にはいかないから話せないけど、記憶を取り戻したいという事は話しても大丈夫だと思った。
 真っすぐにゐ榛様とゑツ姫様を見つめて、その反応を待った。正直に話したけど、怖くないわけじゃなかった。もしかしたら、神国に密告される可能性だってもちろんある。だけど、自分の前世であるゑレ妃の叔母だというゑツ姫様たちに嘘を吐きたくないと思ったのも本当だ。

「……悲しい記憶だとしてもか?」
「はい」
「思い出したくなかったとあとから後悔しても遅いのだぞ?」
「覚悟はしています。どんな記憶でも、どんな思い出でも、それは過去……」

 ゐ榛様の問いかけに、私はそこまで一息で告げると大きく息を吸い瞳を閉じた。そして、深呼吸をするとゆっくりと閉じた目を開き。

「過去は過去。私は私。前世は前世です……今の私とは無関係の出来事です」

 そうは言っても、記憶を取り戻した後のことなんて正直分からない。だけど“今”そう考えているのは本当のことで、そういう風に割り切りたいと思っているのも事実だ。

「……そう、か」

 長い沈黙が訪れた。誰も話さず、誰も動かない。ただただ、ゐ榛様かゑツ姫様が話すのを待つだけの空間。

「他の者も、同じような覚悟を持っているのか?」
「はい」
「大丈夫です」

 ゐ榛様の問いかけに真兄も静も大きく頷きながらしっかりとした返事を返し、その答えにゐ榛様もゑツ姫様も、満足そうに笑みを浮かべた。

「……わかった。石碑への接触、許可しよう」
「――――っ! あ、ありがとうございます‼」

 ゐ榛様の力強い声に、私たちは顔を見合わせパッと笑顔を浮かべると、彼らに感謝の言葉を述べ深々と頭を下げた。
 これが第一歩だ。すべてを思い出すための、力を取り戻すための第一歩だ。
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