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第1章【はじまりのモノガタリ】
1罪 召喚②
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── 目 覚 め よ ──
ふと聞こえた声に、私は小さく「え?」と声を漏らしてあたりをキョロキョロと見渡した。けれど、私たちの周りには他に人はおらず、聞こえた声は誰のものなのか分からなくて、少しだけ薄気味悪かった。得体のしれない者に足を掴まれているような。そんな気分。
「今の声……聞こえた⁇」
ゴクリと息を呑んで私は二人に問いかけた。まさか私だけが聞こえた声だなんてことはないよね? という不安を拭うために。静と真兄の答えを聞くべく、私は彼らを真っすぐに見つめた。
ざわりと風が吹き、満開の桜の花が散る。視界を一面ピンク色に染めるように吹き荒ぶ。私は自分の首のあたりを抑えるようにして、風になびく髪を抑えた。
「ああ」
「私も……聞こえたわ」
彼らの返事にホッと安堵するも、同時に“聞こえた声はいったい誰のものだったのか”という疑問がよぎり、背筋が凍えた。まるでこの世のものじゃないという答えに導かれているようで恐怖を覚えた。
── 目 覚 め よ ──
「……っ」
再度聞こえてきた声に、私は悪寒を感じて自分の手で自分を抱きしめるように両腕を掴んだ。誰も居ない。なのに聞こえる声。
どういうこと? 誰かいるの? 誰もいないの? おばけ? お化けなの?
「雪、落ち着け。超常現象なんて気のせいだ」
「そうよ、雪ちゃん。おばけなんているはずないわ」
「だ、だけど……」
そわそわと、私は落ち着きなくあたりを何度も見渡した。そのたび視界に入るのは二人しかいなくて、やっぱりお化けなんじゃないかと結論が結びつく。小さい頃からホラーに興味津々でも、実際には怖がりでこんな風にビビってばかりだった。まさか、現実に自分が経験することになるなんて思っても居なくて、余計に恐怖心が煽られた。
── 七つの大罪たちよ…本来あるべき場所へ ──
ドクン。ドクン。ドクン。
心臓が激しく鼓動した。七つの大罪という言葉が懐かしく感じて、それでいて苦しくて悲しくも感じて、胸が押しつぶされそうな感覚に陥った。
「七つの大罪……?」
「…… 七つの大罪」
「────っ」
聞こえた声、耳に残った言葉に私も静も真兄も、それぞれがそれぞれの反応を示した。懐かしいけれどよくわからない言葉なのに、胸の温かさを感じて私は小さく言葉にした。
静はまるで、しっくりくると言わんばかりに、その言葉を確かめるように。真兄はぎゅっと胸を掴み、何かにこらえるように、何かに耐えるように、何かを悲しむように、眉をしかめていた。
七つの大罪ってなんなの? なんでこんな気持ちになるの? この声は誰のものなの? 私たちを知っている人たちなの? ならなんで私たちの前に現れないの?
疑問はたくさんあった。たくさんあって、だけどその疑問に答えなんて出てくるはずもなかった。私たちは答えを持ち合わせていなかったのだから。答えを持っている人たちは、きっとここにはいない。
── さあ。七つの大罪たちよ… ──
まるでその言葉がきっかけの様に吹き荒んでいた風が強まった。桜の花びらで視界を埋め尽くされる様に、ピンク色がいっぱいに広がっていった。景色が掻き消えて、視界はどこを見てもピンク一色。少し気持ち悪い。そして、音も聞こえなくなった。あんなに吹いていた風の音も、もう聞こえない。
ふと聞こえた声に、私は小さく「え?」と声を漏らしてあたりをキョロキョロと見渡した。けれど、私たちの周りには他に人はおらず、聞こえた声は誰のものなのか分からなくて、少しだけ薄気味悪かった。得体のしれない者に足を掴まれているような。そんな気分。
「今の声……聞こえた⁇」
ゴクリと息を呑んで私は二人に問いかけた。まさか私だけが聞こえた声だなんてことはないよね? という不安を拭うために。静と真兄の答えを聞くべく、私は彼らを真っすぐに見つめた。
ざわりと風が吹き、満開の桜の花が散る。視界を一面ピンク色に染めるように吹き荒ぶ。私は自分の首のあたりを抑えるようにして、風になびく髪を抑えた。
「ああ」
「私も……聞こえたわ」
彼らの返事にホッと安堵するも、同時に“聞こえた声はいったい誰のものだったのか”という疑問がよぎり、背筋が凍えた。まるでこの世のものじゃないという答えに導かれているようで恐怖を覚えた。
── 目 覚 め よ ──
「……っ」
再度聞こえてきた声に、私は悪寒を感じて自分の手で自分を抱きしめるように両腕を掴んだ。誰も居ない。なのに聞こえる声。
どういうこと? 誰かいるの? 誰もいないの? おばけ? お化けなの?
「雪、落ち着け。超常現象なんて気のせいだ」
「そうよ、雪ちゃん。おばけなんているはずないわ」
「だ、だけど……」
そわそわと、私は落ち着きなくあたりを何度も見渡した。そのたび視界に入るのは二人しかいなくて、やっぱりお化けなんじゃないかと結論が結びつく。小さい頃からホラーに興味津々でも、実際には怖がりでこんな風にビビってばかりだった。まさか、現実に自分が経験することになるなんて思っても居なくて、余計に恐怖心が煽られた。
── 七つの大罪たちよ…本来あるべき場所へ ──
ドクン。ドクン。ドクン。
心臓が激しく鼓動した。七つの大罪という言葉が懐かしく感じて、それでいて苦しくて悲しくも感じて、胸が押しつぶされそうな感覚に陥った。
「七つの大罪……?」
「…… 七つの大罪」
「────っ」
聞こえた声、耳に残った言葉に私も静も真兄も、それぞれがそれぞれの反応を示した。懐かしいけれどよくわからない言葉なのに、胸の温かさを感じて私は小さく言葉にした。
静はまるで、しっくりくると言わんばかりに、その言葉を確かめるように。真兄はぎゅっと胸を掴み、何かにこらえるように、何かに耐えるように、何かを悲しむように、眉をしかめていた。
七つの大罪ってなんなの? なんでこんな気持ちになるの? この声は誰のものなの? 私たちを知っている人たちなの? ならなんで私たちの前に現れないの?
疑問はたくさんあった。たくさんあって、だけどその疑問に答えなんて出てくるはずもなかった。私たちは答えを持ち合わせていなかったのだから。答えを持っている人たちは、きっとここにはいない。
── さあ。七つの大罪たちよ… ──
まるでその言葉がきっかけの様に吹き荒んでいた風が強まった。桜の花びらで視界を埋め尽くされる様に、ピンク色がいっぱいに広がっていった。景色が掻き消えて、視界はどこを見てもピンク一色。少し気持ち悪い。そして、音も聞こえなくなった。あんなに吹いていた風の音も、もう聞こえない。
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