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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─

114時間目 あけましての日常

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 クリスマスから数日後。

 大晦日をまたいで、新たな年がやってきた。

 テレビではつい数秒前までカウントダウンが行われていて、今は新年を皆ほくほく顔で祝っている。

 数秒おきに鳴る俺のスマホ。

 相手は分かっている。

 裕太、遼太郎、小春はもちろん、黒沢くろさわセンパイや神谷かみやさんたちも送ってきたに違いない。

 いっておくが、このリビングには誰もいない。母親もさきさき寝てしまったし、父親なんかメシを食ったらもう寝室に消えていた。

 両親ももう年なんだなと時間の経過にちょっとしんみりした。

『あけましておめでとう!』

『あけおめー!』

『あけましておめでとうございます。敦志君、今年もよろしくね』

『ことよろ』

『敦志君、あけましておめでとう。今年も小春ちゃんとイチャイチャしなさいよ笑』

 などなど、十人十色のメッセージがきていた。

 それぞれ返事を返しつつ、俺はそういえば今年は受験生なんだと思った。

 今のところ、大学を受ける。しかも、なにかしらの推薦で、だ。

 今の俺の成績は中の上、良くて上の下といったところだ。

 資格もそれなりに取っているが、本当に推薦されるのだろうかと不安が襲いかかる。

 でも、

『敦志君なら大丈夫だよ』

 クリスマスの日、小春が言ってくれた言葉が俺の脳内を何度も反射に駆け巡って離れない。

 この言葉が俺が着実に進んでいることを知らせている。

「そろそろ……寝るか」

 ひと通り、メッセージを送ったあと、俺は自室にあがってそのままベッドに倒れこんだ。

 朝がやって来たことを知ったのは、太陽の光に眩しさを覚えた頃だった。

 時計を見てみると、十時を過ぎていた。うわぁ、もうこんな時間か。

 なんで俺がこの時間で驚いているのかというと、今日はMISHIHANAでパーティーをすることになっている。

 去年もしたがかなり楽しかったので今年も参加することにした。三島さんには一生頭があがらない。

 しかも、そのパーティー、昼からなのでもうすぐ始まるのだ。

 だから、こんなにも結構急いでいる。

「敦志あけましておめでとうー。今年は頑張りなさいよー」

 顔を洗いに洗面所に向かう途中、母親から新年の挨拶の言葉をかけられた。

「うん、今年もよろしく。頑張る」

 素直にそう言い、俺は洗面所に向かった。

 それから、俺は急いで服に着替えてから、家をでた。

 ねぐせ付きでいつも以上にはねている髪はもう直らないだろうから、放っておいた。

 歩いている間に風に煽られて直らねぇかな。

 MISHIHANAに向けて、歩いている途中、曲がってきた誰かとぶつかってしまった。

「っ……! すみません……」

 俺の方からぶつかったわけではないが平和的に解決するためにも一応謝った。

「ンア……。いや、こっちこそ悪ィ……って、敦志じゃねェか。久しぶりだなァ」

 ぶつかった相手は黒沢センパイだった。たしかに最後に会ったのが文化祭の頃だったから、かなり久しぶりだ。

「黒沢センパイ!? お久しぶりです。あ、あけましておめでとうございます」

「ンア、今年もよろしくな」

 今年もと言うべきか今日も黒沢センパイは安定の黒のパーカーを着ていた。この人パーカーしか着ねぇな。いや、最高に似合ってていいけどさ。もっとおしゃれしたらいいのに。

「とりあえず、こんなところで固まってるのも邪魔だしいくか」

「邪魔ってひどいっすね」

 軽口を言い合いながら、俺たちはMISHIHANAへ向かった。
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