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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─

112時間目 恋人たちのワルツ

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 俺が行きたいところというのは、もしかしたら、小春に見せてあげたいところなのかもしれない。

 このことを知ったのは、おなじみになっている遼太郎からの情報だった。

 ここの水族館はカワウソとも触れ合うことが出来るらしい。

 カワウソは水族館でもかなり希少な動物であまり、触れ合うことがない。聞いたこともないし、今まで来たこともない。

「わあっ! 可愛いー! ペットに欲しい!」

 小春はカワウソにめろめろだった。まぁ、確かに可愛いと思う。

 小さな体格に可愛らしいつぶらな瞳。母性や包容力をくすぐられる鳴き声は一度聞いたら、忘れられない。

 ここのカワウソの触れ合いコーナーにも、たくさんの人がいて、俺たちはかなり並んだ。

 だけど、並んだかいはあったとこの可愛さをみて、思う。

 小春とは違う言葉にはできない別の可愛らしさがカワウソにはある。

「ここでもエサやりができるんだな。この水族館すげぇな」

「そうだね。あー、可愛いね! 敦志君! カワウソ飼ってください! だめ?」

 眼前でぱんと両手を合わせる小春。そのしぐさがいちいち可愛くてついキュンとしてしまう。俺の彼女可愛すぎる。

「今は、無理だけど、将来、飼えたらいいな。カワウソ本当に可愛いし」

「あ、敦志……」

「──うん、すごいね」

 裕太と遼太郎がなにやらにやにやしながら言い合っている。

「あ、敦志君!? ど、ど、どうしたの? 嬉しいんだけど、ちょっと未来のこと考えるだけで──キャー!」

 小春が顔を真っ赤にしてオーバーヒートしてしまった。

「きゅう……。わらひ、幸せすぎてもうらめかも……」

「こ、小春!?」

 次は俺がオーバーヒートする番だった。その甘い声は反則だって。

 ──

 あれから、俺たちは二人そろってうるさいので裕太に怒られた。でも、二人そろって怒られている時間は悪くなく顔を見合わせて笑いあった。

 もちろん、裕太には更に怒られた。

「……まったく、森山さんはともかく、敦志はだめだよ。注意くらいはしなきゃ」

「おい、裕太。小春に甘いじゃねぇか」

「ご、ごめんね。山内君。私もちょっとはしゃぎすぎちゃった……」

 小春のせいではないだろうとは思ったけど、これ以上は口を挟まないことにした。

 さて、ペンギンも見た。カワウソも見た。時間もちょうど閉館時間に近づいてきた。

「小春、そろそろでよっか」

「うん、もう閉館だしね」

「早かったなぁー」

「楽しかったよ」

 そこで俺は伝えよう。一年間の感謝とこれからの想いを。

 撮り損ねた写真ももちろん撮ってから。
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