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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
111時間目 幸福の花
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『まもなく、プレミアムナイトイルカショーが開催されます。イルカやアザラシの可愛らしい姿を一夜限りの姿を、ぜひご覧ください』
へぇ、イルカショーか。ここの水族館の定番だってたしか遼太郎が言っていた気がする。
「敦志君、今の聞いた!? イルカショーだって! 私絶対見たいな!」
「おう、いいよ。行こう。裕太と遼太郎も大丈夫だよな?」
「もちろん。久しぶりだなぁ。イルカショーなんて」
「やっとこのときが来たねー! 俺はまじで楽しみだったんだよ!」
二人とも了承してくれたので、俺たちは開催されるステージに急いだ。
甲子園をひとまわりほど小さくした場所のそれは、まだ開始時間より十分ほど前なのにも関わらず、沢山のお客さんで埋め尽くされていた。
「おー! やっぱり、人は多いな。空いてる席見つけて座るか」
俺たちが見つけた席はあいにく、二人しか座れなかった。それ以外は、別々になってしまい、俺はできる限り四人で見ることを提案した。
しかし、裕太と遼太郎は優しかった。
『敦志と森山さんの二人の時間って今日はあまりとれていないでしょ。二人の時間をつくってきなよ』
と二人揃って離れた席へと向かってくれた。ありがとうな。二人とも。
事前に遼太郎から、かなり濡れるらしいと聞いていたので俺たちはレインコートを着用し、前列の席に座って観ることにした。
司会の女性からのかけ声から始まり、手拍子と共に登場するイルカたちが尾びれを水面に打ち付け、容赦なく前列に水を飛ばし、歓声を響きあげさせる。
ライトアップされたステージにはイルカがマシンガンのように水流をかく。
フラフープのなかを何度も潜り抜け、満月と被さるように跳ねたイルカがライトと月の反射に照らされたボールにタッチし、水面に豪快にダイブした。
まだ始まって数分というのに前列の俺たちはレインコートを着なければきっとずぶ濡れだっただろう。
「すごい! すごいね! 敦志君! きゃー! あははっ!」
小春が子供のように笑うので、俺もつられて笑ってしまう。
楽しい。本当に楽しい。
一定間隔で置いてあるボールに向かってイルカたちが飛び跳ねるので、そこら中にキラキラと輝く水が飛ぶ。
『さて、ラストとなります! メリークリスマスで、イルカたちは泳ぎ終えます。せーの!』
「「「メリークリスマス‼」」」
「メリークリスマス!」
その声で、泳いでいたイルカや途中からでてきたアザラシは、泳ぎをやめ、ステージ端に飛び移る。
そして、一匹のアザラシとイルカがキスをして、歓声が飛んだ。
「すごかったね! 敦志君!」
「あぁ……。綺麗だったな」
「敦志君」
「ん? どうし──」
小春が少し前のめりになりながら、こちらを見ていた。
リップでもしているのだろう唇が艶っぽく見える。
これはきっと──。
俺は、小春を抱きしめようと肩に手をやろうとしたそのときだった。
「敦志ー! お疲れー! すっごい濡れた……」
遼太郎と裕太が来た。
俺は慌てて小春から手を離した。
「あれ……? ごめん、俺たちおじゃまだった?」
おじゃまだよ、バカ野郎。
「……だから言ったじゃないか……。三石……」
裕太がやれやれと呆れたような声を出した。なるほど、遼太郎が無理矢理つれてきたんだな。
「敦志、次の場所行こっか」
「あぁ」
顔が赤くなった小春の手を繋いで、俺たちはステージをあとにした。
へぇ、イルカショーか。ここの水族館の定番だってたしか遼太郎が言っていた気がする。
「敦志君、今の聞いた!? イルカショーだって! 私絶対見たいな!」
「おう、いいよ。行こう。裕太と遼太郎も大丈夫だよな?」
「もちろん。久しぶりだなぁ。イルカショーなんて」
「やっとこのときが来たねー! 俺はまじで楽しみだったんだよ!」
二人とも了承してくれたので、俺たちは開催されるステージに急いだ。
甲子園をひとまわりほど小さくした場所のそれは、まだ開始時間より十分ほど前なのにも関わらず、沢山のお客さんで埋め尽くされていた。
「おー! やっぱり、人は多いな。空いてる席見つけて座るか」
俺たちが見つけた席はあいにく、二人しか座れなかった。それ以外は、別々になってしまい、俺はできる限り四人で見ることを提案した。
しかし、裕太と遼太郎は優しかった。
『敦志と森山さんの二人の時間って今日はあまりとれていないでしょ。二人の時間をつくってきなよ』
と二人揃って離れた席へと向かってくれた。ありがとうな。二人とも。
事前に遼太郎から、かなり濡れるらしいと聞いていたので俺たちはレインコートを着用し、前列の席に座って観ることにした。
司会の女性からのかけ声から始まり、手拍子と共に登場するイルカたちが尾びれを水面に打ち付け、容赦なく前列に水を飛ばし、歓声を響きあげさせる。
ライトアップされたステージにはイルカがマシンガンのように水流をかく。
フラフープのなかを何度も潜り抜け、満月と被さるように跳ねたイルカがライトと月の反射に照らされたボールにタッチし、水面に豪快にダイブした。
まだ始まって数分というのに前列の俺たちはレインコートを着なければきっとずぶ濡れだっただろう。
「すごい! すごいね! 敦志君! きゃー! あははっ!」
小春が子供のように笑うので、俺もつられて笑ってしまう。
楽しい。本当に楽しい。
一定間隔で置いてあるボールに向かってイルカたちが飛び跳ねるので、そこら中にキラキラと輝く水が飛ぶ。
『さて、ラストとなります! メリークリスマスで、イルカたちは泳ぎ終えます。せーの!』
「「「メリークリスマス‼」」」
「メリークリスマス!」
その声で、泳いでいたイルカや途中からでてきたアザラシは、泳ぎをやめ、ステージ端に飛び移る。
そして、一匹のアザラシとイルカがキスをして、歓声が飛んだ。
「すごかったね! 敦志君!」
「あぁ……。綺麗だったな」
「敦志君」
「ん? どうし──」
小春が少し前のめりになりながら、こちらを見ていた。
リップでもしているのだろう唇が艶っぽく見える。
これはきっと──。
俺は、小春を抱きしめようと肩に手をやろうとしたそのときだった。
「敦志ー! お疲れー! すっごい濡れた……」
遼太郎と裕太が来た。
俺は慌てて小春から手を離した。
「あれ……? ごめん、俺たちおじゃまだった?」
おじゃまだよ、バカ野郎。
「……だから言ったじゃないか……。三石……」
裕太がやれやれと呆れたような声を出した。なるほど、遼太郎が無理矢理つれてきたんだな。
「敦志、次の場所行こっか」
「あぁ」
顔が赤くなった小春の手を繋いで、俺たちはステージをあとにした。
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