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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─

109・5時間目 デートは二人きりじゃない

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 カフェMISHIHANAで俺と遼太郎は、昼から一緒に遊ぶ裕太を待っていた。

 今日のプランを説明しておくと、昼間は俺たち三人で遊びに出かけるのだが、どこに行こうかと今遼太郎と案をだしている最中だ。

「ゲームセンターとかどう? 俺行きたいんだよね!」

「おー、いいじゃねぇか。ゲーセンとか久しぶりに行くわ。とりあえず、これでひとつは決まりだな」

「あとは他にも──」

「夜どこに行くか知ってるよな?」

 一応、聞いておきたかった。サプライズのため小春以外には話しているが、果たしてそれも考えているかどうかを。

「おう、知ってるよ! 水族館だよな! 楽しみだな~! ペンギンとかカワウソとか可愛いし! ……あ、もしかして、お金の心配してるのか! 大丈夫大丈夫! 俺もそんなに昼間は使わないから!」

 よかった。考えていてくれていたようだ。俺はほっと息を吐くのと同時にコーヒーに口をつけた。

 ところで、俺と遼太郎は趣味がよく合うことが多い。もちろん、裕太とも合うのだが裕太は俺よりランクの高い物品を扱うことが多く、逆に俺がそうだったのかと相づちを打つ側に変わったりする。

 その点では俺と遼太郎は『いかに安く質のよいものを扱うか』という話で盛り上がった。

 例えば、服装なんかは、今は高ければ高いほど質のよいものなんて時代ではない。安価で質のよい服が多くある。

 俺が着ているこのグレーのワイネックシャツもそうだ。

 たまたま店の前に通ったとき、おしゃれで似合いそうと思ったから買った。

「いや、お金は大丈夫なんだが、水族館も楽しんでほしいなって思ってよ。俺と小春のデートでもあるけど、俺はお前らともでかけているんだから」

「あー、気を遣うなってことね。確かに森山さんと俺たちででかけるってあんまりないからな。最近になってやっとじゃない?」

 言われてみればそうだった。高一の夏、小春と再会したときは、本当に突然のことでビックリして遼太郎たちのことを気にする暇がなかったが、付き合って、最近になってようやく、遼太郎たちのことも考えながら、小春と楽しくデート出来ている。

 カフェ特有のベルの音が鳴り、俺と遼太郎はその音の方向を見た。裕太、来たか?

 そこにいたのは、裕太ではなく、茶色のコートを着た花園はなぞのさんだった。

「ふぅー、寒かった。……って、高橋君と三石君じゃない。久しぶりね。元気にしてた?」

 三島さんとほぼ同じことを言った花園さんは、優しい笑顔を見せていた。

「お久しぶりです」

「久しぶりです! 俺たちは元気です!」

「ならよかったわ! ごゆっくり!」

 花園さんは、てきぱきと荷物を持ち運んでいた。きっと、買い出しだろう。

「それにしても、裕太遅いな」

「だね、そろそろ来てもいいk──」

 遼太郎が言い終わる前にまた、カフェ特有のベルの音が鳴った。

「二人ともごめん! 遅れたよ」

 フラグ回収というやつだろうか、そこには裕太が立っていた。
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