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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
108時間目 壮観な景色
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中腹の休憩場所から俺たちは再び、道なき道を歩いていると、急に風が強くなった。
「風っ……! 強っ!」
「ひゃ~! 冷たい!」
ひんやりとそして、強い風が山道に容赦なく吹き付ける。
小春は寒そうにしている。カーディガン一枚だけじゃさすがに寒いだろう。
「俺の上着、着るか?」
「いやいや、敦志君寒いでしょ! いいよいいよ!」
「とりあえず、着ておけ。風邪ひいたら困るしな」
「あっ、ありがとう……」
半ば無理矢理、小春にアウターを着せて、俺は一層、気合いをいれて進んだ。
アウターを脱いだときはもわっとした熱気がまだ体に残っていたが、それらはもう山の寒さに消された。
さっみぃぃぃ。
上着なきゃ無理無理。
「……敦志君の上着、暖かいな」
冬の寒さかそれとも照れか頬を赤らめながら、言う小春。
寒さがあった体は熱を帯びて、暖かいを越えて熱くなる。
「お、おう。よかったよ」
急に不意打ちの発言を入れてくるのはやめてほしい。冬の山で尊死しちゃうよ。
「敦志ぃ、寒ーい! なにこれ、真冬じゃん!」
「ふぅ、厚着してきてよかった……。でも、結構、寒いな」
裕太でも寒いと言うならきっと、めっちゃ遼太郎は寒いに決まってる。長袖のロングTシャツ一枚なんて、この環境じゃかなりやばいんだろう。
「あともう少しじゃないかな」
裕太によると、展望台付近は灯りが付いているらしく、その光が見えたらしい。なら、もう少しで着くだろう。
俺たちは寒いので急ぎつつ、足場を確認しながら、山を登った。復活したはずの遼太郎は先ほどの猫の件で撃沈、裕太は、遼太郎と付き添ってきた疲れがでているのか、少し疲弊した顔をしていた。
先に進んだり、後ろからついていったりとペースがばらばらになっていた俺たちは最後は必ず、一緒に歩く。俺たち三人の友情と小春との愛は『同じペースで歩む』ことができていたから、ここまで続いていたんだろう。
「あっ! 敦志君! 山内君が言っていた光って……」
「そう、これだよ。あともう少しだね」
「よーし! ラストスパートだ!」
「小春」
「えへへ……。敦志君」
俺たちは再び、手を握り合ったあと、裕太たちと喋りながら、光が漂う展望台まで歩いていった。
ここまで歩くと、道は舗装されているものに変わり、歩きやすさを実感した。
「わぁ! 敦志君きれいだね……!」
「あぁ……。綺麗だな……」
本当にここまで登った甲斐があったと思えるよ。これは。
ぴかぴかと光るビルや住宅が黒の背景に点在し、まるでミニチュアの建物を見ているよう。
休憩場所から見た景色とは全く違う開けた高所だからこそ見渡せる壮観な景色。
ここまでの道のりは運動不足の体には応えたけど、よい運動だったと思う。
「……また、この景色を見たいね」
「あぁ……」
でも、これで満足してほしくない。俺は密かに文化祭あたりから考えていた。
クリスマス、その日は、俺たちが付き合ってから一年が経つ日。
二人の幸せをこれからも繋ぐために、俺は、その日、小春に最高の笑顔を見たい。俺が引き出したい。
去年より今年、今年より来年が楽しかった、一緒にいれて嬉しかったと言えるように。
二人の冬の物語がひとつ、動き出した。
「風っ……! 強っ!」
「ひゃ~! 冷たい!」
ひんやりとそして、強い風が山道に容赦なく吹き付ける。
小春は寒そうにしている。カーディガン一枚だけじゃさすがに寒いだろう。
「俺の上着、着るか?」
「いやいや、敦志君寒いでしょ! いいよいいよ!」
「とりあえず、着ておけ。風邪ひいたら困るしな」
「あっ、ありがとう……」
半ば無理矢理、小春にアウターを着せて、俺は一層、気合いをいれて進んだ。
アウターを脱いだときはもわっとした熱気がまだ体に残っていたが、それらはもう山の寒さに消された。
さっみぃぃぃ。
上着なきゃ無理無理。
「……敦志君の上着、暖かいな」
冬の寒さかそれとも照れか頬を赤らめながら、言う小春。
寒さがあった体は熱を帯びて、暖かいを越えて熱くなる。
「お、おう。よかったよ」
急に不意打ちの発言を入れてくるのはやめてほしい。冬の山で尊死しちゃうよ。
「敦志ぃ、寒ーい! なにこれ、真冬じゃん!」
「ふぅ、厚着してきてよかった……。でも、結構、寒いな」
裕太でも寒いと言うならきっと、めっちゃ遼太郎は寒いに決まってる。長袖のロングTシャツ一枚なんて、この環境じゃかなりやばいんだろう。
「あともう少しじゃないかな」
裕太によると、展望台付近は灯りが付いているらしく、その光が見えたらしい。なら、もう少しで着くだろう。
俺たちは寒いので急ぎつつ、足場を確認しながら、山を登った。復活したはずの遼太郎は先ほどの猫の件で撃沈、裕太は、遼太郎と付き添ってきた疲れがでているのか、少し疲弊した顔をしていた。
先に進んだり、後ろからついていったりとペースがばらばらになっていた俺たちは最後は必ず、一緒に歩く。俺たち三人の友情と小春との愛は『同じペースで歩む』ことができていたから、ここまで続いていたんだろう。
「あっ! 敦志君! 山内君が言っていた光って……」
「そう、これだよ。あともう少しだね」
「よーし! ラストスパートだ!」
「小春」
「えへへ……。敦志君」
俺たちは再び、手を握り合ったあと、裕太たちと喋りながら、光が漂う展望台まで歩いていった。
ここまで歩くと、道は舗装されているものに変わり、歩きやすさを実感した。
「わぁ! 敦志君きれいだね……!」
「あぁ……。綺麗だな……」
本当にここまで登った甲斐があったと思えるよ。これは。
ぴかぴかと光るビルや住宅が黒の背景に点在し、まるでミニチュアの建物を見ているよう。
休憩場所から見た景色とは全く違う開けた高所だからこそ見渡せる壮観な景色。
ここまでの道のりは運動不足の体には応えたけど、よい運動だったと思う。
「……また、この景色を見たいね」
「あぁ……」
でも、これで満足してほしくない。俺は密かに文化祭あたりから考えていた。
クリスマス、その日は、俺たちが付き合ってから一年が経つ日。
二人の幸せをこれからも繋ぐために、俺は、その日、小春に最高の笑顔を見たい。俺が引き出したい。
去年より今年、今年より来年が楽しかった、一緒にいれて嬉しかったと言えるように。
二人の冬の物語がひとつ、動き出した。
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