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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
107時間目 山登り
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駅で裕太たちを待っている間、俺と小春は、ベンチで飲み物を飲みながら、待っていた。
「ありがとう敦志君。私の好きな飲み物、覚えてくれていたんだ」
小春はペットボトルのホットのミルクティーをひとくち飲んだあと、そう言った。
「あぁ、カフェオレよりミルクティーの方が好きなんだろ? 甘いもの好きなの、いいよな」
それに比べてあんまり甘いものは好きじゃない。どちらかと言えば、チョコレートみたいな甘いものよりポテトチップスみたいな塩味がある方が好きだ。
「私、ブラックのコーヒーは飲めないから。カフェオレもなんだけど。飲める人は本当に憧れるし、かっこいい、と思うよ」
「ありがとうな。いつかは、一緒に飲みたいな」
「そうだね」
ふぅと小春から白い息がでた。やはり、冬直前の夜は肌寒い。俺たちが今日行く予定の山──と言っても隣接した神社の道のり──はそんなに高い山じゃないので、そんなに厚着はしていない。
一応、ファーがついたグレーのアウターを着ているとはいえ、これが山の寒さを防げるかどうかは分からない。
「小春、寒くないか?」
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとうね」
小春は大丈夫と言うので、俺はズズッと缶コーヒーを飲み干した。
「あっ、もう来てた! やっほー! 森山さん!」
「敦志たち早いね。さて、少し時間は早いけど電車に乗ろうか」
裕太の言葉にベンチから立ちあがり、切符を買って、電車に乗った。
「夜景、絶対キレイだよね……」
俺の隣に座っている小春が小声で言った。小春は意外とロマンチストだ。どんな景色を見れるのだろう。小春と見る景色がこれから楽しみで仕方がなかった。
「楽しみだな」
俺たちはそれから、電車を乗ること六駅分。
帰宅ラッシュでかなりいた乗客は半分以下になっていた。
「これで降りるよ」
裕太にそう言うと共に、駅がホームに到着。俺たちは降りて、それから約一時間ぶりに外の空気を吸った。
地下から地上へ向かうと、外は暗闇に覆われていた。夜だから当たり前なのだが、地元はまだ明るいと錯覚するほど、夜の闇が濃かった。
所々を照らす街灯だけが、ぽつりと無機質にそこらにあった。
「すごいね……。こんなに真っ暗になるなんて」
裕太の驚きにも俺は納得が出来る。それほど、俺たち四人は地元とは明らかに違う暗さに少し恐怖していたから。
「これ、進めば進むほど暗くなってくるんだよな。ライト必須じゃねぇか」
「充電しておいてよかった……。俺、暗いの苦手なんだよ……」
「あ、敦志君、手、握ってていい……?」
「おう……」
遼太郎も小春も暗さにかなり怖がっているようだ。
小春の手をゆっくりと優しく握る。大丈夫だと伝えるように優しく。
手のこわばりが少しでもなくなるようにと、俺は努めて優しく握った。
「……とりあえず、行くか」
「うん……」
怯える三人を引っ張るように、俺は勇気を出して最初の一歩を踏み出した。
「ありがとう敦志君。私の好きな飲み物、覚えてくれていたんだ」
小春はペットボトルのホットのミルクティーをひとくち飲んだあと、そう言った。
「あぁ、カフェオレよりミルクティーの方が好きなんだろ? 甘いもの好きなの、いいよな」
それに比べてあんまり甘いものは好きじゃない。どちらかと言えば、チョコレートみたいな甘いものよりポテトチップスみたいな塩味がある方が好きだ。
「私、ブラックのコーヒーは飲めないから。カフェオレもなんだけど。飲める人は本当に憧れるし、かっこいい、と思うよ」
「ありがとうな。いつかは、一緒に飲みたいな」
「そうだね」
ふぅと小春から白い息がでた。やはり、冬直前の夜は肌寒い。俺たちが今日行く予定の山──と言っても隣接した神社の道のり──はそんなに高い山じゃないので、そんなに厚着はしていない。
一応、ファーがついたグレーのアウターを着ているとはいえ、これが山の寒さを防げるかどうかは分からない。
「小春、寒くないか?」
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとうね」
小春は大丈夫と言うので、俺はズズッと缶コーヒーを飲み干した。
「あっ、もう来てた! やっほー! 森山さん!」
「敦志たち早いね。さて、少し時間は早いけど電車に乗ろうか」
裕太の言葉にベンチから立ちあがり、切符を買って、電車に乗った。
「夜景、絶対キレイだよね……」
俺の隣に座っている小春が小声で言った。小春は意外とロマンチストだ。どんな景色を見れるのだろう。小春と見る景色がこれから楽しみで仕方がなかった。
「楽しみだな」
俺たちはそれから、電車を乗ること六駅分。
帰宅ラッシュでかなりいた乗客は半分以下になっていた。
「これで降りるよ」
裕太にそう言うと共に、駅がホームに到着。俺たちは降りて、それから約一時間ぶりに外の空気を吸った。
地下から地上へ向かうと、外は暗闇に覆われていた。夜だから当たり前なのだが、地元はまだ明るいと錯覚するほど、夜の闇が濃かった。
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「……とりあえず、行くか」
「うん……」
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